第44話 覚悟
「あ、ナルミくん!レンゲちゃん!おひさー!ほら、ゴーちゃんも!」
「ゴーちゃんはやめろ……久しぶりだな」
「あっ、テリーヌさん!それにゴンズさん!お久しぶりです!」
「……ゴーちゃん」
宿に戻るとそこにはゴンズさんとテリーヌさんが食事、というかお酒を飲んでいた。
まあ、顔を見た感じ酔っ払っている様子は無いのでまだ飲み始めたばかりなのだろう。
「あ、ナルミさん、レンゲちゃん。おかえりなさい!そういえば二人のことは私達がお店を紹介しましたね。どうでした?二人とも迷惑をかけませんでした?」
「ちょっとちょっと〜?まるで私達がお客さんに迷惑かける変人店主みたいじゃない」
「事実じゃないですか」
「え〜〜?!」
「ふっ、言うようになったな」
「ははは……二人とも良くしてくれたよ」
「それなら良かったです!」
リラちゃんの言い様にテリーヌさんは文句を言ったが、リラちゃんは違いますか?と首を傾げてそう言った。
これにはゴンズさんも笑ってテリーヌさんは不貞腐れる。俺は苦笑いしながら大丈夫だと言うとリラちゃんはにっこり笑って厨房に戻って行った。
「はあ、リラちゃんもわかってたけど成長したわねぇ。そういえば他の二人は?」
「知らん。そもそも誘ったのか?」
「うんん?ゴーちゃんも偶然居たから誘っただけだしね!」
「……」
「あ、そうそうナルミくん達!風の噂で聞いたけど、この街出るんだって?」
「えっ!?それ本当ですか!?」
「わおっ!?びっくりした。リラちゃんいきなり大きな声出さないでよ〜」
「あ、テリーヌさんごめんなさい!それで出ていくって……」
「あ、ああ。一週間後ぐらいに次の街に行こうと思ってるんだ。勿論レンゲと一緒に」
「……ん」
「そ、そんなぁ」
リラちゃんは露骨にテンションが下がったように肩を落とす。
「せっかくレンゲちゃんとも仲良くなれそうだったのに……」
「……まだ一週間ある」
「そうですけど、ううう」
少し涙目になりながらレンゲに頭を撫でられるリラちゃん。
身長が同じぐらいだからなんとも微笑ましいようになっていた。
「こら、お客さんに迷惑をかけるんじゃないよ!」
「あ、お母さん……」
そこにはリラちゃんのお母さんであるフェナさんが居た。
「ほら、予約注文してた『雨宿り亭スペシャル定食』だよ!せいぜい残さないようにね!」
「おっ!アレ注文したの?やるねぇ!」
そこには形容しがたいとにかく大盛りとしか言えない何かがあった。
だが食欲をそそるいい匂いと別に食べれなさそうな形も色もしてないので食べられるのだが何故か言葉で表せないよく分からない食べののだった。
「な、なんスかコレ」
「ん?だから『雨宿り亭スペシャル定食』だって」
「いや、しょくざ「『雨宿り亭スペシャル定食』だよ」……はい」
まさかここに来てギャグみたいなものが出て来るとは思わなかったが二人分出された以上食べるしかない。
レンゲを見てみるとレンゲは『雨宿り亭スペシャル定食』を見つめていた。
「……美味しそう」
「そ、そっすか」
レンゲはそういうとせっせと椅子に座りもぐもぐと食べ始めた。あれ?食べて減ったところ表面とは全く違う色だ……。
この未知の食べ物に恐怖を感じながら他の人の羨ましそうな視線といい匂いが食欲を誘った。
「いいかいリラ。この職業をやってる以上、出会いと別れは山ほどある。それも他の接客する職業より関わる時間が長いだけに情湧きやすいだろうし相手が冒険者が多いいから急に居なくなることもあるさ」
「……」
「でもねリラ、教えただろう?客を迎えるとき、そして送り出す時は常に笑顔だって。生きてりゃいつかはもう一度会うかもしれないだろ?それにあと一週間もあるんだ。ちゃんと別れを言って覚悟を決めな!」
「……は、はい!お母さん!」
どうやらリラちゃんの方は解決したようだ。それなら俺も自分の目の前の問題を解決するために『雨宿り亭スペシャル定食』に手をつけようとする。
「はい!お話はこれぐらいにして!まだ一週間あるっぽいけどナルミくんレンゲちゃんとのお別れ会にしましょー!フェナさん!お酒二人分!」
「全く、あんたは酒飲みたいだけでしょ?」
「ちょっとちょっと〜?今日母娘揃って私にあたりキツくない?」
「事実じゃないか」
「え〜〜〜!?」
「くくっ、くくくくっ、偶には酒に付き合うものだな」
「「(もぐもぐ)」」
俺たちは一心不乱に『雨宿り亭スペシャル定食』を食べながらテリーヌさん達の会話を聞くのであった。
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