第4話

「君は、どういうつもりなんだ?」

語気を強めた僕であったが、Aには蛙のツラに小便であったようだ。

「この後、ブワッシーグッズ買ってね」

うーむ、まるで会話が成り立ってないじゃないか。反撃になってない。

僕は攻勢の手を緩めない。全く攻勢に回った気分もないが。

「なぜだ? 欲しければ自分で買えば良いじゃないか? なぜ僕が買わなきゃならない?」

「記念よ。記念。この後サービスするから、ね」

やっと会話が成り立ったようにも思えるが、僕の疑問は全く解けてない。このままでは完全犯罪成立だ。

「あの時、お互い恋人いなくてねー。付き合うと ことになるとは思わなかったけどね」

攻勢だ! 奴自ら、展開を明け渡してきたぞ!

いざ行かん!

「そうなの? あんまよく覚えてないけど?」

「酷いぃ、あたしを慰めたのは遊びだったの?」

いや、慰めてない。アンタッチャブル! 勝手な事実を捏造しないでくれ。

「タッテーには敵わないけど、良かったわ」

熱っぽく語り出した Aだが、俺はどんどん覚めていく一方だった。いや、元より、熱くなるものが何もなかったが。

「もう菱川先生たちにも言ってるのよ。後は、亀戸くんをくっつけるのがあたしたちの役目よ」

共通の先生の名や友人の名を唐突に出してくるA。相変わらず脈絡がない。タッテーや亀戸についてはあえて詳しくは記さない。どうでもいい話だからだ。ただ、タッテーだけは、この後も出てくるので軽く説明させて欲しい。

僕とは特に親しいわけではない。Aが昔付き合っていた? とめったやたらに話す存在。

見かけは、眼鏡にアイパーヘアーで、個人的な印象は少々女性に対してダラしない、くらいなものだ。

以前「ボーリング行こうぜ!」と言い出したので、いいねーと応じたところ、女の子の反応が薄かったせいか、何ごともなく解散になった事実から、どんなやつかおわかりいただければ、と思う。

しかし、Aとは、彼女の話から総合するに、お互い恋人いないねーと話すうちに付き合うことになったようだ。とんでもない話だ。その時会ったわけでもないし、良い迷惑だ。勝手に既成事実をでっち上げられてるに過ぎない。

後は僕が別れ話を切り出せば良いだけだ。

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