第26話 手入れ
家庭の事情で1ヶ月弱ほど休載します……。
♦♦♦♦♦
「そういや、お前たちの名前ちゃんと聞いてなかったな。あんたらの会話を聞く限り、お前がナルミでそっちの嬢ちゃんがレンゲで良かったか?」
「あ、そういえば自己紹介まだでしたね。俺がナルミでこっちがレンゲであってます」
「……ん」
ゴンズさんが砥石を持って手入れの準備をしながら問いかけてきたので答えた。
「そうか、勘違いじゃなければいいんだ。それで、お前らは剣の手入れの仕方を知ってるか?」
「いや僕は知りませんね……。レンゲは?」
そういえば女神様から貰った剣が万能すぎて一切手入れなどしてない。っていかそもそも刃こぼれするほど使ってないので気にしたこと無かったな。
「……知ってる。剣を習う時に叩き込まれた」
どうやらレンゲは剣の研ぎ方を知っているようだ。まあ、剣を使うものなら当たり前か。俺は知らないけど。
ゴンズさんは剣を持ってるのに知らない俺に疑問を持ちつつ、ついでに研ぎ方を教えてくれるようだ。
俺はお言葉に甘えて研ぎ方を教えてもらい、レンゲもそういえば刀以外は知らないからという事で短剣の方の研ぎ方を教えてもらうことにしたようだ。
「いいか?本当の刀の研ぎ方はいくつもの研石が必要だが今回は最低限の研石でやる方法を教える。角度の数値なんて細かいもんは教えても目で分かるわけないしそもそも俺も知らん。だから見て覚えろ。」
「了解です」
「……ん」
そこからゴンズさんは一言も喋らずに刀だけを見つめてゆっくり研ぎ始めた。
剣を研ぐ方法自体は頭の中にある知識の本で調べることはできるが、やはり見なければ分からないこともあるので真剣に見つめる。
剣の状態も悪くないので手入れは短剣も含めて1時間もかからなかった。
「研ぎ方まで教えて貰ってありがとうございます」
「ああ、別にいいさ。それより嬢ちゃん。ちゃんと使えそうか?」
「……ん〜、見た目はちゃんとできてる。でもまだ使ってないから分からない」
ゴンズさんは少し心配そうにレンゲに尋ねた。もしかしたら初めて売り物として扱う刀に少し不安なのかもしれない。
「そうか……、じゃあ試し斬りするか?」
「え?いいんですか?」
「ああ、そいつの性能も見たいからな。」
「……ん。する」
レンゲはゴンズさんの提案に乗り、工房の裏の小さな庭にやってきた。
「ちょっと待ってろ。……よし、これでいい」
ゴンズさんは隣に置いてあった丸太を縦に台の上に置いた。
「丸太!?レンゲ行ける?」
「……ん、大丈夫」
そう自信ありげにレンゲは刀を腰当たりに置き、丸太の近くまで歩くと抜刀の構えをする。
「……ふぅ……」
レンゲはタイミングを探るように目を閉じて深呼吸をする。
「…… 鬼人流剣技・五式『
気がついた時にはもう刀が振られていた。そしてレンゲが刀を振ったと認識した瞬間、丸太がレンゲが切ったであろう部分からずり落ちる。
「ほう、なかなかの腕だな。人は見た目によらないとは言うが、ここまでとはな」
「……ふっ、分かればいい」
どうやらレンゲは最初のことを少し根に持っていたようだ。
「でもそうか、なるほど。確かに鬼人族なら納得だ」
「……「っ!?」」
いきなりレンゲが鬼人族であることがバレてレンゲと二人揃って驚愕する。二人の様子に気がついたゴンズさんは不思議そうに話す。
「ん?何を驚いてるんだ?もしかして鬼人族のことか?今さっき自分で宣言してただろうが」
「……「あっ」」
確かに今さっきレンゲは自分で「鬼人流剣技」って言ったな……。
「お前らが何を隠したいかは知らないが、俺は種族で相手の評価を変えることはねぇ。それに言ったろ?俺の仕事は相手の体型や種族、年齢や性別を見て相性のいい武器を見繕うと。俺にとっちゃ種族なんて武器相性の判断基準の過ぎねぇ。まあ、人によっちゃあブチ切れそうな考えだけどな」
親父の受け寄りだ、と言いながら丸太の片付けをするゴンズさんを見ながらレンゲに話しかける。
「世の中には色んな考え方の人がいるな」
「……ん、そう思う」
レンゲは少し苦笑いをしながらそう言った。
「よし、代金は受け取った。今回は中古品を売ることになったがうちでは金が余分にかかるが注文も受け付けてあるから金に余裕が出来たら来な。それと雨宿り亭の奴らによろしく言っといてくれ」
「わかりました。注文ってオーダーメイドのことですか?」
「ああ、素材さえ持ってこれば大体のものを作ってやる。刀も一応作れるが、そいつをお手本としたもんしか作れねぇから本場の、それこそ鬼神族の鍛冶師に作ってもらった方がいいだろうよ」
「なるほど、ありがとうございます!」
「……ん、ありがと」
ゴンズさんに礼を言いながら店を出た。
レンゲは早く使いたいと言うようにうずうずしながら刀を触っていた。
「……そういえば、ナルミは買わなかったけどいいの?」
「え?ああ、大丈夫。この武器はちょっと特別でそう簡単には壊れないんだ」
ちょっとどころか神様直々に作ってくれたみたいなので最強ではないにしろすごく丈夫だ。
路地裏を出て大きな道に入り、宿に向かいながら周りの店を見ている時にふと思いついたことを言葉にする。
「そうだ、その刀鑑定してもいいか?名前とか気になるだろ?」
「……ん、確かに」
レンゲは手に持った刀をこちらに差出してきたので鑑定するために刀を触ろうとした。
その時、
「なあ、そこのあんたら。ちょっと良いか?」
「ん?誰ですか?」
「……っ!?」
ニヤついた身長が2m程ありそうな男がそこにいた。
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