第56話

アンジェリカ竜吉公主との話し合いを経て―――後、シェラザードは自身も属しているクランのメンバーの一人に対し一大告白をしようとしていました。



#56;告白



「ど―――どうしたんだ?シェラ……さん」

「あのね?私ね?ヒヒイロに言わなきゃイケナイ事あるの。」(上目遣いでブリブリ☆)

「―――……。」

「(シェラザード様ぁぁ……)」


少々、頬を紅潮あけに染め、ちょっと“モジモジ”しながら上目遣いで媚びた様に見つめる眼差し―――しかもその場には全く表情を“無”にした『鬼道巫女』もいるのでした。

それに、こうした状況はいくら良い見方をしても多寡が知れていると言うもの……そしてこの状況の推移を、黙って見つめる“眼”は……


「(何も事態をひねくれさせる必要なんてないのですのにねえ~~)」(ムヒ~)


少女の姿をしているとはいえ、メンバーの内では最年長である【黒キ魔女】のササラは、少々悪戯の度合いが過ぎているシェラザードがメンバーの一人である【赫キ衣の剣士ヒヒイロカネ】に“告白”しようとしている内容を、知っていました。

本当のことを言えば、普通に―――真面目に内容を話せば何のことはなかったのですが……『恋の告白』にも似た仕様にするものですから……

「な……なあ?シェラ……わ、悪い冗談よそうぜ?」(←しかし、悪い気はしていない)

「え~~冗談なんてえ~(ブリッ☆)私の“想い”伝わらないのぉ~?」(ブリブリブリッ☆)


「しぇる゛ぁ゛あ゛~~!そこに直りなさい!滅して差し上げまスッ!!」


「(結局、こうなるんですよねえ~~と、言うより、どしてヒヒイロさんも火に油を注ぐような真似を……それにまあ、これ以上“伸ばし”ても間の無駄ですし~~)」


案の定クシナダが怒り狂い、第○次大戦勃発―――に、なるのでしたが……

今回ばかりはそうした状況を望まない【黒キ魔女】からの―――


               ≪おしおきグラビトン≫


「(ヘブッ!?)痛ったいなあ~~もう!」

「(痛い……の……)」

「シェラさん? 今回は重大なことを発表するのですよねえ?」


              ずいっ


「あ゛あ゛~~う゛う゛~~は―――はい……」

「重―――大……って?」

「間違っても、あなたへの恋の告白ではありませんよッ。」

「そ……そうだよなあ~?」(あはは……は)

「違う……の?」

「(ほっ……)」(←少し安心)


「(キシシ~)アレレ~?そう思っちゃったあ?とーーころがぎっちょん、違うん―――」

「ちょっと“重たい”話しになりますので、お道化ふざけは、ここまでにしません?」


               ずずずいっ


「は―――はひぃ……」

「あの……ササラ様?シェラザード様がヒヒイロさんに告白する内容、ご存知なのです?」

「本当はヒヒイロさんにではなく、ヒヒイロさんに潜んでいる“あの方”の英霊になるのですけれどね。」


ササラの所持している武器、『宝珠フェイテルグリマー』と『魔珠モンスロウグロウフライ』―――この2つの質量を倍増させ、それぞれシェラザードとクシナダの脳天に落とした……それも、これからシェラザードがヒヒイロカネ―――いや、彼の魂に潜んでいる“ある人物”の英霊に訊かなければならない事が判っていただけに、これ以上の『間の引き伸ばし』は好まなかったのです。

