第27話 取引
お待たせしました!今週から更新再開します!
♦♦♦♦♦
「なあ、そこのあんたら。ちょっと良いか?」
「ん?誰ですか?」
「……っ!?」
声が聞こえた方に振り向くと、そこにはガタイがよく身長が二メートルほどある男がニヤついた顔でこちらを見下ろしていた。
「えっと、何の用ですか?」
「……」
レンゲは男の顔を見ながら後ずさりをして俺の背に隠れた。
レンゲの行動に少し疑問を抱いたが、目の前の男から嫌な感じでもしたのかと思い少し警戒しながら話す。
「おいおい、そんな身構えんなって。俺の名前はラース、ちょっとした取引をしに来ただけだ」
「取引?」
「ラース」と名乗った男はニヤつきを深めながらそう話を進める。
まさか明らかに肉体派のような男から取引なんて言葉が出るとは思わず少し驚いてしまい、聞き返してしまった。……いや単純に失礼だな、これ。
「ああそうだ。俺らはちょっとした人探しをしていてな、そいつの容姿に関する情報を頼りに町を探していたら丁度路地裏から出てきたあんたらが見えたんだ。そしたらお前の後ろの奴が情報に近かったんでな。だろ?ダズ?」
「ええ!その通りでやんす。」
ラースの後ろから「ダズ」と呼ばれた小柄な男が出てくる。服も一新し、顔も隠れているレンゲのことがわかる訳がない……と、思ったがここは前世の魔法がない世界ではなく魔法がある世界だ。『鑑定』の様に何も知らなくても魔力を消費することでなんでも知ることができる世界だ。何かしらのスキルでわかってもおかしくはないだろう。
「それでな、探してるやつがもしかしたらそのガキかもしれねえからできれば一緒についてきてくれねーかなぁ、と。取引だから対価もある。そうだな、十万ユルでどうだ?勿論、もし人違いだったとしても金は返さなくてもいい」
……なるほど、要は金をやるからレンゲを渡せと。それでいて確信を持っているかのような強気な言動とレンゲの怖がり様、もしかしたらレンゲを誘拐した時にいたのかもしれない。
「……嫌だ、と言ったら?」
「それはそっちのガキが決めることでもあると思うんだが。そうだな、場合によっては……」
ラースはそう言いながら腰に備え付けられた剣に手を添えた。その瞬間、周りの空間の温度ががくっと下がったように感じた。
「っ!?」
初めて感じる悪寒。これが所謂『殺気』というものなのかもしれない。周りにいる人も殺気を感じたのか少し離れる。
「ヒヒヒ、辞めといたほうがいいでやんすよ。ラースさんは元Dランク冒険者。あんたみたいなひ弱そうな奴じゃ敵うわけないでやんす」
ダズはにやにやしながらそう言った。
……元Dランク冒険者。つまり冒険者の中では一番多いい『一人前』の場所に位置し、大体レベルは20~30辺りか……。
レベル20~30、これは一見そこまで強くないように見えるが実はそうでもない。
レベルのあげ方は(職業によるが)魔物を倒すだけではないので、レベル10までは日常生活を送っていても上げることができる。レベルの上昇には10ごとに壁があり、10、20……と上がるごとにその壁は高くなるらしく、その壁を超えるごとに人間をやめて行っているとさえ言われているらしい。
元Dランク冒険者ということはその壁を少なくとも二回は超えているということであり、常人では手も足も出ないだろう。
「……ナルミ……」
「……大丈夫……でも、走る準備はしてて」
「……っ?!……わかった」
レンゲが怯えたように話しかけてきたので安心させるように声をかける。
走る準備、つまりいつでも逃げられるようにと伝えると驚いたように目を見開き、すぐにうなずく。
「決まったか?さて、どっちにする?大人しくそのガキを渡すか……無駄な抵抗をするか」
「……そうだな」
この話、そもそも俺とレンゲの安全は全く保障されてない。十万ユルという大金も後から奪い返せばいいだけだし、そもそも口封じで今この場で切り殺されてもおかしくはない。
レンゲもそうだ。そもそも拒否すれば殺すと言外に言っている奴に渡すわけがないし、人に値段をつけている時点で論外だ。
「勿論……断るに決まってるだろ!」
「っ!?」「なんでやんす!?」
「レンゲ!行くぞ!」
「……ん!」
こんなこともあろうかと冒険者の先輩から教えてもらった手作り目つぶしをバレない様にアイテムボックスから手に出して二人の顔めがけて投げつけ、即座にレンゲの手をつかんですぐ近くの路地裏に入り込む。人ごみの中に奴らの仲間がいるかもしれないからだ。
ここがどこかははっきりとはわからないが、冒険者ギルドの方向はなんとなくわかるのでその方向に必死で走った。
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久しぶりの執筆なのでリハビリがてらなので少し短め。
もうすぐお察しのバトル回なので早く慣れないと!
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