第25話 武器屋
下着を選び終え、お会計も終えた。
「いや〜、新しいお客さんと話すの楽しかったよ!また来てね!」
「ええ!冒険者なのでこの街を出るかもしれませんが、それまでは常連としてこの店の服を買いに来ますよ」
「……ん、テリーヌいい人」
「お!ありがたいねぇ。そっかァ冒険者だから他の場所も行くよね。まあ、私も時々色んなところに商売しに行くことがあるから、その時にもし出会ったらまたよろしくね!あ!リナちゃん達にもよろしく言っといて!」
「わかりました!ちゃんと言っておきます!」
「……じゃあね」
「うん!ありがとうございました!」
そう言って手を振りながら店を出た。
「テリーヌさん、元気な人だったね」
「……ん、凄い元気且つどこかミステリアス」
「あはは……確かに、所々不思議なこと言ってるよね」
でもなんだか触れてはいけないような気がして触れなかったが、いつか機会があれば聞いてみよう。
「さて、次は武器屋さんだ。え〜と、確かここの近くで〜……」
そう言いながら描いてもらった地図を見る。
「え〜と、店を出て右に進んで4回目の右への道に行くと武器屋があるみたいだ」
「……ん、行こう」
「ああ、でもまだ時間はあるから店を見ながら行こうか」
「……賛成」
レンゲはいつも通り一言一言は少ないがいつもより喋ってくれる。やっぱり新しい服が手に入って嬉しいのだろうか?
そんなことを思いながら周りの店を観察しつつ武器屋に向かった。
やっぱり人が多いい商店街とも言えるこの場所に建っているお店はどれも興味をそそるものばかりであったが、今日は目的地があるので迷わず進む。
「お、ここが4回目の曲がり道だな。ちょっと薄暗いけど、ホントにあるのかな……お、あれかな?」
「……ん、それっぽい」
少し路地裏のようなところを進むと、お店っぽく看板が立て掛けられている建物が見えた。
「なになに?『ゴンド武器店』って書いてある。多分ここだな」
お店の入口から店に入る。その中には沢山の武器と一人の男性が居た。
「ん?客か?なんだガキか。冷やかしなら帰った帰った」
「え、え〜と……冷やかしでは無いんですけど……それと、雨宿り亭の人達から紹介されて来たんです……」
「……もさもさ」
その男性は大きな髭と鍛治によって鍛えられたであろうごつい腕が印象的な男だった。
一瞬ドワーフかと思ったがドワーフの特徴である尖った耳が無かったので普通の人族だ。
「あ?雨宿り亭?……ああ、そういえばあそこそんな名前だったな。ってことはなんだ?お前ら冒険者か?」
「ええ、出来ればこの子の武器を買いたいなと」
「……(ペコっ)」
「あ?女?しかもガキ?まともに剣振れんのかよ」
「……む、ガキじゃない。それともこの店は見た目で判断する程度の店?」
子供扱いが癪に障ったのかレンゲは男を煽りに行く。
しかし男は短気という訳では無いようでレンゲの挑発を正論を返す。
「ふん、その程度の挑発には乗らん。相手の体型や種族、年齢や性別を見て相性のいい武器を見繕うのは武器屋の基本だ。そもそも冷やかしなら帰れと入ったがいつ武器を売らないと言った」
「……うっ、それは」
男の言葉に返す言葉がないのかレンゲは黙った。
「あ、あはは……えーと、ゴンドさんでいいですよね?出来ればいじめないであげてください……」
レンゲの武器を買いに来たのに、武器屋さんと仲が悪くなっていい武器が手に入らなかったらなんの意味もない。
「……いや、こっちも悪かった。最近何かとイラつくことがあってつい当たってしまった。言い方も悪かったな。そっちのやつ、スマンな。それと、ゴンドであってるぞ」
「……こっちもごめん」
どうやらストレスが溜まっていたようで口調が荒っぽくなっていたようだ。ゴンドさんは頭を下げてレンゲに謝罪すると、レンゲも頭を下げて煽ったことを謝った。
ゴンドさんは第一印象はあれだが、悪い人では無さそうだ。
「イラつくことですか?」
「ん?ああ、それに関してはお前らに関係はない。それに今日は武器を買いに来たんだろう?」
