第2話
「何で付き合うことになったんだっけ?」なんて聞いてはいけない。
殊に、彼女は怒ると手が付けられない面倒臭い存在と化す。こうなった以上、穏便に解決して終わりたいと僕は思った。
「今日はどこ行くの?」
僕が訊くと、彼女は下品な笑顔を見せて言った。「映画からの、夕食、そして、お楽しみ、ね」
恐ろしい! 一刻も早く帰りたいが、それも叶わぬ願いのようだ。
1人では到底味わうことはないであろうホラー映画がスタートした。
彼女が見たいと渇望した映画は、人形が呪われており、その人形を持っていると、呪われ続けていく、という、ありきたりなストーリーものだ。こんなの見てどうするのか? などとも聞けない。
どうせ人形を破壊して終わるか、破壊しても戻ってきて、悪夢が続くとか、そんなもんだろう。
もちろん、僕のポケットマネーからの奢りで見ているので、せめて、少しだけでも楽しみたい、と思えたのが救いだ。
僕は、最初からじっくりと、スクリーンを舐め回すかのように、隅々まで見ていた。
底の浅い映画は、僕の思う通りの伏線を少しずつだけ敷きながら進んでいた。
しかし、やはり、誰も見ていないものだ。カップルがキャッという雰囲気で観てたり、ホラー研究会の部員のような人たちがじっくりと見てる、というようなことは、全くない。
悲しいかな、この映画を観たいと言い出した張本人Aが、SNSに夢中で、全く見ていない。
この場で文句を言うのも相応しくないと思い、僕は、スクリーンに目を戻した。
不思議な光景だ。
一番この映画に興味ないはずの僕が一番、この映画を観ている。Aはもちろんのこと、あとは、イカれた奴らだけだ。
どうしてこうなった?
僕には解かなくてはならない謎がもう一つ増えたようで釈然としなかった。
後で精一杯の追及を見せてやろうと思い、その場は映画に意識を集中した。
全くの波乱を何も起こらず、予想通りの展開をして、予想通りの終焉を見せた映画。
残した謎は、 Aがばらまいたものだけ。
あとは、これを夕食時に紐解いて解決しなくてはならない。
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