第45話 謎飯
俺達は出された謎の食べ物を食べ終わる。
感想を言うなら謎というしか無かった。
ピリ辛のところもあれば甘いところもあり、タレの辛さが濃い所もあれば野菜の甘さがある所もあったし、苦味も酸味も、脂っこい所、あっさりした所等、食に関して有りうる全ての感覚を味わった気がした。
だがその感覚の違いで『飽き』が起きず、あの大量の料理を胃袋に詰め込めることができて自分でもこの量を食べられた事に驚きを隠せなかった。
この料理に一言評価をつけるとしたら『不味いに極限まで近いウマい料理』だろう。
え?それは普通なのでは?って……はぁ、君も食べてみな、飛ぶぞ?(語彙力が)
「……美味しかった」
「確かに美味しかったけど結局何を使った料理なんだ?」
「……わからない」
「だよねぇ」
ちなみに『鑑定』してみた結果がこれだ。
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名前:雨宿り亭スペシャル定食
その全てが謎に包まれた雨宿り亭にだけ伝わる一家相伝の料理。噂では料理を作った者自身も何を使って作っているのか分かってないとか何とか……。
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いやどういうことだよ!とツッコミたくなるような鑑定結果。『鑑定』ならちゃんと鑑定しだとも思うが、鑑定スキルでも謎という結果に何故か納得している自分がいた。
「お前ら食べ終わったか。どうだった?」
「あっ、ゴンズさん。う〜ん、謎としか言えませんね」
「ふっ、そうだろうな。俺もここの常連も何回か食ったことがあるが未だに誰もそれが何かわかってねぇ」
「あ、レンゲちゃん食べ終わった?ならこっちに来て女子達で話しましょ!」
「……ん、わかった」
少し酔っ払ってか少し顔を赤くしたゴンズさんとテリーヌさんが食後を見計らって話しかけてくる。
ゴンズさんの返事をしているとレンゲはテリーヌさんに持って行かれてゴンズさんと二人になった。
「ナルミ、お前酒は飲めるか?」
「あ〜、自分の故郷がまだ俺の歳ではお酒はダメだったので飲んだことありませんね」
「ほう?お前の歳でもまだ酒がダメか。この辺りはそんな風習とかねぇから無理にとは言わねぇが飲んでみるといい」
「そういえば15ぐらいから本格的に飲んでよかったですね」
ゴンズさんは片手に持ったジョッキで酒を呷る。
お酒かぁ、やはり20歳にならないと犯罪のように感じてしまう。
そもそも基本的にこの世界に酒を飲んだからという理由での罪はない。でも流石に十にも満たないような子供に酒を飲ますのはダメだという感覚は流石にあるようで、法律のようなものは無いが成人になる15歳まで基本的に店に行っても酒は売ってくれない。
ちなみに、見た目が大人になっても子供のままに見える(人族視点)ような種族もいるのでそういう種族の人は年齢証明書のようなものを持ってるらしい。
「もうこの街を出るんだってな。どこの街に行く予定なんだ?」
「ファーナント街ですね。とある人におすすめされたのと美魔身祭に興味があるのでそこにしたんです」
「あ〜、あそこか。確かに物も揃うし人が集まるから依頼も多い。確かにいい所だ」
ゴンズさんは酒を呷りながら、俺は楽しそうにしているレンゲを見ながらゴンズさんとあまり話題が続かない会話を楽しむ。
「……そうだ思い出した」
「どうしたんですか?」
「ああいや、お前の仲間に売った刀。あれを家に売った奴が最後に言った言葉だ」
「へぇ、少し気になりますね」
ゴンズさんもあの刀は業物だと言ってたぐらいだ。売った人も相当悩んだに違いない。
「確か、『俺にはもう必要ない。ありがとう』だったか?いや『私』だったか?覚えてねぇ……」
「もう必要ない、か。やっぱり冒険者をやめたんですかね?」
「さあな、これは俺の親父が酒飲んでた時にポロッと教えてくれたことだ。親父もじいさんから聴いたらしい。だから口調や一人称はちがうもしれねぇが意味は同じはずだ」
「へぇ……」
その人が他の種族ならもしかしたら生きてるかもしれないが、人族ならもう生きてないだろう。
あの剣を持って何をしたか、何を見たのか。なんだか少し気になった。
「あの刀は不思議だ。俺が今まで見た武器の中でトップに出るくらいにな」
「そうなんですか?」
「ああ。一応作った奴の印のようなものがあるが調べても出てこない。日にちの様なものも書かれていたが読み方が間違っているのか、そもそも日にちでは無いのか分からない。呪い等がかかってないのは事実だが、呪い以上の謎があるかもしれん」
「そこまでですか……」
そういえば刀に鑑定できなかったな、後で試すことにしよう。
「まあ、僕も旅する中で調べてみます」
「ああ、そうしてみてくれ」
「ナルミくんもこっちに来て話しましょ!」
「え、わかりました!では、俺も行ってきます」
「ああ」
俺はちょっとした約束をゴンズさんと結び、テリーヌさんに呼ばれたのでそちらに向かうのだった。
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