第57話
「ヘレナ、事前準備は終えさせたぞ。」
「随分と―――かかったもんだねぇ。」
「如何なる場合に於いても、“慣らし”は必要であろう?」
「言えてるけど―――まあ、“大人の事情”とやらは、突っ込まないでおこうかねえ。」
「あれ? あの……『ヘレナ』って、呼ばれていましたけれど、あの“ハラスメント男性”ではありませんよね?」
「ん? ああ~“
それに……この私に“老”“若”“男”“女”は関係ない―――元は痩せっぽちだった“私”が
『ヘレナ』に関しては、これまでの経緯でも実に様々な“人格”が顔を覗かせてきました。
『威厳ある中年男性』
『実戦で叩き上げてきた武を有する老年男性』
『魅力に溢れ、“
『お道化た言動で、周囲を煙に撒く少女』
『活発な言動で、少し“やんちゃ”が見え隠れする若年女性』
そして………………それらの“人格”を束ねる、“主”人格の『ヘレナ』―――
その言動には少し疑問が残る点はありましたが、たった一つの真実―――
今代の魔王の最側近である事……
その『ヘレナ』が、シェラザードの“何”を認め、
それとまた、“これから”の便宜を図る為なのか―――
「えっ? わ―――私達も同行を?」
「うむ、多い方が
「(ほあ~)な、なんと言う光栄の至り―――!
「イヤ~~助かったよ、あんた達も来てくれるんダネ~死ぬ時は一緒ナッ!☆」
「は?」 「い?」
「……ねえシェラ?何故死ぬのが前提なの?」
「そ―――そうですよ!魔王様にお認めになられたと言う事は、この世界の中央行政に
「なあ……シルフィ君、それってな
「へっ―――?」
「だってさぁ~~考えても見なよ、誇大な期待をかけられていざ魔王様の
「シェラ……あなた―――優れた政治家の様な事を言っているように聞こえるんだけれど?」
「あんた……私に喧嘩売ってんのか?私ゃこう見えても『王女』なんだよ?
「(
「(そのようで……今度からは言動に気を付けましょうね。)」
シェラザードが『王女』として王国の城に囚われていた時、城から出奔するまでやらされていた事とは父であるセシル王の『代理』でした。
まだ滅んでいないものの、シェラザードが“粛清”するまでは、王と言う存在は“連中”の欲望・欲求の『
そうした事をやってきたからこそ、判っていた事―――王女だった時には一国……自分の国だけのことを気にかけておけば済んでいた話しでしたが、魔王の職場ともなれば、この魔界の中央行政府のようなもの―――魔界全土に
……と、知られざるシェラザードの一面が知れた処で―――
知れた処で――――
「さて―――と……それでは色々“押し”ていますので、早速参りましょう。」(ムヒ)
「ササラ……あんたってば、本当に淡泊だわね。 それに私の様に変に緊張しないだなんて……もしかして魔王様の事を知ってるの?」
「ええ、まあ……私の“師”に師事していた時に、二・三度。」(ムヒ)
「(はー)あんたの“師匠”……どんな人なの?」
「まあ、それは
≪位相変転≫
#57;“少女”から“大人”へ
【黒キ魔女】ササラは、自身の事を仲間である彼ら彼女にこう伝えていました。
『私これでも200年以上生きていますよ?』
【黒キ魔女】ササラは、現在220年の時を紡ぐる。
長命種であり170年前後を生きているエルフ―――シェラザードやシルフィよりも、50歳も年上……
なのに
その容姿は“少女”のままだった―――
その疑問に指摘は、かなり以前からされてはいたのですが、それまでにもササラ自身よりの説明はなされなかった……
『百聞は一見に
『言葉』を操るに際しては
そう……ササラは、本来は―――
自身にかけた封を解くためにと、
その声質も、幼さが消え少しばかり低く落ち着きのある
しかして、そう……これこそが―――
「(!)サ―――サラ……なのよ、ねえ?」
「でも、それが―――……」
「本来の【
「はい―――この姿こそが、220年の時を紡いできた“私”です。」
「すっかりと大人だな。」
「いえ―――“師”からの御言葉を借りれば、『お前はまだまだ子供だ』と―――」
“少女”から“大人”へと姿を
そう評する者もいたのではありましたが―――何もササラが大人へと変じたのはそれなりの理由があったのです。
それは―――
「(ん~~?)ちょっと待ってよ?ササラが本来の姿に戻った―――てことは……」
「まあ、接見をするのに際し、さすがに“偽りの姿”のままではまずかろう。」
「(~~~)てことは……やっぱキビシー人なんじゃん??」
「最低限の礼節と言うものですよ。 そこさえ間違わなければ気にするような処ではありません。」
「(うん……それ―――ビミョーなフラグなんだよな~)」
『知らない』からこそ、現在得ている情報のみで
けれどしかし―――
この後、シェラザード達が体感してしまうモノとは“それら”を払拭させてしまうものなのでした。
つづく
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