第8話 宿屋
少し経つと受付嬢さんが帰ってきた。
「はい、おめでとうございます。これからナルミさんは冒険者です。改めまして、私の名前は『ララ』です。剣を持っているということは、今後冒険者として活動していくのですよね?」
「ええ、まあ、」
ランクも上げて資金も集まったら次の町へ行こうと思っていたが、まあ、否定することでもないので一応肯定しておく。
「では、今から依頼を受けますか?」
「いえ、今日は疲れたので宿を取って休もうかなと思ってます。」
さすがに何時間も歩いてさらに今から働く気力はない。
「なるほど、朝は人が多いいですから気をつけてくださいね?」
「はい、ありがとうございます。あ、おすすめの宿屋とかありますかね?」
「ああ、それでしたら。『雨宿り亭』がいいと思いますよ。安くてご飯も美味しいですから。行き方はですね、ギルドを出て右に曲がって、3回目の曲がり道を左に曲がってそのまま真っ直ぐ行くと看板に『雨宿り亭』と書かれた店があるので入ってみてください。」
「ありがとうございます。少し聞きたいのですが、チップとかってどれくらい出した方がいいんですかね?」
受付嬢……ララさんは苦笑いしながら教えてくれた。
「そうですね。銅貨1〜2枚でいいと思いますよ?」
「なるほど…ありがとうございます。」
そう言い、ギルドから出る。ララさんに教えてもらった通りに進むと看板に『雨宿り亭』って書いてある宿屋らしき建物を見つけた。
「お、ここだな。空いてるといいんだが。」
中に入るとすぐに女の子の声が聞こえた。
「いらっしゃいませー!お泊まりですかー?1泊200ユルですよー?食事付きなら250ユルですー!」
すごく元気いっぱいって感じだな。ここの店主の娘さんとかかな、所謂看板娘か。
「ああ、食事付きでまずは10日分お願いするよ。」
250×10ユルならなら銀貨25枚だな。
「わかりました!食事付きで10日分なら、えーと、2が「銀貨25枚だな」、早?!」
銀貨を取り出しながらそう言った。おっと、つい癖でパパッとに出してしまった。この世界は学校はあるけど貴族とかお金持ちたちが行くところで、誰もが行けるところじゃないんだった。
「す、凄いですねー、もしかして貴族様とか?あ、すいません。忘れてください!」
ん?どうして謝ったんだ?……ああ、なるほど、もしかして俺の事お忍びの貴族様とかそんな感じだと勘違いしたのかな?
「もしかして俺が貴族とか勘違いした?そんなんじゃ全然ないから気にしないで。ほら、貴族様がこんな服着るわけないでしょ?」
これで信じてくれるかな?
「うーん……それもそうですね!」
そう言うとまた女の子は元気いっぱいに笑った。うーん、眩しい。
「では、はい!3号室の鍵です!無くさないようにしてくださいね!ご飯は7時から10時までなら用意します!もし、何かしらの理由で取れないなら先に行ってくれると助かります!」
「ありがとう。わかったよ。」
鍵を受け取り、3号室に向かう。ドアを開け、中に入り、鍵を閉めてベットにダイブする。
「あ〜、疲れた〜、気を抜いたらすぐに寝てしまいそう。けどダメだ。ご飯もあるし、ある程度自分のできることを確認しとかないと。」
まあ、一通り森でやったが。魔法に関して全くやっていなかったのでやってみることにした。魔法道具なるものに感化されたのは否定できない。
「えーと、魔法には詠唱とイメージが大切で初級、中級魔法、上級魔法、最上級魔法、神級魔法と別れていて、属性魔法スキルはあくまで魔法行使を補助して、職業発生の条件にでてくるスキルであり、ないからと言って魔法が使えない訳では無いと。つまりこれって、逆に言えばスキルがあっても使えない人は使えないってことか。まあ、いいや。魔力があれば誰でも使えるであろう生活魔法を使ってみよう。」
まずは、『着火』!と言いたいところだけど。ここは建物の中だからやめておこう。
どうしようかなと、考えてたところにコンコンとドアの叩く音がしたので、鍵を開けると、看板娘ちゃんが水の入った桶と布を持ってきていた。
「はい!これで体を拭いてください!」
「ああ、おりがとう。助かるよ!」
そういうと看板娘ちゃんは「にぱー」っと笑った。
(ぐふっ、守りたい…この笑顔…)
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「あ、ああ、大丈夫だ」
おっといけない、これ以上奇行を繰り返すと看板娘ちゃんに確実に変人扱いされる。ロリコンということなかれ。
少しの間怪訝そうな顔をしていたが、すぐに笑顔に戻り「そういえば」と言い、話し始めた。
「自己紹介がまだでしたね!私、『雨宿り亭』店主の娘、『リラ』です!よろしくね♪」
「俺の名前は鳴海だ。こちらこそよろしくだ。」
「はい!ナルミさんですね!よろしくです!ご飯の時間になったら呼びに来ますね!」
「ああ、よろしく頼む。」
俺の返事を聞くとリラちゃんは1度お辞儀して去っていった。できた子だなぁと思いつつ、桶を持ってベッドに近づき、桶を床に置きベットに座る。
「あ、そうだ。水あるし『ウォーター』でも試すか。」
生活魔法『ウォーター』は、みずを生み出す魔法だ。生み出すだけなのでほぼ攻撃には使えない。飲料水にするにも毎回の量が少なく、せいぜい手を濡らす程度らしい。人差し指を立てて桶の上で桶を指さし、魔力を指先に集める。
「よし、行くぞ。イメージは空中の水蒸気を集める感じ……『ウォーター』!」
すると、指先から水のような液体が球体上で発生した。
「おおおお!水!魔法!なんかすげぇ!」
やっぱりテンションが上がって最初から少ない語彙力がさらに無くなってしまった。魔力操作や『気配感知』、『全能操』は何となくわかるだけではっきりとわからなかったし、ステータスはなんかゲーム感が強かった。
でも、確実に今目の前に自分の手の先から水が生み出されてる。その実感が視覚で感じ取ることができたことでテンションが上がってしまった。
気持ちを落ち着かせるために深呼吸をして、桶の水を使い布で体を拭いて予備の服に着替える。
ここまでも実感はしていたがさらに自分が異世界に来たことを実感し、どっと疲れが降ってきた。
服を緩め、リラちゃんがご飯のために呼びに来るまで眠ることにした。
……………………………………………………
名前付けが怖い……。何か名前に変なところがあったら教えてください……。ちなみにリラちゃんの名前は4回変えました…。
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