第3話:お別れ会

前回のあらすじ:ブラジルに行く事になりました。


皆さんお久しぶりです。もしくは初めまして茜です 。


前回両親の都合でブラジルに行く事になった私は今日、日本で最後の学校生活を送る事になりました。


普通なら他の子より学校を早く休め、その上テストもする必要の無い(*詳しくは第一話を参照)筈なのに気持ちは深海よりも奥深く沈んでいた。


その理由は日本特有のおもてなし(?)であるお別れ会があるからだ。


子供の頃からめちゃくちゃ人見知りな私は、自分が目立つイベントは出来るだけ避けたい性分だったのだ。


こういう時、どういう反応すれば良いのか分からないし、何より期待の眼差しをした人逹の視線が何より怖い。


お別れ会に行くのが本当に嫌で目覚まし時計を朝七時の設定から十五時に設定したのにも関わらず七時ピッタリに起きてしまった私は(あっ、やべ)と思った。



この時、風邪でも熱でも仮病を使って休めば良かったのにと今でも後悔している。


まあそんなこんなで学校についた矢先、私のクラスは英語クラスへの移動を任された。


クラスの皆も何も事情を聞かれぬまま 、英語クラスのドアを...そっと開けた...


「 パンパンパーン! ! 」


クラッカーの音と共に細いキラキラとした紙切れが私の髪に舞う

(紙と髪を掛けたんじゃ無いですからね)



「茜チャン、ブラジル行きオメデトウー! 」


そこには人一倍声のデカイ男性がクラッカーを持ちながら、声に負けんばかりの拍手を私に向けている。


ーーこの人は英語の先生でブラジルから来た人だ。


そして隣にも同じく英語の先生で、そして日本人である女性の先生が同じくクラッカーを持ちながら出迎えてくれた。


「サア 皆さん、 ハイッテ ハイッテー! 」


所々片言になる日本語で私達を中へ誘導する。


その目の前には:


(茜ちゃん、ブラジルへ行ってもお元気へ)


と大きく黒板に書かれた文字がそこにはあった。


その回りはハート型の風船やハートマークのが至る所に散りばめられ、カーテンですらピンク一色だ。


何と言うかまぁ、ふだん真面目な英語クラスと打って変わり、メルヘンチックな場所へと進化を遂げていた。



そして、テーブルの上には数々の見慣れないブラジルのお菓子らしき食べ物が置かれていた。


ーーそこから甘い匂いが教室中に広がっていく。


「 茜チャンの為に先生一肌ヌイダヨー 」


そう笑顔で言う先生に私は:


「 これ先生が全部やったの? 」

と聞いた。すると:


「そうだよー、茜チャンの名前ピンクだからネー、全部ピンクにしてみたよ 」


どういう事かというと、私のブラジルの名前(ミドルネームはROSA(ホザ)薔薇と言う意味もあるが色ではピンクを表す言葉だ。


正直可愛らしい色はあまり好みでは無いが、自分の為に頑張って用意してくれたのは勿論悪い気はしないし、むしろとても嬉しい。


そして先生の乙女スキルの高さにビックリした。


「サア サアー 冷めない内にタベテ 」


と熱々では無いだろう並べられたお菓子を一つ選んで口の中へ運んだ。


甘ったるく、それでいて病み付きになるそのお菓子は口の中へと溶けていき、それをコップに注がれたお茶で一緒に流し込む。


「あら、 とても美味しい 」


と鳴海先生(日本人の英語の先生)がそう言うと、皆もそう思ったのだろう 。お菓子とお茶を交互に口に含み味わっていた。


甘いお菓子と苦味のあるお茶はどの国でも最強のコンビだ。


それから先生はブラジルについて沢山話してくれた。


先生が住んでいた場所の事とか、文化やブラジル男性は女性のおしりに目がないだとか


小さい子供が聞くにはそぐわない内容もちょっとはあったけど、それでも充分楽しい時間を過ごした。


すると一人の男の子が手を挙げ:


「 先生はサッカー出来るんですか? 」


と元気に先生に聞いた。


その時はブラジル選手のロナウドが活躍していた時期もあってか(自分の年齢がばれちゃう)


ブラジル = サッカーの認識があったからだろう。


先生は:


「 メッチャウマイヨー!昔サッカーやってたからね 」



と言い、まるで事前にこの様な事が起こると把握していたかの如く、サッカーボールが彼の手元に現れ、リフティングを見せ始めた。


そのボールはまるで魔法のように彼の足元でダンスみたいに軽やかに動いていく。


最後に点高く足で打ち上げたボールを片手でキャッチして、先生はお辞儀をした。


すると教室中に大きな拍手喝采が浴びせられ、先生も満更でもない様子で:


「アリガトー!」


と満面の笑みで返した。


「 ブラジルの人って全員サッカー上手いの? 」



またもやさっきの男の子が質問する、ブラジルに行く私よりも興味津々だ.


「 フフン、知りたい? 」

そう先生は言うとにんまりと悪戯っ子の様な笑みを浮かべてボールを床に置き、近くにあった椅子を彼の元へ引っ張りそれに座った。



そして私はこの出来事を一生忘れる事は無かった.



(ちなみにそんな大した事では無いのであまり期待せずに続きを待ってて下さい)





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私のブラジル日記(Meu diário brasileira ) Noah92 @Noah92

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