World Building 1 黒の部族

●はじめに:

 この世界の主な民族である『黒の部族』の解説を行います。


●黒の部族の肉体的特徴:

 種族的にはムーンエルフと呼ばれる彼らは、その身長が男性は156cm前後、女性144cm前後の比較的低身長の人類です。

 体重は同身長の人間族の、平均体重の約0.85%程という痩せ形であり、脂肪はほとんどなく筋肉質な肉体を持っています。その髪は銀髪が普通であり、その瞳は金色に輝いています。種族として特徴的なのはその頭に生えた角と、尻から生えた龍尾です。

 その視覚は遥か地平線を見渡せるほど優れており、それが彼らの優れた射撃能力の基盤となっています。ただ、夜の闇を見通すことはできないので、そこは普通の人間と変わりはありません(闇に対する視覚の適応能力は高いです)。それ以外で特徴と言えるのが、その握力の高さです。人間族に比べて3倍を超える握力を持っています。その握力をもって、彼らは馬具の様なものを使わず、大銀狼の背に乗って激しい戦いをこなすことが出来ます。


●文化:

 『黒の部族』はボーファスの大地を遊牧する遊牧民です。

 彼らはボーファスの大地に住む各種大銀狼族、そして牛・羊・山羊を家畜とし、家畜に適した土地を季節ごとに旅しながら牧畜生活を行っています。しかし、彼らは無計画に移動しているわけではありません。一族ごとにほぼ一定の地域を一定のサイクルで回って生活を行っています。さらに、一定のサイクルで大都市オルドに立ち寄って交易も行います。

 オルドとは、ある一定以上の黒の部族が集合した移動しない集落の事です。これらオルドは、遊牧している者では手に入らない、様々な品を手にするための重要な拠点となっています。

 黒の部族には基本的に貨幣の概念がありません。物々交換が基本であり、貨幣は外国との交易にのみ使用する、特殊なものという考え方が主流です。

 黒の部族は実力主義です。一族の指導者は、能力のある者が話し合いで選出されますし、能力があるなら女性でも異民族でも厚遇されます。女性も一部(巫女職である魔女)を除いて、普通に戦場に立って戦います。彼らはすべからく優れた弓兵であり、その戦力は異民族にとっては脅威の一言です。


●食生活:

 黒の部族は「赤の食べ物」と「白の食べ物」を基本的な食料としています。「赤の食べ物」とは大銀狼を除く家畜の肉の事であり、「白の食べ物」は家畜からとれる乳を加工した乳製品の事です(生乳を直接飲むことはほとんどありません)。

 乳製品の中でも狼乳酒アイラグは特に子供から大人までよく飲まれる飲料です。酒と言ってもアルコール濃度はそれほど高くはなく、さらに部族の生活に必要な各種栄養素を賄ってくれる栄養食品です(夏はこれ一本で生きていけると言えば分かるでしょうか?)。一見偏っているかに見える黒の部族の食文化・栄養は、こう言ったモノによって守られているのです。

 そして、黒の部族にとって、魚、野菜、果物はめったに手に入らない嗜好品的な存在です。これらはたいていの場合大きなオルドにいかないと手に入らないからです。


●武具:

 黒の部族の主な武器は、狼上弓ランダと呼ばれる長弓と、切れ味の良い曲刀であるボーファス刀クメンです。特にボーファス刀は、オルドの鍛冶屋が作成するきわめてすぐれた刃物であり、その芸術的価値もかなりのものがあります。魔力を込められたものも多くあり、そう言った刀は分厚い鋼鉄を容易に切り裂いてしまいます。

 ただし、結局は刀は自身の地位を示すもの……護身用の武器という域は越えません。やはり彼らの最強の武器は狼上弓の方なのです。その一撃は妖魔族の首を吹き飛ばすほど強力です。そして大銀狼の上で扱いやすいように上に長く下に短い形をしているのが特徴です。

