ワードパレット(Twitterより)

蜜柑

(実際にTwitterにあげたやつ原文ママ)

  昔、ポストにフェイスベールが届いた。白くて、ハンカチのようにも見えた。添えられた手紙には、あなたは生きている限り被っているものだから、使わず置いておいてほしいと書かれていた。

 走馬灯が駆け抜ける中、ふとそんなことを思い出していた。駆け抜ける映像は逆向きに過去を辿っていた。戻れない過去を懐かしく思い、生きることそのものが一方通行のタイムマシンに乗ることだったのかなと、わざわざ手に入れたその機械が大した役割を果たしていなかったことを知り、笑えてきた。

 私のそばにもう生きている人はいない。タイムマシンの旅の果てに、栄え、争い、滅び、退廃した未来にたどり着いていた。どこかで拾った病は全身を侵し、私自身も滅びに近づいていた。

 思うように動かない体で、あのフェイスベールを取り出す。これを私に送った人は、こうなる未来を見越していたのだろう。これは彼か彼女にとっての餞別で、私にとっても生への餞別の証だった。

 フェイスベールを顔にかけると、脳裏に映る走馬灯は小学生の頃見た風景を映し出す。散った桜のはなびらが枝に帰った時、眩しく光を放って、走馬灯は終わった。

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