第15話 保護
レンゲちゃんを背負い、拠点であるフルベニカ街に戻る。
鳴海は門番さんにどう説明するべきか悩みつつ、気配感知で周りを警戒しつつ街に戻っていた。
「おっ、帰ってきたか。無事に帰ってこれたようだな。……ん?誰だ、その子。」
「え〜と、かくかくしかじかで……。」
鳴海はいつもの門番さんと周りにいた2人の門番さんに自分が体験したことと、レンゲちゃんから聞いたことを話した。
門番さんたちは深刻そうな顔をして話し始めた。
「ふむ、違法奴隷か……。ここ、フレデリカ街では領主様が何年か前にそういった闇の一掃したと聞いたが……。やはりそう簡単なことではなかったようだな。」
「ええ、この街の領主様は聡明で行動力がある人だが、王都ほどではないにしろこの街は物流も多く、発展している街だ。そう簡単には闇は消えないのだろうな。」
「だが、今は目の前のことに集中しよう。違法奴隷……、これはとんでもないことだ。しかも最近冒険者達が言うように魔物が多く発生しているという報告は、間違っていないようだ。」
「ああ、そうだな。俺はこの子から事情を聞くから、お前たちは上に報告してくれるか?」
「わかった。」「任せとけ。」
「よし、すまないナルミ君。待たせたな。」
「いえ、大丈夫です。」
どうやら話し合いが終わったようだ。
やっぱり、このことはただ事じゃ済まないようだ。
「その子は今……寝ているのかい?」
「ええ、さっきも言いましたがゴブリンに追われてましたからね。しかも、ろくに食べ物も食べてないまま。食料を食べるとすぐ寝てしまいました。」
今レンゲちゃんはソファの上に寝かされている。
フードがズレて顔が見えているが、やはり凄い美形だ。(語彙力皆無)
「ふむ、この様子だと当分は起きないだろうな。さてどうしよう。こちらで預かるという道もあるが、どうする?」
「う〜ん……。」
(確かにその方がいいかもしれないが、完全にこの子から信頼を勝ち取ったとは思ってないけど、目が覚めたら見知らぬ男たちに囲まれている状況は流石に可哀想だがらなぁ……。)
「いや、俺が責任もって保護します。いや、保護というのは変か?まあ、いいや。もしこの子に戦闘能力があれば一緒に冒険者になってもいいかもしれませんし、無くても何とかします。」
実は鳴海にはレンゲにに戦闘能力があると思っている。理由は、ただの力もない女の子がゴブリンから逃げられるとは思えないからだ。
何かしらのスキルとかがなくても無意識で身体強化できたり、もしくは素の力でゴブリンより早いならそれなりにあると思ったのだ。
まあ、鳴海も今日始めて戦闘ばっかりのやつなので適当と言われれば反論はできないが……。
「ふむ、わかった。この子は君に任せよう。明日か明後日、またこの門に来てくれ。その時に改めてこの子から話を聞くとしよう。冒険者ギルドにはこちらから話しておく。」
「わかりました。」
鳴海はレンゲを背負い直し、宿に向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「お、リラちゃん。ちょっといいかな?」
「ん?あ、鳴海さん!おかえりなさい!ってその子どうしたんですか?」
宿屋のドアを開けるとちょうどリラちゃんがいたので話しかける。
「ちょっと色々あって俺が保護することになってね、タオルとお湯を用意してくれないかな?」
「なるほど、わかりました!おとーさーん!」
そう言いながらリラちゃんは宿の奥に行ってしまった。
鳴海はそのまま自分の部屋に戻り、ベッドにレンゲを寝かせる。
(う〜ん、どうしようか。変に触って勘違いされるのもいやだしなぁ。)
鳴海はこの後どうしようと悩んでいると、ドアがノックされた。
「ナルミさーん!タオルとお湯持ってきましたよー!」
「あ、わかったー。」
リラちゃんの声が聞こえたのですぐにドアを開けた。
「あ、宿主さん!」
「おうよ、女連れ込んだんだって?あんまり大きな音立てんじゃねえぞ?」
「ちょっ?!違いますってそんなの!それに女とは限らな……」「ちょっとお父さん!失礼でしょ!」
俺の抗議をかき消すリラちゃんの抗議の言葉を無視し、ガハハと笑いながらお湯の入った桶を部屋に置き、戻って言った。
「すみません、鳴海さん……。お父さんいつもあんな感じで……。」
「あはは……。大丈夫だよ。リラちゃんもありがとね。」
リラちゃんはタオルを鳴海に渡しながら申し訳なさそうに話した。
リラちゃんはタオルを渡した後、お辞儀をして去っていった。
ちなみに店主さんの名前は『ジール』さんだ。元冒険者らしく、ガタイはでかいなぁとは思っていたが脱いだらもっと凄いらしい。
「さて。ここからどうしようか。俺がレンゲちゃんを脱がして拭くのもいいが、変に誤解されるのも嫌だなぁ……。」
とは言っても、このまま放置じゃせっかく用意してもらったお湯が無駄になるので、諦めて鳴海が拭くことにした。
(う〜ん、でもやっぱり無抵抗の女の子を脱がすとか罪悪感が凄い……。せめて、一回ちょっと起こしてみて、それでも起きなかったら手足から拭いて行くか。……そういうプレイにも見えなくもな……、ダメだダメだ!そんなこと考えるからそう思うんだ!考えるな〜考えるな〜……。)
できるだけHENTAI的思考をシャットダウンし、まずは声をかけて起こしてみる。
「おーい、レンゲちゃ〜ん。起きろ〜。」
「すう……すう……。」
……全然起きない。
鳴海は無駄な抵抗をやめて、手と足を拭くことに専念した。
「……ふぅ、仕方ない。やるか。」
鳴海は覚悟を決めローブを脱がせる。
一瞬、「もしかして中はなんにも着ていないのでは?!」なんてアホなこと考えるが、レンゲの顔を見た瞬間そんな思考は吹き飛んだ。
何故ならレンゲが想像以上に美人だったからだ。
髪の色は銀髪で寝ているので目の色は分からないが顔のパーツは凄く整っていて、まつ毛も長く、寝顔だから幼さの残った顔は美少女と言って過言ではない可愛らしさだった。
「……ん。」
少しの間鳴海はレンゲの顔を呆然と眺めているとレンゲは少し寝返りを打つ。
すると綺麗な銀髪がずれ、あるものが見えた。
(なっ!こ、これって……もしかして……。)
鳴海は恐る恐るレンゲの顔に手を伸ばす。
そのまま頭に、否、おでこのとある部分を触る。
硬くて少しヒンヤリしてて、弾力がありスベスベだ。
「……角だ。」
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