日本が土地ごと異世界転移してしまったので、空気をよんで適応してみようと思います! ~国民全員開き直ってハッピーニューライフ ⭐ ~

物語創作者□紅創花優雷

第1話まあ、何が変わるわけではないよね。土地ごと移動してるもの。

 朝起きて、ご飯を食べて、学校に行く。なんともない一日。ごく普通の学生の朝のルーティン。

「行ってきまーす」

 自宅の玄関で声をあげる、彼女は浅田みより。今を生きる華のJK だ。

「行ってらっしゃい。今日、お母さん仕事あるから、夜お願いねー」

「りょーかい!」

 なんとまぁ、朝から元気な事か。みよりは家から出ると駆け足で学校に向かう。時間に余裕はあるが、最近太ってきたから、少しでも運動しようと走っているのだ。


 走る事十分。学校に付き、教室に入るといつものクラスメイト達が待っていた。いわゆるイツメンに手を振り、声を掛ける。

「おはよー」

 一人は、幼馴染のゆみか。他三人は、中学からだったり高校から関わるようになった。この四人とは、プリクラで「BFF」と書くくらい仲良しだ。

「あ、みより。おはー」

「ねぇ、昨日のミュージックパーティー見た? 浅田の好きなレオンズ出てたよ」

 かながそう言って、スマホから写真を見せてきた。そこには、直撮りのテレビに、みよりの好きなレオンズというアイドルグループが歌っている。

「マジで!? 見ればよかった」

 その写真をまじまじと見詰め、自身の昨日の行いを悔やんでいると、ゆみかが手を顎に当て得意げに話し出す。

「ふふ、そうだと思って。幼馴染の私が録画しておきましたぞ! 今日、お母さん仕事の日でしょ? 見るついでに、夕飯食べてかない?」

「お、サンキュー! 感謝するぞ、ゆみか!」

 幼馴染の手を取り、ドラマのワンシーンかのように頭を下げる。そう、みよりはレオンズの熱狂的なファンだ。

 いつもの五人で、他愛もない会話をしているとチャイムが鳴った。そして、担任の川原先生(三十六歳独身男性)が入ってきた。

「えー、おはようございます。男子の皆はもう既に知っていると思うけど、今朝同じクラスの高山がアメリカに飛び立ちました」

 あー、そういえば。両親が長期で海外出張することになったから、アイツも付いていく事になったんだっけか。みよりはそんな事を思い出しつつ、まあアイツは英語得意だしなーと考えている。

 そういえば、イツメンのあやはが高山の事が好きだったような……。あやはに視線をやると、少しだけショックを受けているようにも見える。後ろの席に座っている、かおるがポンっと肩を叩き慰めた。

 その時だ。

「大変だ!! 海が青い!」

 アメリカに行ったはずの高山がそう声をあげ、教室に飛び込んできた。

 海が青い? 当たり前じゃ。みよりがそう思っていると、隣でがたっと勢いよく立ち上がる音が聞こえた。

「なんだって! それは大事件だ!」

 高山の親友、奥原だ。

 おそらく何等かの事があって離陸が遅れたか、アメリカ行きがなしになったかで驚かすためにやっているのだろう。奥原が嬉しそうに目を輝かせている。

「普通にここ地球じゃないぜ! 尋常じゃない程青い!」

「何が起こった!?」

 バカやってんなーなんてコントのような会話を眺めていると、教室に置いてあるテレビがひとりでについて動き出した。

「ん。あれ、故障かな? すまんな」

 川原がテレビを消そうとする。だが、リモコンが反応しない。

「ん? あれ……マジで故障……? 俺、機械できないんだけど……」

 独り言を言いながら、ポチポチとリモコンのボタンを押す。そうしていると、画面がある一人の男を映し出した。

 褐色のごつい男だ。

 男は漫画のようなカタコト日本語で、話し出す。

『あー、あー。きこえてマスカ? 日本人のミナサン。私ハ、お隣の国の王子デス。アノデスネ、ここ、皆さんで言う異世界デス。私の国の王子、おっきくなったら不定期に抽選で、よその国持ってくる仕来りネ。そこと仲良しナルノ。それにこの国選ばれたノデスネ』

『といっても、いつもの暮らし、続けてもダイジョブ。おクニの偉いヒト、シバラクは困ると思うケド、何かあったら、コチラの連絡先に連絡チョウダイネ。そしたらスケダチするヨ。詳しい説明は、ネットでコチラの言葉で調れば、ホームページ出てクルから、そこで見てネ』

『コッチも日本語覚えるのガンバルネ。これから仲良くヤリマショ? じゃあ、サヨナラデスー。……これでアッテマスカネ……』

 ぴっと音が鳴り、画面が真っ暗になった。

 ……まったく情報処理が出来なかった。なんだ、異世界と言ったか。抽選で国を持ってくる? 何を言っているんだあの男。

 クラスが呆然としている中、奥原が声を上げた。

「なんか良くわからなかったけど……」

「つまり……」

「高山、日本いるって事だよな!?」

 なんとも嬉しそうに。

「そうだな!」

「おっしゃー、帰りマック行こうぜ」

「おうよ」

 なんともお気楽な事か。しかし、確かにそう言う事だ。

「ま、なんか良くわからないけど。普通に生活してて問題ないだろう。気を取り直して、ホームルームを始めます」

 そうだよな。あっちがそう言っていたのだから。

 みよりも、他のメンツも。切り替えて席に座る。

 まあ、政治家とかは色々苦労するだろうが……国ごと移動なら、何が変わるわけでもないだろう。もしかしたら、面白い文化に触れられるかもしれないし、まだ知らぬ絶品に出会えるかも。これから先、一体どうなることやら。


 ある日、日本が国ごと異世界転移した。そう、よくわからない異世界の国の仕来りで、抽選で当てられてしまったのだ。

 だけど、空気を読んで適応しました! 新たなステージで日本国の第二の人生が始まる。さあ、ハッピーニューライフといこうではありませんか!

 日本人の適応能力見せてやれ!

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