第59話勉強

私とシリルは部屋に戻ってくると…


「この机はシリル様の隣に戻しておきましょうね」


トーマスさんが私の机を軽々と運んでシリルの隣に置いてくれた。


「やった!またシリルと隣だね」


私がシリルに微笑むと…「うん」と天使のような笑顔が帰ってきた。


うん!やっぱりシリルは笑顔の方が似合う!


「しかし…また新たな家庭教師を見つけないとですね…」


トーマスさんがふーっとため息をついた。


「え?だってラクター先生は?」


「あの方はもう二度とこの屋敷の敷居をまたぐことはありません」


トーマスさんがにっこり笑って答えた。


「え?そうなんですか?」


「はい…ですので安心してお二人は勉学に励んで下さい。きっとジェラート様が最適な方を見つけてきてくださるでしょう」


「そうなんだ…」


せっかくこれから仲良くなれるかと思ってたのに…


私は少し残念に思っていると


「当然だよね」


シリルは満足そうに笑っている。


「え?シリルはなんか知ってるの?先生が辞めた理由!?」


「あー…どうだろ?先生もいい歳だったみたいだし…寿退社かな?」


シリルがクスクスと笑うと


「えー!先生…そんな相手が居たんだ…どんな人かなぁ~確かに綺麗な人だったもんね!」


私がシリルに聞くと


「え?何処が!?」


シリルが驚いた顔を見せた。


「あれ?シリルは先生みたいな人は好みじゃない?」


「やめて!あんな人…」


シリルがブルっと震える。


あれ?そんなに嫌だったのか?


「ならシリルはどんな人がタイプなの?」


「え!?」


驚いた顔でこっちをしばらく凝視していると…


「そ、そうだね…僕のタイプは、優しくて、それでいてかっこよくて、人の事を笑顔にしてくれる温かい人…」


そう言ってこちらをじっと見つめてきた。


なるほど!なるほど!

シリルの相手はお兄様かもと思っていたけど違った!


このタイプは主人公だね!


かっこいいって…もう絶対じゃん!


私はシリルの答えにニヤニヤが止まらない。


「うんうん!優しくてかっこいい人…いいよね~」


私がわかると頷くとシリルは眉を下げて仕方なさそうに笑った。


「だよね…そんな鈍感な所も好きなんだ…」


「え?なになに?鈍感!うんうん天然系って事だね!」


シリルがしっかりしてるからその分主人公はちょっとおっちょこちょいなのかも!


「はぁ~早く会えるといいね!」


私が笑いかけるとシリルはそっと私の手を掴んでこくっと嬉しそうに頷いた。


「お二人共、楽しそうですね?なんのお話ですか?」


机を直していたトーマスさんが楽しそうに話している私たちに近づいてきた。


「今シリルの…」


「マリー…シッ!内緒だよ…」


私がシリルの好みを話そうとするとシリルが恥ずかしそうに止める。


あっ!そうかそうだよね…シリルの可愛さなら主人公なんてイチコロだけどちゃんと恋人になってから報告したいもんね!


「なんでもないです!新しい先生楽しみだなぁって!ね!シリル」


私がシリルに向かって笑顔を向けるとシリルも同意するように頬を赤くして頷いた。


「お二人共、本当にいい子ですね。私はお二人に仕えられて嬉しいです…それでは先生が居なくなってしまったので少し私がお勉強を見ましょうか?」


「トーマスさんが!?」


「お願いします!」


私とシリルは嬉しくて顔を見合わせるとお互いに笑いあった。

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