すると……ササラからの呼びかけ―――“指鳴り”により、召喚よびさまされたヴァーミリオンの人格……

「エルフの王女よ……仲間の一人を揶揄からかうのは中々に感心しないな。」

「どうも……すみません―――」

「それで……私に訊きたい事とは―――」

憧憬あこがれの人物……だからこそ、注意されたことに素直になれるのか―――それに、ヴァーミリオンもどこか判った様な感じさえしてた……

ただ、『どこか判った様な感じ』ではあっても、直接本人から口にした方が判りやすい、すると先程までの雰囲気とは一転させたシェラザードの口からは。

「350年前……あなた様とあなた様の仲間は、“とある人物”から『お願い』をされた―――そうで間違いありませんよね。」

「“とある人物”……からの、『お願い』―――とは?」

「今代の魔王カルブンクリスなる方より、前代の魔王ルベリウスの討伐―――」

「(えっ……)」

「シェラザード様?それって……」


英雄に憧憬あこがれる者であれば、誰もが幼少の頃より何度となく読み返したであろう『創作話』……しかし、ある事情に関わった者ならば『緋鮮の記憶あのお話し』は実話だと知るのです。

それは、『緋鮮の記憶あのお話し』が綴られた同じ時期350年前に活躍をした、“ご本人様達”を知ることが出来たから……も、あるのですが、そのもう一方で―――


「公爵ヘレナが、今代の魔王様の―――側近?」

「それは間違いない。 私の盟友ともも、ある事業を成し就とげる為“手”を欲しているのだ。」

「(ある……事業?)ある事業とは……何なのですか?」

「それは、私の口からは言えない。 その事を聞くのならば直接盟友ともから聞くのがいいだろう。」

「そこで―――です。 天命を全うされたヴァーミリオン様が今生こんじょうの世に『英霊』として留まっている理由……」

「(~~~)魔王様に―――お目通りを?」

「(~~~)そんな泣きそうな顔するなってぇ……調子狂っちゃうったら―――」

「では……先程シェラザード様が道化ふざけていた理由……」

「“重たい”ってもんじゃないでしょう?まあ~~私は王族なんだから、庶民のあんた達よりは緊張しないものだと思うんだけどさ。」


「(―――)それはちょっと違うと思いますよ。」


「ふえ?」


「王族……だからこそになるのかも知れません。 、下々の者より頭をぬかづかれはしても、自らその頭をぬかづいた経験は、ないはず……ですから、これからシェラさんは未知の経験をすることになるのです。 王女自分よりも、圧倒的な権威権力を有する方に、“ぬかづく”……と言う経験を。」


【黒キ魔女】のさとしにより、シェラザードすら気付けなかったことわりを知らされる者達……そう、『魔界の王』に会うと言う事は、


「え・えぇ~~と……あ、あの……ひ、一つ聞いていいカナ?」

「なんでしょう?」(ムヒョ?)

「魔王様―――って、怖い人……?」

「怖い人でしたっけ?」(ムヒョ?)

「どうだかな……私にしてみれば、滅多と怒った表情など見せたことはなかった―――」

「(ほ)あ、そうなんですかあ~~ちょっと安心♪」


                 が


「魔王ルベリウスは、盟友ともの手によって滅せられた……。」

「(………………)はい?」

「え―――でも、止めは確か……」

「ヴァーミリオン様、あなたが為したはずでは……?」

「これは言い方が悪かったかな。 ああ、確かに『生命のつい』としては私が成し得た、だが、『存在のつい』は私の盟友とも―――カルブンクリスが成し得たのだ。」


確かに、『緋鮮の記憶』でのクライマックスは【緋鮮の覇王】であるヴァーミリオンの最大の秘技により魔王は討伐うちたおさ


『そして世界に安寧が訪れたのでした。』


―――と、結ばれていました。


だが……そう―――『お話し』の終幕はそうハッピー・エンドであったとしても、史実ではそうではなかつたのです。

その『史実』を―――その当時生きていた偉人からもたらされる……

ヴァーミリオンの英霊は、自身の盟友である、今代の魔王の人物像を……


『滅多と怒った表情など見せたことはなかった』=『優しい』


と、定義づけたものでしたが、魔界せかいの王である『魔王』を、『存在のつい』へと追いやった事実を知らされると、またぞろ不安は顔を覗かせ始めたのです。






つづく

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