ろぐなろくっ!! 〜TSから始まるVRMMO実況配信〜
霧雨つゆ
前日譚
第1話 目が覚めると女の子になっていたんだが?
ある日の朝、いつものように目覚ましの音で目を覚ます。
俺は上体を起こしあくびをしながら伸びをする。
「ん、ふぁ~~………うぇい??」
そこで聞きなじみのない可愛らしい声と体の感覚に違和感を感じた。
妙に寝巻がダボついている。
それに、なぜか肩に髪が触れている感覚がある。
どういうことだ?
まだ夢の中だとでも言うのだろうか?
とりあえずほっぺを抓ってみる。
「……………いてっ」
抓った個所は普通に痛い。
次に、自身の体を確かめようとベッドから出ようとして……………ダボついた寝巻に動きを阻害され頭からずり落ちた。
ドゴッ!!
鈍い音が部屋に響く。
それでも何とか起き上がり、ぶつけたおでこをさすりながら自身の体を見下ろす。
そこにあったのはダボついた寝巻を纏った、記憶にあるものよりも明らかに一回り以上小さくなった体であった。
……………まさかな?
そんなことはないよな?
半ば現実から目を背けるように心の中でまさかそんなことが起こるわけがないと唱えつつ、起き抜けに聞こえた可愛らしい声の発生元であろう自身の声帯を震わす。
「どうか夢であってくれ!!」
部屋に響くはやはり起き抜けに聞こえた可愛らしい声だった。
さらに枕元に置いていたスマホを手に取り、カメラをインで起動するとそこに写っていたのは自分の知る自分の姿ではなく、二次元から飛び出してきたのかという程の性癖ドストライクの美少女だった。
スマホを枕元に戻し、意を決してズボンとパンツを同時にめくる。
視界に入ったのは日本人の平均サイズの棒状のなにかではなく、綺麗な一本の縦スジであった。
感覚ではわかってはいたけど、やっぱり無い!!
さらば、俺の息子よ…………涙
ついでだからとダボついた寝巻の胸元から胸もみてみる。
しかしこっちには大した変化はなく、気持ちピンクの突起と輪っかが大きくなったかな、と感じる程度である。
ちなみにお尻は少し大きくなっていた。
結論、俺は女の子から女性に変わる中間地点くらいのくっそ美少女になった。
置いたスマホを再び手に取り、今度はメッセージアプリ『LINK』を起動し、登録されている三つのうちの一つのトーク画面を開く。
若干震えている手で「助けて」とだけ入力し、送信ボタンを押す。
そこで、体から力が抜けペタンと座り込んでしまったのだった。
~~~
メッセージを送ってからどれくらいが経過しただろうか。
ドタドタと騒がしい足音をたてて俺の部屋に誰かが向かってくる気配がする。
足音は部屋のドアの前で止まると今度はドアが勢い良く開いた。
「華月、助けてって何があったの!?…………だれ??」
ドアを勢い良く開けたのは『LINK』で助けを求めた相手、俺の義姉である夜永舞梨。
その勢いのまま、何があったのか尋ねる舞梨だったが、俺の姿を視認するなり怪訝な顔になった。
信じて貰えるかはそれこそわからないがとりあえず、ありのままのことを話す。
「えっと、舞梨さん…………俺が、華月です」
「………え?」
「何言ってんのこいつって思うかもしれないんですけど、朝目覚めたらこんなことになってました」
「…………うん、一旦ちょっと待ってね。脳の処理が追いつくまで」
「わかりました」
舞梨さんは眉間を手で押さえながら上を向いて、うーんうーんと唸っている。
それから二、三分ほど唸っていたが処理が終わったらしく俺と目を合わせて話始める。
「ほんとに華月なんだよね?お姉ちゃんを困らせて楽しんでるわけじゃなくて」
「…………俺が、舞梨さんにいたずらしたことってありますか?」
「……………なかったわね。ごめんなさい、華月のことを信じていないわけじゃないのよ?ただ、流石に性別が違う子が自分は華月ですって言っててもそう簡単には信じれないじゃない?」
「まあ、普通はそうですよね」
舞梨さんの言いたいことは良くわかる。
俺も舞梨さんから呼ばれて行ってみれば、そこに居たのは男の人で自分のことを「舞梨です」と言っていても信じないだろうから。
それこそ、自分たちだけが知っている秘密なりを答えられなければ。
あ、その手があったじゃないか!!
「舞梨さん、俺が華月だって証明する方法がありました!俺と舞梨さんしか知らないことを俺が言えれば証明になりませんか?」
「私たちしか知らないことって、例えばどんなこと?」
「今から八年前の夏に、舞梨さんが心霊特集の番組を観たあと、怖くなって俺と一緒に寝た時にお濡r『あー!!それ以上は言わなくていいから!!』………そうですか」
舞梨さんは俺が何を言おうとしたかわかったらしく、途中で言うのを止めてきた。
「それを選ぶのはちょっとどうかとお姉ちゃんは思います」
「ごめんなさい、でもこれで俺が華月だっていう証明にはなったでしょ?」
「…………そうね、いつまでも疑ってるままだと話が進まないものね」
しぶしぶというか、さっきのを少し気にしている様ではあったものの、舞梨さんは何とか信じてくれるようだった。
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