第3話 その夜、ベンチの上を払う
それから雨の日と曇りの日は、毎日彼女と一緒に帰った。ちゃんと傘も持ち歩くようにしていた。お互いの距離が縮まっていくのを感じた。そして縮まれば縮まるほどに、彼女の不自由さを知ることになった。出歩ける日が限定されるというのは、それだけで辛いことだ。さらに学校にも行けないことが多くなれば、勉強も追いつくのが難しいし、友達も出来ない。この度引っ越してきたのも、レーザーに家がバレたからだと言う。レーザーに振り回される毎日を想像しただけで、息苦しくなった。自分には到底この生活は出来ないと思った。それを今現在までやり続けている彼女は、それだけで称賛を受けるべきだと思った。
新月の夜、彼女とデートをした。公園を歩いただけだけれど、とても楽しかった。
「いつか晴れた日に
僕には
「きっと遊べるようになるよ」
「簡単なことじゃあないわ。それに狙われたら、傍に居る空多君も巻き添えを食らってしまうかも知れない」
「構わないよ」
「わたしは構うわ。せっかく友達に成れたのに。わたしのせいで死んでしまうなんて、嫌。ねえ空多君。やっぱりわたしたち会う頻度を控えた方がいいわ」
なぜそんなことを。いや、気持ちはわかるけれども。たくさん会いたいのが僕のワガママなのはわかるけれども。それでもこうして会っていたいんだ。空科さんの当たり前になりたい。それなのに……。
僕は胸が締め付けられて、思わず言葉を吐き出す。
「大丈夫だよ。僕はレーザーを跳ね返す系男子だから」
彼女は表情を急変させて獣的な眼光を飛ばした。ぱっつんのひさしの奥で構えられた銃口に、僕は射すくめられてしまう。
「バカにしてるの? そんなわけないじゃない。そんな都合のいい人、居るわけない!」
「それは、そうだけど、でも、わからないじゃないか!」
売り言葉に買い言葉だった。ああ。もちろんわかってる。そりゃあ僕が悪い。そんな、レーザーを跳ね返す系男子なんて居るわけないって思うよ。あまりに現実離れした話、
「レーザーに狙われ続けて来た人生なんて、わからないものね……!」
彼女は涙ぐんだまま言葉を投げ捨てた。
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