第4話
僕は少し憂鬱な気持ちでベットから起き上がる。土曜日、日曜日と二日間学校が休みで今週もまた学校が始まるのかと思うと学校に行くのもあまり乗り気ではなくなる。僕はこの二日間別に特筆すべきことは何もなかった。ただの休日を過ごしただけだった。先週のことを考えると平日の方が内容が濃い生活を送っていると思う。この前はあの不良の人を見た。今日もあの木に会えるかな、今日は何を見せてくれるかな。そんなことが今日を乗り切る活力だった。今日から一週間また学校が始まる。そうして僕は学校に向かう。
週の始めだからだろうか、授業がとても長く感じられた。授業が終わり、僕は誰もいなくなった教室を出て裏道に向かう。とても不安だ。二日もたっていて、どうなっているか分からない。先週は急に現れて、三日連続会うことができたけど、週末を挟んだ今回はいつものようにそこにあるのかどうなのか。でもその心配は杞憂だったようだ。あの木は裏道のいつもの場所に立っていた。もう僕を待っていてくれているのではないかとさえ思ってしまうくらいだった。何度か経験したから木に触れることにあまり緊張しなくなっていた。僕は躊躇することなく木に近づいてスッと木に触れる。そして頭の中に入ってくる。
そこは音が響いている部屋だった。誰かが何かを歌っている、カラオケだ。一人の男が目に入る。彼はクラスメイトだ。いつも教室で騒いでいて、その中心にいる人で何度か告白されているのを目にしたことがあってモテている。僕とは全然馬が合いそうになく、苦手とする部類の人だ。話も全然したことがない。周りには彼とよく一緒にいるメンバーたちがいた。そういえば、今日教室で放課後遊ぶという約束をしているのを聞いたような気がしたから、それで遊びに来ているのだろう。でも僕はそんなことよりも驚いたことがあった。一人の女の子がいる。彼女は僕が一年間片思いをしている子だ。消極的な僕は彼女に対して何もアプローチできないでいた。彼女もそんなに騒ぐ人ではなく、大人しいと思っていたから彼らとカラオケに行くなんて思ってもみなかった。時々彼女が彼らと話をしているのは目にしていたけどまさかこんなことになっているとは…。それにそのモテる彼は僕の好きな子の隣を位置どって、ずっと彼女に話しかけている。彼女も笑顔で彼の相手をしている。その様子を周りから見ていればすぐに彼のことが好きだと分かる女子たちが彼女を少し睨んでいる。それだけで彼女に矛先が向けられるのは違うだろと僕は思う。僕がどれだけ腹を立てても、ここで何を言っても女子たちには伝わらないし、目の前に女子たちがいたら僕は怯んで何も言えないと思う。こんなにも弱気な自分自身に苛立つ。すると突然モテる彼の気持ちが伝わってくる。
「やったよ。初めてこの子が来てくれた。何度か誘ったけど来てくれなかったから今日やっと来てくれて嬉しい。この子可愛いからな。俺のこと好きになってくれないかな。付き合って色んなことしてみたいな」
こいつそんなことを思っていたのか。僕にとやかく言う権利はないはずだけど、とても腹が立つ。僕も彼女と話したいと彼に羨望と嫉妬の気持ちが湧く。よくこの空間を見てみれば、そこには恋と嫉妬が入り交じっているように見える。今日来ているうちの一人の男はモテる彼のことが好きであろう女子のことをチラチラと見ている。僕には彼がその女子のことを気になっているようにしか見えなかった。いつもはうるさくて、言いたいことを言っているような彼も少し消極的に見える。女子から男子へ、男子から女子へ好きと思う気持ちが伝わってくる。でもそのどれもがうまくいかない、一方通行のものになっている。また自分の好きな人に好きな人がいる。そのことに向けられる嫉妬、様々な感情が遊び心にしろ、純粋な気持ちにしろ行き交っているのが分かる。こんな迷ってることなんてなさそうないつも騒がしいクラスメイトたちもみんな恋に困っているんだと思った。でもそれが影響して、仲が悪くなるなんて話も聞くことがある。恋愛は魔物だ。人を思う気持ちだけで人を変えさえする。何が起こるか分からない、だけど同時にそれは僕を形づくるのに必要な一ページなのだとも思う。あぁ難しい。また眠気のようなものが襲ってきた。もう終わりなんだ。意識が朦朧としている中僕は何かを聞いた。僕の好きな彼女の気持ちだったのだろうか。
「あーあ、みんなの目線を見てたら分かるな。みんな気になる人がいたりするんだ。でも私だって好きな人いるんだから……。私は————くんが好き」
え、今なんて言ったの?あまり聞き取れなかったよ。一文字目は僕と同じじゃなかった?気になるとても気になる。僕はそんなことを思いながら意識が落ちていった。
目が覚めると僕は横になっていた。やっぱりみんな異性が気になったりしてるんだよね。付き合ってる人たちは本当に自然にできてて僕は分からなかったんだけど、僕みたいに恋愛にうじうじしてる人は沢山いるんだよね?僕は彼女の最後の言葉が気になってどうしようもなかった。僕はそのことをなるべく意識しないようにして、過ごすように努力した。
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