(前作。納得がいかなくて送らなかった方)

 一方通行のタイムマシンに乗って、一人未来へ行っていた。人が栄える未来、戦争、滅び、人のいない陸地。決して戻れないところまで来た頃には、私の身体ももう戻れないほど重い病に侵されていた。

 廃れた母校を訪れ、いまだ泳いでいる錦鯉に最後の食糧をやって、緑の水に足を浸した。

 タイムマシンは時間軸しか歩けない。結局私は、元いた場所から遠く離れることなどできなかった。

 岩の上に座れば、急に心臓を締め上げるような痛みがした。自分の死を、走馬灯が駆け抜けるのを、他人事のように見ていた。戻れない過去へ戻っていくように、記憶が逆向きに動き出す。懐かしい先生、特別授業が好きだった。懐かしい友人、居てくれたことが嬉しかった。私のフェイスベールを言い当ててくれた人、そのまま剥いでくれればよかったのになぁ。タイムマシンを手に入れて、そのまま別れも言わず去ったことに後悔はないけれど、失くした一つ一つに込み上げる大波のような懐かしさは、私もさらって顔中潮だらけにしてしまった。

 逆巻く記憶は、やがてこの小学校を映す。散った桜の花弁が枝へ帰った時、最期に一度強く光って、走馬灯は終わった。

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