「ええ。レンゲはどんな武器がいい?」
イラつくことに関して少し気になったがあまり話したくないのかすぐに話を逸らされた。まあ、初対面の人だし、関係ないと言われたので本当に関係ないのだろう。
「……剣がいい」
「剣といってもたくさん種類あるからな。もう少し絞ってくれ」
「……長剣、出来れば
「「はばたち?」」
聞き慣れない言葉にゴンドさんと一緒に同じ言葉を繰り返してしまった。
「……知らない?」
「ああ、聞いたことないな」
「……ナルミは?」
「俺もないかな」
「……うーん」
レンゲが住んでいた場所、もしくは鬼人族からすれば当たり前のように使う言葉なのか少しレンゲは戸惑っていた。
「……あっ、思い出した。外では
「ああ、なるほど。刀か、少し待ってろ」
そういうとゴンドさんは店の奥に入っていった。
少しデジャブな感じが否めない。もしかしたら刀も式和風に入ることからあまりこの辺りでは式和風は人気ではない、というかそもそも知られていないのかもしれない。
数分後、お店の中に飾られている商品を見ているとゴンドさんが帰ってきた。
「ほれ、俺が打ったわけじゃねぇがなかなかの業物だ。使ってみろ」
「おお!」
「……ん、いい感じ」
刀を初めて生で見た。やっぱり刀は日本出身としてはロマン溢れるカッチョいい武器だ。
ちなみに、刀は手入れがめちゃくちゃ大変且つ血や脂が着いて切れなくなる。しかも人間所か鉄より硬い生き物がいるこの世界。
本来なら冒険者などの場合によっては連続で何十体も敵を切らなければならない職業の人には向いていない。
しかしこの世界には魔法という便利なものがある。いつもお世話になっている『
つまり現実では基本不可能な刀で無双が実現可能なのだ。
まあ、あんまり魔法ばかりに頼っていると劣化したりするので手入れはどの道必要だが。
レンゲは慣れた手つきで刀を抜き、手に馴染むか確かめるように柄の部分を握り締めつつ刀身を見ていた。
「そいつはとある旅人が売りに来た奴らしくてな、俺の爺さんの代にここらじゃ珍しい武器っつうことで買ったらしい。ちゃんと呪いが掛かってないかも調べてるから安心しな」
「へぇ〜、その人も冒険者だったんですかねぇ。武器売るってことは引退したんですかね?」
「さあ、なんせ爺さんがまだ現役で親父もまだガキだった時代だ。もうそいつも生きてねぇさ」
「それもそうですねぇ。レンゲ、どんな感じ?」
レンゲが使い心地を確かめている間にゴンズさんと少し話、そろそろかと思いレンゲに尋ねる。
「……ん、いい感じ。魔力の通りもいいし。気に入った」
「よし、それ買おう。ゴンズさん、これいくら?」
レンゲが言外に買えと言ってきてるので勿論買わせてもらう。
「そうだな、そいつは業物だがもう散々そいつの作り方も見て学ぶ所もないし中古品だからな、買い手も無いから在庫処理ってことで、使えるようにするための手入れ代と入れて一万ユルでいいぞ」
一万ユルか……。高いけど女神様からの資金を使えば買えるし業物らしいからもしかしたら今を逃せば手に入らないかもしれない。
テリーヌさんがオマケしてくれたおかげで女神様の資金には手をつけてない。今こそ使う時か……。いや、少し値切ろう。やったことないけどなんとかなるだろ。
「……う〜ん、少し高いな。出来ればもう少し下げられませんか?」
「ん〜、こいつは手入れすれば十分使えるからなぁ。こいつと同じレベルのモン作ろうとしたら10倍かかっても可笑しくねぇからなあ」
どうやらゴンズさんも赤字覚悟で売ってくれるらしい。それにしても10倍か……。これは買うしか無くなったな。
「じゃあ、レンゲ用の素材剥ぎ用の短剣つけてくれませんか?」
「……あと研石」
「おう、それぐらいならいいぞ」
「ありがとうございます!」
なんとか初めての値切りを成功(?)してほっとしながら準備をし始めたゴンズさんを眺めた。
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