第40話 反省


「……四式『流鬼るずき』……二式『鬼牙かがや』……三式『突鬼しきぐ』!」

「「「グギャ!?!?」」」

「……おうふ」



 依頼書に書かれていた魔物ゴブリンが生息する場所に着いたので、どうするか話し合おうとした瞬間俺よりも早く魔物ゴブリンを見つけたレンゲが目にも止まらぬ速さで飛び出して行ったかと思うと次々と倒して行った。


 魔物を薙ぎ倒して切り裂いて貫く。まるでそれがひとつの技かのように綺麗な技の連鎖でを披露しつつ、たった一〜二秒で魔物を三体討伐してしまう。


「あ、あの、レンゲさん?」

「……ん、どうだった?役に立てた?」

「いやまぁ凄かったですけども」

「……(ぴくっ)」

「グギャァァ!??」


 いきなり飛び出すのは如何いかがなものかと……と言おうとした瞬間、レンゲが一瞬で獲物を見つけた猛獣のような目をしたかと思うと予備動作なしで飛びして魔物を切り裂く。


「……ごめん、魔物が居てつい。で?」

「あ、ああいや、ナンデモナイッス」

「……?」


 別にレンゲの「で?」がドスの効いた声とかではなく、レンゲにも悪気がある訳でもないだろうけど一瞬見えた猛獣のような目に内心ビビり散らかしす。


「つ、次は俺がやってもいいかな?」

「……わかった」


 レンゲが役に立とうとしてくれているのは分かるが俺も戦わないとだめだ。


 レンゲが倒した魔物の解体を終わらせた後、俺は気配感知を使って一匹で居るゴブリンを見つけ、直ぐには突っ込まずにまず視界に捕える。

 レンゲのように技を持っているわげでもないので、もしものことを考え魔物の背後を取り奇襲をかける。


「……ふっ!」

「グキャ!?」


 背後から斬りつけ、直ぐに離れる。ステータス的に一撃だがもしもの時があるかもしれないからだ。

 しかしゴブリンは起き上がらずにそのまま息絶える。


 俺は安堵して一息つき、次のゴブリンを探す。

 次は正面から対峙して討伐しに行く。


 一応レンゲにもいつでも助けに入れるように近くにいてもらっての挑戦だ。

 少し臆病すぎると思われるかもしれないが臆病出いられないやつは早死するだけ、命を懸けるのと命を捨てるのでは意味が違うのは冒険者として必ず心得ておくべし!(Byゴーシュ)


 まあ、当たり前って言えば当たり前だが、最弱の部類に入るゴブリンなどに油断して帰らぬ人になるのはよくある事だそうだ。


 俺はできる限り安全マージンを取り続けるつもりだが、いつかはやってくるだろう命を懸けて戦う時が来るだろうからその時のために確実に強くならなくちゃダメだ。


 俺は剣を握りしめてゴブリンに近づく。近づいてきた俺に気がついたゴブリンは手に持っていた棍棒を振り上げて飛びかかってくる。


 ラースより圧倒的に遅い攻撃を余裕を持って避けてゴブリンの首を目掛けて剣を振り抜く。

 技もくそもないステータス頼りでの攻撃だがゴブリン相手なら十分の攻撃力があり、ゴブリンの首を斬り飛ばす。


 流石にこの状態でゴブリンは生きておらず、ピクリとも動かなくなったゴブリンを見て俺は確実に強くなったことを実感する。


「……ん、まだステータスに振り回されている感じがするけど上出来だと思う」

「あはは……まあ、基本俺の立ち位置は中距離予定だがら前衛はレンゲに頑張ってもらおうかな」

「……任せて」


 レンゲは胸を張って少し力強く頷いた。

 頼もしいけどもそれ以上に可愛くて少しほっこりしながら討伐依頼を終わらせなければと気を引きしめる。


 ふと、あの戦いで最後に使った技を思い出す。

魔力衝撃波アビリティインパクト』……相手が魔力そのものでできた存在でもない限り直接敵を倒すことは出来ないが、直撃すれば感じたことも無いショックを与えて隙を作りつつ、魔力操作を困難にさせる技だ。


 まだ戦い方が不安定な俺はこれがあるだけで戦い方が変わるはずだ。

 まず俺が始めるのは体作りも大切だがこのスキルのレベル上げだ。


 俺はスキルを発動させて剣に纏わせる。身体強化を解除し、全身もスキルで纏わせる。

 魔力が減っていくが、魔法を操作している時ほどでは無いのでまだなんとかなる。


 俺はその状態で前に進む。しかしじっとしていた時は安定していたのに急に不安定になる。

 単純な身体強化は強化したい位置に魔力を満たせば使えるがやっぱり体の中ですらまだ魔力操作に慣れていないのにそう簡単に行くわけはなかった。


 俺は体の外で魔力を操ることを諦めて体の中で実験する。スキル自体は発動しているので魔力の消費はするが体の外で使うより圧倒的に魔力の減りが少なかった。


 手始めに俺は俺の魔力を使って体の中で球体だったり箱のような形に魔力を変える。最初は上手くいかなかったがスキルの使い方に慣れるにつれ段々と作る時間も減り、精密に作れるようになっていく。


 俺は楽しくなって色々実験してみることにした。

 例えば魔力を圧縮出来るのか。これは失敗に終わったが、得るものもあった。それは魔力の圧縮は今はできないだけであり、何時かは出来るようになるということだ。


 他にも圧縮できないなら逆に伸ばすことは出来るか?とか、作った球体の魔力はそのまま外に出せるか?とか、このスキルで身体強化をすることが出来るか?とか。


 そして得られたことの大半はまだできないだけで技術とレベルが上がれば出来るようになるということだった。


 まあ、逆に言えば現状できないことの方が圧倒的に多いってことだが、これはもう諦めるしかない。


「………ミ、ナルミ!」

「へ、あ、どうしたレンゲ」

「……持ってきた」

「持ってきたって……へ?」


 レンゲの後ろには受けた依頼の大半の討伐された魔物があった。


「え、これ全部一人で?」

「……うん、なんかナルミ一時間ぐらい考え事してたから」

「へ?!一時間?!」


 俺は驚いて空を見上げると確かにさっき見た時とは別の位置に太陽があった。


「あ〜、ごめん。俺のスキルの練習してたら時間を忘れてたよ」

「……ん、やっぱり。ナルミの体の中で魔力が動いてるの感じたから話しかけずに一人で行ってきた。ダメだった?」

「いやいや、そんなことない。むしろ依頼中なのにぼーっとしてろ俺の方が悪いよ。え〜と、あと一つ依頼終わってないな。次は俺もやるよ。あ、解体さっさと終わらか」

「……ん、わかった。私も手伝う」


 俺は少し反省しながら依頼を確認して次の事を話しつつ、魔物を二人で解体を始めた。

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