第13話 真一と長島…男と女

長島はベッドに入るや否や、真一を後ろから抱く。真一は抵抗せず、長島の気持ちを汲んだ。


真一「ホンマにオレでええんか?」

長島「私はしんちゃんに惹かれた。しんちゃんの幼なじみ(優香)のこと、元カノ(夏美)のことを聞いてて、真面目で優しいけど、しんちゃん自身のことを後回しにするから、幼なじみとも歯車が狂ったんやないやろか…って思ったんや。私は幼なじみの顔に似てるけど、性格とかはとても幼なじみには真似できん。でも、しんちゃんの私とか相手の気持ちになって考えてることに、私はとてもここまで出来るようなことやないって…。だから、これからは『同期で同い年』って言うのやなくて、『友達』でもなくて、『一番大切な人』でいて欲しい、しんちゃん」

真一「オレ、手先は不器用やし、恋愛は鈍感なくらい不器用やし、いいとこなしやで」

長島「そんなことないで、大丈夫や。それくらい私がカバーしたらええやんか。おそらく、幼なじみも元カノもしんちゃんのそういうところをカバーしてたんやないやろか? だから、私もカバーするから…」

真一「…………」


真一は長島に後ろから抱かれながら考えていた。そして先週末、優香と話していたことを思い返していた。





(回想)

優香「しんちゃん、ホンマに女の子探さへんの?」

真一「いま病み上がりやから、そこまで頭にないなぁ」

優香「ちーちゃん(滝川)から聞いたんやけど、しんちゃんが奈良のちーちゃんのところへ行った時に『病み上がりなんやから傍におってくれる人がいないと…』ってちーちゃんに言われたんでしょ?」

真一「うん」

優香「じゃあ探さないと…。昔から言うてるでしょ、一人っ子なんやから…。気になる人いないの?」

真一「いないよ」

優香「ちょっと周りの景色みてみようよ。女の子に注目せんと…。しんちゃんが私の背中を押してくれたから、私はもうすぐ結婚するからいいけど、しんちゃんをこのままにはしておけない。今度は私が真一くんの背中を押さないとね…」

真一「まぁ、オレのことはいいから…」

優香「アカン❗ 絶対しんちゃんのこと気になる人いるから❗ 探したらいるって」

真一「…わかった」


………………………………


優香「8年前、しんちゃんは私の背中を押したから、今の旦那と付き合うことになって、結婚するんや。私だって、しんちゃんの背中を押したいんだよ」

真一「今まで十分押してくれたやんか。だからオレは今まで返すことが出来んかったから、優香ちゃんの背中を押したんや」

優香「しんちゃん…」

真一「オレらは『初恋の人』同士やけど、やっぱり『幼なじみ』なんやから…。21年前、そこの幼稚園の年中組でイスを渡したところからや。席もとなりやったし…。高校で再会して、オレは優香ちゃんにいっぱい背中を押してくれたんや。アイツ(森岡)がおっても背中を押してくれた。ただの友達とは違った。だからオレがいつも優香ちゃんに返すもん(もの)がなかった。あの時(8年前)しかなかったからや」

優香「そうかぁ…。私らはやっぱり『幼なじみ』やもんね、真一くん…(笑)」

真一「うん…」


………………………………


優香「じゃあ、しんちゃん『なでなで』して」

真一「おいおい、旦那にやってもらいなぁ(笑)」

優香「アカン、これはしんちゃんの特権なの」

真一「いや、そんな特権いらんで(笑)」

優香「ダーメ。卒園のときにここでしてくれたでしょ」

真一「もういつの話や? 20年前やで(笑)

