第3話

ついに、夕食だ。彼女は見た目が、申し訳ないが、カバだ。馬鹿ではない河馬なのである。

これは、相当に食べそうだということは、誰の目にも明らかである。

「イタリアンを食べたい」とAが言い出したとき、僕はイタリア式でキツくディベートするのも良いかとほくそ笑んだ。

自称ドSの彼女だが、ドSだから打ちのめしていけないという理はない。むしろ、そういう奴こそ、コテンパンに打ちのめしたいと、僕の克己心がむくむくと起き上がってきさえする。

Aはパスタ、僕はピザを注文して、そのいずれもが席に来てから、僕の糾弾は始まるはずだった。

現実は、どうだったか? まず僕がピザを手にして、「今日のアレは何だったのか?」問いかけた途端に、 Aは、ピザよりも分厚い掌を突き出した。

「不潔よ」

ふむ、確かに Aの掌は、病的に膨らんでいて、しかも、爪の間にも何か不衛生なものが入り込んでいる。不潔だ。

しかし、 Aが向けた視線は僕に向けたものであるらしかった。生憎だが、Aよりも不潔な部分を、自分には持ち合わせていないとしか言いようがない。

「食事中に肘を着かないで」理解不能の僕にAは更なる言葉を積み重ねてきた。

なるほど。確かに、食事中に肘をつくのは不衛生的かもしれない。

しかし、今は Aを糾弾するためのポーズ作りでもあるのだ。これで終わらせてはいけない。

というか、そもそもSMSをしながら、スマホを弄りながら、食事してる彼女がそれを言うか!とツッコミどころ満載なのだが、ひとまず謝る。

「まぁ良いわ。あたしドSだから今度は許さないわよ」

Aが言った。

全く感情を何も感じない。ここまで平面的に人を責めれるのも凄いが何を言いたいのかもよくわからない。

まぁ反撃開始!

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