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 しまった。またやってしまった。


「うわあ、また俺は、なんで、こう、うわあああ」


 はげしい、じこけんお。


 彼女が、わざわざ自分の部屋に来て仕事をしているというのに、俺は、なんで、漫画を読んで感想を、言ってるばかりで。


「はあ」


 じこけんおは終わった。というか、終わらせなければならない。


 電話を取り出して、編集部に電話をかける。


『はい。どうしたんですかデスク』


「いま、お前ひとりか」


『ええ。休日ですし』


「先生が行くぞ。新作持って」


『うええ。わたしが応対するんですか』


「そうだ」


 新人には荷が重いか。なんせ、俺の恋人で、素晴らしい漫画家だからな。


「落ち着いていけ。相手の肩書きは忘れろ」


『えっ無理です。だってあの先生ですよ?』


「大丈夫。面白いと思ったら面白いと言え。具体的に言えるんだったら面白かったところも挙げろ。つまらなかったらつまらないと言わずに、作者が何を描きたがってるのか確認しろ」


『デスクってずるいですよね。なんでこう、デスクに大丈夫と言われると大丈夫な気がしてくるのか』


「それだけが取り柄なもんでね」


『ってか、さっきまで先生部屋にいたんですよね。デスクが直接原稿もらえばよくないですか?』


「えっ無理。こわい」


『こわいって』


「だって恋人だよ。恋人の原稿その場でもらって読んじゃったら、それはもうインサイダー取引だよ?」


『わけわかんねえな。あっ先生来ました切ります』


「ちょっ」


 電話。切れた。


「はああ」


 彼女の新作。楽しみだなあ。発売したら買って読もう。


 さて、疲れて帰ってくるかもしれないからごはんとお風呂の用意しておくか。

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