もう『なでなで』は時効や 」

優香「時効やない。結婚前やし、最後にしてよ」

真一「………」

優香「しんちゃん、幼稚園卒園の時、嬉しかったんやで。小学校が違って寂しかったけど、ここで真一くんのあの『なでなで』が嬉しかったんやから」

真一「そうか…」

優香「だから『幼なじみ』なんやで、20年ぶりに…」

真一「20年ぶり? いや、高校でも高校卒業してからも、その後もしてますけど…(笑)」

優香「細かいことは気にせんの❗」

真一「もう、この幼なじみは…。幼稚園の時、こんなうるさくなかったのに…。めっちゃおとなしくて、優しくて、笑顔も印象あって、かわいい良い子やったのに(笑)」

優香「うっさいなぁ…」

真一「(笑)…」

優香「しんちゃん…」

真一「…もう、ホンマに1回だけやでな。もう金輪際無いで。結婚してんやから」

優香「うん…」

真一「幸せになるんやで…」


真一は優香の頭をいっぱい撫でた。優香は目をつぶって真一に撫でてもらっていた。


真一「20年も『なでなで』か…」

優香「しんちゃん…」

真一「ん?」


優香も真一の頭を撫でた。


優香「しんちゃんも、『旅』じゃなくて『女の子』の彼女探すんやで❗ 絶対やで❗ 私の言うこと聞くんやで。また変なことしてたら、電話するでな」

真一「オレ、人妻に監視されるんか?(笑)」

優香「人妻言うな」

真一「人妻になるやんか(笑)」

優香「そうやけど…もう(笑)」





真一は優香との話を思い返し、優香がどこかで『監視』しているのでは…と冗談だろうと思いつつ、少し危惧しながら長島のことを考えていた。優香の想いも汲み、真一は考えていた。


真一「りっちゃん」

長島「なぁに」

真一「りっちゃんの想いはわかった。オレも考えてる。でも、もう少し時間が欲しい。それでも待てないって言うのであれば、『友達』からではアカンか?」

長島「いいけど、もうとっくに『友達』やんか(笑)」

真一「あ、そうやったな…(苦笑) オレ、ボケてるなぁ…」

長島「真剣に考えてくれてる証拠や。根本的な事を忘れてるんやから…(笑) しんちゃんの気持ちは汲んでるよ。しんちゃんは誠実で優しいけどホンマに不器用や。でもその不器用なところがしんちゃんの良いところやん。幼なじみ(優香)も元カノ(夏美)もその気持ちを汲んではったんやと思うわ。特に幼なじみは、その気持ちが強かったんやと思う。それは、幼稚園で隣の席やっただけやのに、高校で再会してしんちゃんのことを覚えてたんやから。おそらく、幼なじみはしんちゃんのこと、幼稚園から好きやったんやと思う。だから私もその気持ちを汲むんやで」

