第3話 中身

もし、あなたが紙パックにオレンジのイラストが描いてあれば、オレンジジュースだと思うでしょう。リンゴが描いてあれば、リンゴジュース。

プラスチック包装の袋でジャーキーが見えても犬のイラストがあればペットフード用と思うでしょう。人は見た目である程度判断をする事が多いのです。

そしてここに迷う男が1人・・・


息抜きでネットを見る、仕事中唯一できる休憩の楽しみだ。

外に出る暇などない。

ふと見つけた、フリマサイトを閲覧する。

洋服、食器、ゲーム機、色々出品されている。

おや?

缶詰が出品されている。

缶詰の出品が珍しい物では無い、問題は写真だ。

白地で黒の文字で「かんづめ」明朝体で書かれている。

イラストは無い、本当に文字だけだ。

なんの缶詰だ?

説明文を見る。

「かんづめです。」

説明になっていない・・・

何が入っているんだろう?

食べ物?缶詰と言えば食べ物だ、日持ちを良くする為使われる。

最近は牛丼の缶詰も出ているそうだ、今度食べてみたいと思う。

苦手な物なら嫌だな。

それとも、「富士山の空気」みたいなネタ系の物か?

あれってどうやって空気いれるんだ?絶対100%じゃないよな。

工場の従業員の息も入っているよな。

何を下らない事を考えているのか。

はたまた、便利グッズか?

水で戻せば元に戻る圧縮されたタオルとか。

結構重宝するんだよな、でも今の私には必要ない。

・・・

気になる、気になって気分転換のつもりが余計に悩みを増やしてしまった。

仕方ない、買うか・・・

即決落札で購入をする。

『お買い上げありがとうございます。早急にお届けします。』

早急に?一体どこから来るんだ?住所登録もしていないのに?

すると、電話が鳴る。部屋の電話だ。

電話を取る。

「あ、先生調子はどうですか?」

私は『先生』と呼ばれるのは好きでは無いが、否定も面倒なのでそのまま話を続ける。

「17時までに脱稿しないと穴があきますよ。どれくらい進んだんですか?」

「もう少しだ、筆が進んでいるから、電話切るぞ」

返答を待たないまま電話を切る。まだ何も進んでいない。

メールが来る。さっきのフリマサイトだ。

『お届け完了』

・・・

ここは都内のホテル。私は作家である。

ああ・・・、「かんづめ」なのは私だったのか・・・。

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