第17話 ファイト団の危機?
ファイト団のメンバーは、シノを草摘みと小馬鹿にした後、目的を達成するために森の奥に入り込んでいた。
「そっちにいった!」
「任せろ! 強打!」
ポンが声をかけるとタンが逃げる灰ねずみの正面に立ち剣を振り下ろした。強打は戦士のスキルであり、通常より威力の高い一撃が繰り出せる。
グシャッと潰れる音がし、灰ねずみは動かなくなった。
「どんなもんだい!」
「はいはい、灰ねずみぐらいではしゃがないの」
腰に手を当ててアンが諭す。灰ねずみは魔物の中でもかなり弱い部類に入る。ある程度腕っぷしが強ければ天職が農民の村人であっても倒せてしまえるほどだ。
「ちぇっ、アンは冷たいな。俺は褒められて伸びるタイプなんだからもう少しは気を遣ってくれよ」
「はいはい、凄い凄い」
両手を上げて、投げやりに言う。どうみても仕方なくだが。
「はっはっは! そうだろうそうだろう」
「いや、単純過ぎるでしょ」
「でも、そこがタンのいいところでもあるだろう?」
そんな会話をしながらも三人は更に奥まで進んだ。魔物の出る森というのは奥に行けば行くほど強力な魔物が潜んでいることも多い。
ただ、ミツの森は初心者冒険者が実戦練習を兼ねて入ることも多い森だ。故にどれだけ奥にいったところでたかが知れてるというのが彼らの認識でもあった。
「見つけた! ガンズモンキーだ!」
「ウッキィーー!」
目的の魔物を探索する三人だったが、いち早くポンが見つけ叫んだ。ガンズモンキーはやたらと大きな目が特徴的な猿の魔物である。
「よっしゃー! 待て待てーー!」
三人に見つかり、ガンズモンキーが慌てて逃げ出した。枝から枝へ飛び移り、三人との距離を一定に保ちながら逃亡している。
「チッ、結構素早いな。ポン見失うなよ」
「勿論。スカウトの探索能力を舐めないでもらいたいね」
「もう、ちょっとまってよ。私はそんなに足は早くないんだから」
最後尾ではアンが顎を拭いながら必死に二人に食らいついていた。アンの天職は魔法使い。体力面ではだいぶ劣る。
とは言え、少しずつガンズモンキーとの距離が縮まっていく。これであればもうすぐ追いつき退治できる。
三人にはそんな確信があった。だが、彼らは気がつくべきだった。今追いかけている魔物の動きがまるで彼らをどこかにおびき寄せてるようなものであることを。
「よっしゃ! こっちだな!」
そしてタンが藪から飛び出し目にしたものは巨大な肩に飛び乗ったガンズモンキーの姿であった。
「――え? な、何だよこれ……」
「じょ、冗談でしょ――何だよこの巨大な化け物」
「な、なんでこんな魔物がこの森にいるのよ!」
三人は動揺していた。それほどまでに信じられない光景だった。
それはあまりに巨大な存在だった。首から下でも三メートルは軽くある体格をし、その上で首から上が二メートル近くあった。特に頭の部分が以上に長く、円筒状の頭蓋はまるで巨大な柱のようですらある。
見たものを畏怖させる異様な容姿をした魔物だった。しかも魔物は三人に既に気がついていた。
ガンズモンキーが戻ってきた時点でまんまと獲物が引っかかったと思っているのだろう。
その証拠に獲物だったガンズモンキーは巨大な魔物の肩の上で尻を叩いて小馬鹿にしている。乗られている魔物も嫌な顔ひとつしてないことから、この二匹は協力関係にあるとみるべきだろう。
そして巨大な魔物が無造作に地面に置かれていた斧を握りだした。
これにより狩る側が狩られる側にシフトする。三人はFランクの冒険者だ。しかし目の前の相手はFランク程度でどうにかなるとはとても思えない。
「こ、こんなところでやられてたまるもんですか!」
しかしアンが杖を向ける。何もせず終われないと考えたのだろう。
「ウィンドカッター!」
アンが行使したのは風の初級魔法だった。小さな風の刃が魔物の頭に命中する、が傷一つ付いていなかった。
「そ、そんな私の魔法が全く通じない」
「くそ! ワンポイントスロー!」
ポンがベルトからナイフを抜き連続で投げつける。ワンポイントスローはある一点に的を絞るスキルでありその分威力が上がるスキルだ。
だが、ナイフは全て硬い皮膚に弾かれて地面に落ちてしまった。ダメージに全く繋がっていない。
「強打!」
タンが接近し足に向けて剣を振り下ろす。だが銀色の刃が宙を舞う。
「う、うそだろ? 俺の剣が――」
剣は根本からポッキリと折れてしまっていた。もう武器として使い物にならないだろう。
「タン! 逃げてーーーー!」
その時、響くアンの悲鳴。タンはうかつとも言えた。自分より遥かに巨大でリーチのある相手に不覚にも近づいてしまった。
見上げると斧を振り上げる化け物の姿。タンは硬直したように動きが止まっていた。相手のあまりの強さに理解が追いつかず思考が停止してしまっている。
そしてその斧刃がタンに向けて振り下ろされたが、その時だった、疾駆する影がタンに近づき肩を掴み引っ張った。刹那――振り下ろされる凶刃。地面に巨大な亀裂が走った。
「あ、あ……」
危なかった。あと一歩遅ければきっとあの斧で自分がミンチになっていた。そう思うと震えが止まらないようでもあったが、同時にこうも思ったことだろう。一体誰が助けてくれたのか?
そして震える少年に彼は声をかける。
「危なかったな。怪我はないか?」
「え? え? う、嘘だろ! あんた――」
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