 黒の部族の鎧は、獣革と金属片を組み合わせた『複合装甲ガルガント』が普通です。その上に獣革のマントパオを背負う場合もあります。この鎧は極めて動きやすく、軽く、頑丈に出来ています。外国の金属鎧とも引けを取らない防御力を誇り、騎狼猟兵最強伝説の一翼を担っています。


●大銀狼:

 大銀狼とはボーファスの大地に生息する馬ほどの巨体を誇る狼です。

 黒の部族は遥か古代より、彼らを飼育・使役し生活の友としていました。この大銀狼をしつけて騎乗獣に変える技術は、黒の部族にしか伝わっていない秘伝です。そして、それを使役する騎狼術もまた口伝で伝えられる秘伝とされています。この大銀狼こそが黒の部族の強さの象徴ともなっています。

 黒の部族が飼育する大銀狼には、大きく分けて三種類います。

 一般的な騎乗用大銀狼『ガルド』、重量物運搬用の長い毛並みの大銀狼『リガルド』、主に狼乳を取るための大銀狼『グルド』の三種です。

 ガルドは極めて戦闘に特化した戦闘獣です。闇を見通す目と鋭い嗅覚を持ち、闇夜の奇襲すら容易にこなす一族最強の戦力です。

 リガルドは視覚が悪く、動きも鈍く、のんびりした性格をしていますが、その代わり凄まじい怪力を誇り、主に集落の移動の際に利用されます。

 最後のグルドは、きわめて大人しい雑食性の狼です。彼らの乳は加工されて各種乳製品になります。

 その体格・能力の比較は以下の通りです

<ガルド>体長:270~350cm。体重:350~400kg。暗視能力、鋭い嗅覚、認識範囲の広い聴覚。

<リガルド>体長:350~500cm。体重:1200~3200kg。認識範囲の広い聴覚。毛が長くそれを衣類に加工することも多い。

<グルド>体長:220~350cm。体重:450~600kg。鋭い嗅覚、認識範囲の広い聴覚。乳がよく出る。


●信仰:

 黒の部族は全員古代神信仰を行います。そしてその信仰の頂点に立つのが、天帝領にすまう『天帝』です。

 彼らにとって天帝は神の使いであり絶対視される存在です。一族ごとの信仰はその一族内に数名存在する魔女を中心に行われます。彼女ら魔女は一族にとって教師であり、医者であり、神の使いです。


●外国とのかかわり:

 黒の部族にとって赤の民とは長年対立している敵対者です。近年はその傾向が強くなっており、その間で戦争が起きる可能性も高くなってきています。

 黄の民とは、交易を行ってやり取りする間柄で、特に対立はありません。

 緑の民は自分たちを下に見ている、いけ好かない奴らという感覚です。その通り、緑の民たちは、黒の部族を劣った文化の下級民とみなす傾向があるのです。

 それ以外の民族とは基本的に直接交流を持ちません。


●ボーファス帝国(正式名称:リ・ダナ・グレアム・シルバリ・ダンバスト・ボーファス=天帝を中心とするボーファスの大地を遊牧する黒の部族の国家)

 ボーファス帝国とは天帝を頂点とした黒の部族のコミュニティを指す名称です。

 帝国と言っても異民族を支配しているわけでもなく、黒の部族と白の民だけの共同体です。

 黒の部族は普段はかなり自由に生活していますが、天帝の命令で大軍団を形成することがあります。この特殊性から、彼らのことを帝国と呼んでいるのです。その頂点にいるのは天帝ですが、そのすぐ下に黒の部族十二氏族長ハーンが存在します。ハーンはたいていの場合、巨大なオルドを拠点としており、ボーファス帝国の誇る十二の軍団(=狼軍)を形成しています。その軍団一個が大きな都市国家を超える戦力を有しており、全軍団が集まればたいていの国家は滅ぼすことが出来ると言われています。

 この脅威から守るため、赤の民はボーファス帝国との国境付近に『ジグラバットの大防壁』を築き上げました。その周辺では今でも両民族のにらみ合いが起こっています。


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