Aの悲劇
林悟
第1話
「あたし達、付き合って1ヶ月よね。記念日忘れたらダメよ! あたし根に持つドMだから」
なるほど。僕はうなずいた。記念日だとか、彼女の性格とか、にではない。
自分たちが付き合って1カ月たっているという事実に対してだった。
なぜって? 付き合っているとは思ってなかったからだ。
「記念日はいつだい?」そう訊くと彼女はただでさえ不機嫌そうな顔をさらに不機嫌に変えて見せた。「バカでしょ? クリスマスに決まってるじゃない! 本当にダサい男ね」
ダサい? 彼女からダサいと言われると、彼は笑ってしまった。
「ちょっとぉ、頭おかしいんじゃないの?」
Aがさらにキツい口調で言った。
仕方ないだろう。不謹慎のようだが、彼は本当に笑ってしまったのだ。
Aの非難めいた口調は彼女の性格の悪さ、キツさをさらに露呈させる。
ダサい奴にダサいと言われても、悔しくないし。
頭おかしい奴に頭おかしいと言われても、あーそうですか? と感情が産まれるというだけだ。
そもそも彼女と付き合ってるつもりもなかったし、よりを戻したいという思いも全くない。
むしろ、付き合うメリットなんてあるのだろうか?
そこが問題だ。
なぜ、我々は付き合ってるのだ?
彼が一番知りたいのは、そこだった。
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