第78話
“ジィルガに会いに行く”―――と言う段取りになってからは一言も発しなくなった……そんな“彼”の異変に気付き始めた者達は。
「(あ・れ……?)ねえ、どうしたの? ヒヒイロ―――」
「ヒイ君? ねえ……ヒイ君たら―――」
惚れている二人からの呼びかけに反応することはなかった―――が……ある“きっかけ”が火種となってしまう……
「(……)ふむ、新たな情報が入った―――聞きたいか。」
「えっ……なん……なんですか?“新たな情報”―――って……」
「未明―――人族の『都城』マジェスティックが、襲われたそうだ……」
「(!!)ええっ―――?!城塞都市が……?」
「それは事実です。 私は使い魔によりその出来事を知ったからこそ、至急ジィルガ様に合わせる手立てを取ったのです。」
「ササラ―――そう言う事だったんだ……」
「ただ―――私は……そこまでしか知り得ていませんでしたが。 師よ、“新たな情報”とは―――」
「無事―――脅威は払われた……」
そこで語られたのは、なぜこの時期に【黒キ魔女】ササラが自分達に自らの師である【大悪魔】ジィルガを会わせようとしたのか……それは、魔界の一都市が襲われていた事実を知っていたから。
だからこその―――『時間があまり残されていない』……
そして今―――受け入れがたい事実が……
「だが、迎撃に当たっていた【清廉の騎士】に【韋駄天】は生命の危機に晒されたそうだ……。」
“それ”を聞くなり、自分達の目の前で信じがたい光景が―――なんと、自分達の仲間の一人であり、クランのリーダーであるヒヒイロカネの身体から炎が噴き出してしまったのです。
そればかりか―――……
「ぬぅおおお―――!ゆ……許せん!許せんっ!!」
「(!)ヴァーミリオン様……?!」
「そんな……あの“式句”のないままに変わってしまうなんて―――!」
以前は、〈
それに……ササラも放心状態だった―――けれどそれは、ヴァーミリオンが感情的になって現出してしまった事よりも、ある事実が師の口から語られたから。
そう……ササラは―――マジェスティックが襲撃され、その対応に自分の母と、母の戦友とが当たっていた事しか知らなかったのです。
ですから“その後”の事は、何も知らなかった―――ノエルやリリアが、死の一歩手前の危機に晒されていた事など……だから怒り狂えるヴァーミリオンを
#78;無償の厚意の“代償”
「鎮まれ、ヴァーミリオン―――」
「これが、鎮まってなどおれるか! なぜ……なぜなのです、ジィルガ―――この私達が生命を賭してまで護ってきた者達は……なのに私達には口汚く
英雄が、哭いている―――それは仲間達へのあまりにも
けれども―――
その者が弾いた§
そう―――“一言”……たったの“一言”により、その影響を及ぼせる者……だからこそ、その者はこの魔界の『魔法』なる“術式体系”を確立し、魔法の第一人者【
「
だからとて、そこを相手としてどうすると言うのだ、この世の真理を知ろうともせず、またその深淵を覗こうともせず……なんと愚かで、愚かにして可愛い者達よ―――それを護ってやるべき者がいなくてなんとするのだ。 それに
なのに、そんな
ヴァーミリオンが怒れし事由を『
けれども……けれども、たった今成り立ての【グリマー】には、『
「そんな言い方―――ひどすぎると思います!私もスオウへと行った時に、リリア様やホホヅキ様がなぜオーガの郷にいるかの経緯を聞かされはしましたけれど……そんな事があったなんて、知りもしなかった―――なのに……そんなことを帳消しにしてまで救ってあげたっていうのに??そんな言い方って―――そんな言い方って……!」
「こういうモノはな、“償い”を求めてはならぬのだ。 償いを求め、受け入れてしまった時点で、その間には“差”と言うものが生まれてくる。 『救ってやったのに』―――『護ってやったのに』……。 ならば、衆愚はこう帰すだろうな―――『頼んでもいないのに』……と、そうしたことで『救いし者』『救われし者』の“間”で溝……
償いを求める
その
しかしながら、以前にもその事は“学の師”であるカルブンクリスより言い聞かせられたものだったのに……判っていたにも拘らず、前面に出してしまった恨み節―――
ただ……言わずにはおれなかった―――
いわれのない仲間への八つ当たり……その
つづく
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