クラッカー(殺し屋がふたり、女がひとり小編)
春嵐
クラッカーキル
「よし、殺すか」
「おい、まずは電話してからだ。俺の依頼者だからな」
「なんでさ。目の前にいる店員だぞ。殺してしまったほうが早いでしょ」
「まあ待ってろって。まずは電話を掛けてだな」
電話。
依頼者の店員が、お盆を脇に置いて電話を取る。
「あ、どうも。殺し屋です」
電話が切れた。焦り出す店員。
「あ、あら」
「な。だめなんだよ。こういうのはサクッと殺さないと」
「しょうもねえんだよなあ。あんなやつ殺しても一円の得にもならねえじゃん」
「なるだろ。大臣の」
指差した方向。テレビ画面に映る大臣。
「あれ、大臣だよな」
「うん」
「ほんとに間に挟まってたよな」
「うん。わけわかんなかった」
「ほんとだよ。とりあえずやるか」
「どうぞ。物理的な殺しはそちらの領分です」
走り寄って、後ろ脚で依頼者の頭を蹴っ飛ばした。倒れ込んだところに、もう一度脚が入る。依頼者の頭が、スイカ割りのスイカのように、割れた。
「いつ見ても半端ない威力だな、おまえの体術」
「我が血筋は古代中国、夏の日名は岳に連なる。我こそは」
「王族だってんだろ。分かったから警察呼びますよ。いいですか?」
「いいです、はい。どうぞ」
「すごいよなほんとに。血が付かねえんだもの。あんなに派手に吹っ飛ばしたのに」
「血は不浄の象徴なんで。王族はキルしても血が付かないようにしないといかんのですわ」
「古代中国の話だろ」
クラッカー(殺し屋がふたり、女がひとり小編) 春嵐 @aiot3110
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