⑫ 一瞬の油断
***
「ハハハハハハハハハハハハハハハ! 同胞達よ! 吾輩が助けに来たぞ!」
――来た!
『カミナリさんだ!』
耳を痛くする程の大きな笑い声に、思わず恭介は拳を握った。
バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ!
紫電を纏った紫マントの大男が突撃する。
敵の三体のテレキネシストは新手の存在に気付いた様で振り返り、一体が霊幻へと飛び出した。
オオおおおおオおオオおオオオオオオおオ!
おオオおおおオおオオおおおおおオオオオ!
おオオオオおおオオおオおおおおおオおオ!
三つの力球が放たれ、それら全て霊幻は紙一重で避けながら突進する。
即座にテレキネシストと霊幻の距離は四メートルを切った。
「撲滅だぁ!」
ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!
霊幻の蘇生符が強く紫に輝き、紫電がテレキネシストへ放たれる!
紫電はテレキネシストの頭に届き、その脳を破壊した!
――良し!
均衡は崩れた。形勢は一瞬にして恭介達の優勢に転ずる。
「Entangle!」
このチャンスを逃すヤマダでは無かった。一気呵成に赤い燕尾服から液体状の触手が伸び、対峙していたテレキネシストの関節へと絡み付く。
テレキネシストの膂力は凄まじく、その触手を簡単に引き千切が、動きは一瞬止まった。
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
霊幻の大きな右手がガシッと触手に絡め捕られたキョンシーの頭を掴んだ。
「良くやったヤマダくん! 離れ給え!」
「BD!」
即座に触手を解かれ、ヤマダ達がその場から離脱した直後、
バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ!
右手から零距離で放たれた紫電は蘇生符ごとそのキョンシーの脳を破壊した。
――これで後一体!
思わず、恭介は笑った。残りの敵の数は一体。これでもう大丈夫だと油断したのだ。
恭介達を狙っていたテレキネシストの蘇生符が一際強く輝き、その周囲に大量のPSI力場が生まれた!
オオおおおオおオオおオオオオオオおオ!
おオオおおおオおオオおおおおおオオオオ!
おオオオオおおオオおオおおおおおおオおオ!
オオオオおオおオおオオおおおおおオオオ!
おオおオオオオおおオオおオおおオオオオ!
おおおおオおオオオオオおおオオおオおお!
オオおおおおおオおオオおオオオオオオおオ!
おオおおおおオおオオおオオオオオおおオ!
歪に歪んだ八つの力球が真っ直ぐにホムラとココミへと放たれる!
――避けろ!
そう恭介は口に出して命令できなかった。テレキネシストが突進し、恭介とアネモイへ巨大なハンマーを振り下ろしていたからだ。
ハンマーの勢いは強烈で、これは避けられないと恭介は悟った。この鉄塊は自分に落ちてきて、一瞬にして挽き肉へと変えてしまうだろう。
――死ん、
だが、恭介は挽き肉に成ることも、ましてや体の一部が壊れることもなかった。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
恭介の目の前にいたキョンシーの体を一瞬にして炎柱が飲み込んだからだ。
炎柱はキョンシーの体に含まれたタンパク質を瞬時に変性させ、身体機能を歪める。それによってハンマーの軌道がズレた。
思考よりも先に恭介はアネモイのレインコートを掴んで横っ飛びした。
ハンマーがガアアアン! と石畳へ空振りする。
ハハハハハハハハハハハ!
「素晴らしいぞホムラ! よくぞ主を守った!」
霊幻の声が聞こえる。その声は本当に楽しそうで嬉しそうで、喜楽に満ちている。
バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ! バランスを崩し、雪のカーペットが引かれた石畳に転がる直前、紫電を纏った霊幻が炎柱に包まれるキョンシーを殴り飛ばした。
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