プロローグ・終わりと始まりの日(3) 臨時ニュース

 関東テレビの朝の情報番組の本番を前に、番組進行の最終確認をしていたチーフディレクターのもとに、大きなニュースが飛び込んできた。そのニュースを読んで、ディレクターは、すかさず番組スタッフたちに指示を出した。

「本番直前だが、ニュースの差し替えだ!」

 ディレクターの指示で急ごしらえしたニュース原稿が、本番二分前に女性アナウンサーに手渡された。そして時間通り、聞き慣れた軽快なテーマ音楽とともに、いつものように朝七時の情報番組が始まった。

「番組の冒頭ですが、臨時ニュースをお知らせします。本日未明、誘拐されていた毛利もうり康幸やすゆきちゃん(5歳)が無事保護されました。なお、関東テレビでは人質の安全を考慮して、事件直後から誘拐報道を控えていました。犯人は・・・・・・」

 臨時ニュースを読み間違えなく伝えられたことと、人質の無事が確認されたことから、女性アナウンサーの顔には安堵の表情が浮かんでいた。その安堵の表情は、関東テレビの報道フロアのスタッフの間にも、さざ波のようにゆっくりと伝播でんぱしていった。

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