第2話 消えた日常とこれからのこと

 舞梨さんが、何とか俺が華月であると信じてくれたのでこれからどうすればいいか相談することにした。


「舞梨さん、これからどうすればいいと思います?」

「そうねぇ…………とりあえずパパとママには知らせるとして、病院とそれから役所にも行かなきゃよね。あ、その前に学校に今日はお休みするって連絡入れないと」

「創さんと柊子さんに知らせるのと学校の連絡はわかりますけど、病院と役所はどうしてですか?」


 先ほどの慌てっぷりはどこに行ったのか、今はスラスラと答えてくれたが病院と役所にはどんな理由で行かなきゃいけないのかがわからない。


「病院に行くのは体に異変がないか調べるの為で、役所のほうは色々と変更しなきゃいけない手続きがあるかもしれないでしょ?その確認の為によ」


 なるほど、そう言われればそうかもしれない。


「それじゃ俺は学校に連絡入れます…………と、思ったんですけどこの声で電話したらダメっぽくないですか?」

「確かにそうね。学校とパパ達には私が連絡するから、華月は着替えて朝ご飯食べて待ってて」

「了解です」


 そういえば、まだ朝ご飯食べてなかったなぁ………。


 ~~~


 この体のサイズに合う服は持っていないため、肌着とパーカーのみという何とも言えない格好でリビングへと向かい朝ご飯を食べた。


 え?

 舞梨さんの服?

 そっちのほうがダボるんだよなぁ………。

 なんせ、181㎝もあるのだ、身長。

 女の子になる前でさえ、13㎝も俺のほうが小さかったのだ。

 それよりも小さい140㎝あるかないかの今の体じゃいうに及ばず。

 あれ何でだろうか?

 涙が出てきた………ぐすん。


 そんなこんなで朝ご飯を食べ終わるころには創さん達が来て、舞梨さんが状況説明をして病院に連れて行って貰った。

 検査の結果は健康状態には異常なし。しかし、どうして急に性別が変わったかは不明。

 暫定として「突発性性転換症候群」という診断が下された。

 世界でも類似するものは無いらしく、研究のためのデータ採取の為に定期的に検査を受けることとなった。


 次に役所に向かうのかと思ったがその前に服装をどうにかしなければいけないと、ショッピングモールに進路変更し、2時間程かけて俺の新しい服を買った。

 選んだのは俺ではなく、舞梨さんと柊子さんである。

 曰く、「せっかく可愛い女の子になったのだからしっかりおしゃれしないともったいない」とのこと。

 その後も、女の子としての入り用になるものをついでに買い込み、役所で諸々の手続きをし家に帰ってきたのだった。


 ~~~


 遅めの昼ご飯を舞梨さんと一緒に食べる。

 創さんと柊子さんは仕事があるためここにはいない。

 俺が前より食べるのが遅くなったなと再度実感しながら口に入れたご飯をもっきゅもっきゅと咀嚼していると、すでに食べ終わった舞梨さんが問いかけてくる。


「それで、華月はこれからどうする?」

「と、いうと?」

「本意ではないかもだけど女の子になったじゃない?」

「はい」

「そうなると今までのようには生活できないでしょ、肉体的にも精神的にも」


 確かにそうだ。

 俺は今まで男として生活してきたが、これからは女としていきていかなきゃいけない。

 そこには男にはなかった問題が付いてくるわけで。

 高校に入ってからは一人暮らしをさせてもらっていたが、これからも一人でやっていけるかと考えると正直なところ自信がない。

 で、あるならば。


「たしかにそうかもです」

「だからね、私から二つ提案があるんだけど………」

「提案………ですか」


 そう、と言ったあと一呼吸の間をあけて舞梨さんは二つの選択肢を提示した。


「一つ目は、私のところに来て今までのように学校に通うこと。でも、これはあまりお勧めはしない」

「何でですか?」

「理由はいくつかあるんだけど、多分だけど学校に行っても今まで通りの居場所は無くなると思うの。性別が変わるとどうしても接し方に変化が生まれちゃうから」

「……………二つ目は?」

「二つ目は、私のところに来てってところは変わらないけど、そのあとが就職するかバイトをして生活するっていうのに変わる」

「一ついいですか?」

「何かな?」

「舞梨さんと一緒に生活することが前提っぽいんですけど、何か理由があるんですか?」

「それはね、単純な話だよ。パパ達と一緒に暮らすにしても私と暮らすにしても気まずく感じるだろうから、それならまだ私の方がマシなんじゃないかってそれだけ」


 少しイメージしてみる。

 創さん達との生活は………………………うん、かなり気まずい。

 ただでさえ血のつながりがなく、今までさえ多少の気まずさがあったのだ。

 それに性別が変わったことが増えるとかなり気まずさが増える。

 舞梨さんだけなら………………気まずいことには変わりないが、それでもまだこっちのほうがマシのような気がする。


「たしかに舞梨さんだけの方が気まずさはマシかもです」

「それならとりあえず私と一緒に生活することは決定でいいわね?」

「はい、これからよろしくお願いします」

「はーい、こちらこそよろしくね?」


 こうして俺は、義姉である舞梨さんと一緒に生活することとなったのだった。

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