第2話 狭間の作品たち

 ウルトラマン80という作品をご存じだろうか? 1980年(昭和55年)にTV作品として放映された昭和最後のウルトラマンである。つまり、この80を最後にその後

長き渡りウルトラシーズはブラウン管(TVの事をこう呼ぶ文化も、もはや過去のものなのだろうが)から姿を消していたのである。それが復活するのは実に平成になるまで待つことになるのである。そう、1996年(平成8年)放映のウルトラマンティガの登場まで・・・  この間、実に16年である。

 16年・・・これは生まれた子供が中学卒業して高校生になってしまうそんな年月 ちなみに筆者は1982年生まれなので、当時中学2年年生にして、初のリアルタイムでウルトラマンを体感することになったのが、このティガであった。

 子供時代から特撮とくにウルトラシリーズが大好きだった筆者は狂気乱舞してこの作品に夢中になったものである。その意味では、大変思い入れのあるティガであるが、その魅力については今回の趣旨ではないため、またの機会に語らせてもらえればと思っている。ただ、言えることはこのティガの特撮作品としてのクオリティは間違いなく秀でていた。その証拠にいくら特撮好きとはいえ、さすがに中学生になった筆者も当時はゲームやアニメ、もしくはクラブ活動に恋愛等々、特撮とは無縁と思える日常を送っていたくらいであるから、よもや一般の世の中学生など特撮に見向きもしないのが思春期というものなのだろう。そんな一時特撮離れをしていた筆者を再び夢中にさせたのはそれだけの魅力とクオリティを備えていたからに他ならない。それは、単に幼少の子供を満足させるだけではないモノをしっかり提示できたからだともいえる。

 そんなティガは筆者の予想通り人気を博し、その翌年にはウルトラマンダイナ、そして翌々年にはウルトラマンガイアと、続編を展開させるに至ったのである。そう、これが俗にいう平成3部作である。

 この3作品の後、再びTVシリーズは息を吹き返したのはご存じのとおりではないだろうか。2000年代に入っても、新作は発表されているし、定期的にTV作品も作られている。いまのところ16年もの空白を作るような事態に陥る様子もない。そういう意味で現代はとうに氷河期からは脱出出来ている。

 ところで、いまウルトラシリーズについて語ったが、ではもう1つの主軸であった仮面ライダーについてはどうだったのかについてであるが、こちらの場合も、昭和作品としては最後となった仮面ライダーBlackRX(1988)の後、仮面ライダークウガ(2000年)まで、やはり13年間の空白がある。ウルトラシリーズと比較してもほぼ相違ないことが分かる。むしろ、先に復帰を果たしたライバル円谷の成功劇を受けての再始動だったのではないかと推察した時期もあったのだが、実はそう一口には言い切れないのだろう。というのも、先にTVシリーズ復帰に挑戦していたのは仮面ライダーだったのだから 

 上述の仮面ライダーBlackRXという作品は、その前年に放映された仮面ライダーblack(1987)の続編であった。つまりblackの人気を受けて制作されたのである。

この仮面ライダーblackという作品について触れると正直な話、これもクオリティの高さに魅了される作品である。これはウルトラシリーズのティガにも通じるところがあるのだが、とにかく特撮としての出来栄えが素晴らしいのである。例えば怪人の造形であったり、細部のデザインなど、とても子供向けとは思えないものがあった。

失礼を承知でいえば、仮面ライダーシリーズはウルトラと比較した場合、そのストーリーやテーマ性の濃厚さに欠けるきらいがあり、事実(これから語っていく)初期のシリーズなどではそれが顕著で、どちらかというと子供受けする演出や玩具販売を過剰意識した展開が目立っていた。例えば、昭和初期シリーズ(第1期など)では本編前半パートにて、一度変身して怪人と対峙するも逃してしまい、CMを挟んで再度変身して戦うのがお決まりの所謂水戸黄門時代劇パターンが確立されていたくらいである。そんなライダーシリーズにありながら、この作品は、なかなかそういった子供向けでない部分で魅せてくれた。即、続編が決定し、間髪を入れずに放映されたとしてもなんら不思議ではなかったのである。ただし、その要因は主人公南光太郎を演じた当時19歳だった俳優倉田てつをの魅力も大きく影響していたことは論じておかねばならない。

クウガから始まった平成ライダーシリーズがときにイケメンライダー等と評されることがあるように、仮面ライダーシリーズでは主人公の人気というのも重要な成功要素なのである。これが、何も平成シリーズから始まったことではないことを物語っている。さらにいえば、古くは第一作目の主人公の1人本郷猛を演じた藤岡弘(現藤岡弘。)然り、今でこそ恰幅の良いイメージだが当時の藤岡氏の整ったスタイルと濃いマスクは何とも言えぬ魅力を醸し出していたのである。筋肉少女帯などで知られ、特撮好きな大ケンヂ氏もその著書でそんな藤岡氏のフェロモン?について言及していたが納得なのである。

 さて話が逸れたが、このBlack2作品だが、実はこれの前作となると、1981年の仮面ライダースーパー1まで遡らねばならないのだ。

 そう、ここにも6年の空白がある。つまりこれはそんなライダーシリーズTV復帰に挑んだ作品だったのだ。ティガよりも9年も前にである。

 その意味ではチャレンジャーだったといえよう。ただし、結果それなりの人気は博したがライダーひいては特撮再ブームの期待を背負うには荷が重すぎたというわけである。

 昭和のブーム期のような栄華もない、また平成シリーズのような安定もない

そんなまさに氷河期に作られた狭間の作品だと筆者は思っている。

 

 実はその意味では、冒頭にて触れたウルトラマン80という作品もある意味では狭間といえる。ウルトラシリーズにおける昭和最後のTV作品だというのは事実なのだが、この80以前のTV作品といえば1974年放映のウルトラマンレオまで遡らなければならない。厳密にはこの間にザ☆ウルトラマンという作品を挟むのだがこれはウルトラシリーズ初のアニメーション作品ということで今回は扱わないことにする。

つまりこの間6年 ちなみに、このウルトラマンレオこそ、今回筆者が言及していく第二次怪獣ブームの末期の作品でもある。

 そうなのだ、80もまた、ブーム終焉後に単発で制作されて、消えていったそんな狭間作品なのである。

 ただし、怪獣ブームこそ廃れども、80の時代にはまだ、それでも特撮作品の需要は辛うじて顕在だったというのが筆者の見解であり、その意味でBlackほど、チャレンジャーではなかったと考える。

 しかし、いずれにせよ思うのは80にせよBlackにせよ、これら狭間の作品は世間評価(=認知度)こそ低いものの、その作品の出来栄えについては、他のシリーズを超えるものすらあったり ときにはオーパーツ的なものさえ感じずにはいられない。

 氷河期に埋もれたそんな狭間作品があったことも回顧しつつ・・・

 次回はTV作品以外の展開について言及していきたい。


 


 

   

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