第43話 納品
ギルドにたどり着いた俺達は解体したものを納品するために列に並ぶ。この時間帯は俺たちと同じように依頼から帰ってきた冒険者も多く、いつもより時間がかかった。
「おっす、おっさん。久しぶり」
「ん?ああ、ナルミか!久しぶりだな!治療所送りになってたみたいだがもう体は大丈夫か?」
「まあなんとか、治療師の人が言うには肉体的な傷より魔力の使いすぎで倒れたみたいだから体はあんまり傷ついてなかったらしい」
「へ〜、そりゃぁ運が良かったな。おっ、Dランクになったとはいえ二回目の討伐依頼にしては大量だな!」
「まあね、こっちには頼りになる相棒ができたからな」
「ほう、お前さんにもやっと仲間ができたか。おっ、お前さんか?」
俺は会話しながら納品するものを出す。その量に少し驚いているのでレンゲの存在に気づいてないなと思い仲間がいることを言うとこちらに視線を上げてレンゲを捉える。
ちなみに今レンゲはフードを被っており、『認識阻害』の効果で顔はよく見えない。
レンゲ曰く、街中も人がいっぱい居るがすれ違うだけで気にしなくて済むが、ギルドのような建物の中の人が密集している所では流石にキツいらしい。
しかも今の時間帯は最初の依頼を受ける時よりも圧倒的に人が多いのできついらしい。
「……ん、そう」
「なるほど、こんなに効率が上がるぐらい強い仲間ができたのか、そりゃよかった。そうだ、このグレーウルフはゴブリンと違って毛皮や爪も売れるから解体する時はそこら辺も持ってきた方がいいぞ」
「へぇ、まあ持ち物に余裕があったらそうする」
「ああ、もっと稼ぐようになったら荷物持ちを雇うか『アイテムボックス』がエンチャントされたバッグでも買った時は討伐した魔物ごと持ってこれば俺らが解体するぜ」
「あ〜、確かにその方法があったか」
おっさんはあんまりレンゲに興味無いのかすぐに話を変えた。
アイテムボックスの活用方法を思いついたから次の街では試すことにしよう。
「あ、そうそう。俺達来週ぐらいにこの街から出ることにした」
「そうか、確かにDランク以上を目指すならここじゃ少しレベルが低いか……。まあ、少し寂しくなるが達者でな」
「ああ、おっさんもな」
まだ一週間あるが少ししんみりしながら列を抜け、呼び出しが掛かったので換金版を受け取って受付に並ぶ。やはりここもいつもより人が多かった。
「あ、ナルミさんレンゲちゃん、おつかれ様です。換金板と冒険者カードを回収しますね」
「ああ、おつかれララさん」
「……ん、おつかれ」
やっと順番が来たので換金板と二人のギルドカードを言われた通りララさんに渡すと、魔法道具にそのふたつを入れたララさんが報酬を出す。
「え〜と、ゴブリン討伐二つとグレーウルフ討伐一つで2600ユルですね!どうぞ!」
「おお、すげぇ……ありがとう!ララさん」
「いえいえ、あ!そういえばナルミさん達の為にこの依頼取っておきましたよ」
「え?依頼?なんの事ですか?」
いつもの三倍ほどある報酬に少し少し舞い上がっているとララさんからそう言われる。
別に予約のようなことをした覚えは無いのでなんの事か聞き返す。
「ナルミさん達は護衛依頼でファーナント街に行く予定なんですよね?もう少しであのお祭りが始まるということであの依頼人気なんですよね。だから先に取っておきました!」
フフン!という感じで胸を張るララさん。またもや強調された部分に目が行きながら感謝を伝える。
あの祭りとは『美魔身祭』の事だろう。
「おお、ありがとう!いやぁ、確かにあの祭りに行きたいのは俺だけじゃないですよね」
「ええ、正直私もめちゃくちゃいきたいですがこの仕事は基本年中無休ですからねぇ。有給戻れないことは無いですが長期休暇が必要ですし一年の休みを全部使うのはちょっと……って感じなんですよね。ま、その分給料はいいんですけどね!」
ララさんは苦笑いしながらそういう。
確かに冒険者はほぼ毎日依頼を受けてそれの報酬を貰いに来るから休みの日はないよなぁ。
少しブラックな所もあるっぽいがそこまで不満があるようではなさそうなのでそこまで悪い職場でもないのだろう。
俺はララさんから依頼表を受け取り内容を読む。そこには『商人の馬車の護衛を求む。Dランク以上の冒険者六人程の冒険者。 期限日:六の月二十一日 朝 場所:西の門』と書かれてあった。
「ん?六人程の冒険者?」
「あっ、それに関しては大丈夫です!もう四人組のパーティがもう既に受けてるのでナルミさん達が受ければ丁度です!」
「なるほど、じゃあ受けます」
「はい、わかりました!受理しますね!」
ララさんはそう言って依頼書を先程の魔法道具に入れる。すると違う出口から二人の冒険者カードを取り出す。
「はい、カードに依頼を登録しました!では七日後に依頼書のに書かれた場所に向かってくださいね?」
「わかりました。ちなみに朝っていつ頃ですか?」
「ん〜、時計のようなものはないですから遅すぎなければいつでもいいですよ」
「なるほど……」
ちょっとモヤッとするが時計など貴族ぐらいしか持っていない異世界なので仕方ないだろう。
「じゃあ列も増えてきましたし行きますね」
「……ん、じゃあね」
「はい!レンゲちゃんもじゃあね!」
俺達はすっと列を抜け、さっさとギルドをでる。
冒険者カードに書かれた依頼を見て、街を出る方法も決まって段々とこの街から出る準備が終わっていくのを感じ、ちょっと寂しく感じた。
まあ、旅をする以上慣れなければならないがやはり仲良くなった人との別れは寂しいものだ。
「……ファーナント街。楽しみ」
「ああ、そうだな」
俺の気持ちを知ってか知らずかレンゲの言葉に同意し、俺達は宿に戻るのであった。
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