真一「そうか…」

長島「でも今日は、甘えて寝るでな(笑)」

真一「……」

長島「緊張してる? 顔赤いんか?(笑)」

真一「…別に…」

長島「どれどれ、赤い顔になってるんか? 私に見せてみ?(笑)」

真一「ちょっと…」


長島は強引に真一の顔を振り向かせる。

長島は真一の顔を見て笑う。


長島「顔赤いやん(笑)」

真一「強引に振り向けたからやろ」


長島は真一の話を遮り、真一の唇に自分の唇を合わせた。


真一「え?」

長島「………(笑)」

真一「なんやねん」

長島「これで私は、しんちゃんの幼なじみ(優香)を越えた」

真一「どういうこっちゃ(事や)?」

長島「キスしたから」

真一「………」

長島「幼なじみとはキスしたんか? 幼稚園の時? それとも高校の時?」

真一「してへんわ。そんなんちゃう(違う)から…」


長島は真一に甘えている。真一は何も言わずに受け止めている。

長島は真一と目が合う。長島が真一と唇を重ねた。そして、長島は真一を強く抱いた。


長島「しんちゃん…」

真一「ん?」

長島「この後どうする?」

真一「りっちゃんの好きにしたら…?」

長島「しんちゃん、こんな状況で何も思わへんの(思わないの)?」

真一「思わんって言うたらウソになるけど、りっちゃんがガマンできそうやないみたいやから…」

長島「しんちゃんのいじわる」

真一「図星やったか?(笑)」

長島「あ、そんなイケズ言うたら、めちゃくちゃにするでな(笑)」

真一「襲う気満々やな…」


ベッドで真一は長島に襲われた。長島は真一と激しく体を重ねた。2人だけの時間が過ぎていく。



長島「結構激しかったやろ?(笑)」

真一「激しいのが好きなんか?」

長島「欲求不満と、しんちゃんやったから(笑)」

真一「なんのこっちゃ」

長島「でもしんちゃん、不器用なくせにベッドの上では器用なんやな(笑)」

真一「そうかぁ? 考えたことないわ」

長島「上手な人ほど、女子には好かれるんよ。どこで勉強したん?」

真一「たった今、りっちゃんに教わった」

長島「見え見えのウソや(笑) 元カノ直伝か?(笑)」

真一「ちゃう(違う)、りっちゃんやって」

長島「私と“して”良かった?」

真一「りっちゃんさえよかったら…」

長島「また照れてる(笑)」


長島が真一にベッタリだった。

その後も長島は真一を離さなかった。真一は長島の気持ちを汲んで、長島を再び優しく抱いた。長島はずっと真一にひっついていた。

長島は真一への想いをぶつけるかのように、朝まで体を重ねた。


長島「しんちゃん、ベッドの上ではホンマに器用やな。嬉しいけど(笑) なぁ、もっと来て」

真一「オレでよかったんか?」

長島「スタイルやない、その人がどんな人か?…って、しんちゃんが私に言うてたやん」

真一「で、こんなことして…」

長島「しんちゃんは私で良かった?」

真一「りっちゃんさえよかったら…」

長島「しんちゃんの意見が聞きたいの」

真一「りっちゃん、オレも気になったかも…」

長島「そうかぁ(笑) じゃあもう一回して❗」

真一「何回するん?」

長島「しんちゃんの今日の限界まで一つになりたい(笑)」


そしてまた、真一と長島は体を重ね、長島は真一を離さなかった。


長島「しんちゃん、嬉しい、めっちゃ嬉しい」

真一「どうしたんや?」

長島「しんちゃんと○○チして、ホンマによかった。こんなに男性を好きになることが今までなかったから…」

真一「なんで? 元彼は?」

長島「私もやったけど、なんか中途半端で、ダラダラしてただけで、行きずりで○○チしてたようなもんやったから…」

真一「そうか…」

長島「しんちゃん」

真一「ん?」

長島「ありがとう」

真一「…うん。りっちゃんもなぁ…」

長島「私の体で満足した?(笑)」

真一「満足とかいう問題やなくて、オレのことを大事に見てくれる女性やからなぁ…」

長島「しんちゃん、寝よっか。もうすぐ朝やわ(笑)」

真一「いつまで体を重ねたいんや?」

長島「夜通し(笑) またしよ(笑)」

真一「おやすみ…」

長島「ちょっと…もう…」


長島は真一の唇にキスをして、ようやく2人の激しい夜は過ぎていき、朝になろうとしていた。


2人は熟睡し、昼前に長島が目を覚ました。

まだ寝ている真一の寝顔を見て、長島はキスをして微笑んだ。


朝食を兼ねた昼食を作る長島。食事の用意ができた長島は真一を起こす。


長島「しんちゃん起きて。ごはん食べよ」

真一「うーん…」


眠気眼で真一が起きる。目の前に長島が座っている。すると長島は全裸だった。


真一「え❗ ちょっとりっちゃん…」


真一は目が覚めた。


長島「目が覚めた?(笑)」

真一「どうしたん?」

長島「○○チした時のままやし。それにしんちゃんやから…(笑)」

真一「かなり積極的というか過激やな…」

長島「しんちゃん」

真一「ん?」

長島「大好きな人と一緒にいるから、こんな格好してるんやで」

真一「わかってる。昨日からりっちゃん、かなり積極的やから」

長島「昨日は、めっちゃ嬉しかった。男の人にこんな気持ちになったのは、しんちゃんが初めてやから」

真一「そうか…。飯食べよか」

長島「食べよ」


2人は食事をとる。


真一「その格好で飯食うの?」

長島「引く?」

真一「別にいいけど…」

長島「あとでまた私食べる?」

真一「りっちゃんって、積極的というか結構性欲強いんやなぁ…(笑)」

長島「やっぱり引くやんなぁ…」

真一「今まで欲求不満やったんか?」

長島「わからんけど、ホンマに好きになった人と…っていう気持ちが強いからかも」

真一「そうか…」

長島「確かしんちゃんの元カノ(夏美)と別れた原因て『体』目的になってて、付き合う主旨が変わったからやったんやなぁ」

真一「うん」

長島「じゃあ、このままでは二の舞になってしまうんやんなぁ…」

真一「どうなんやろ…」

長島「ちょっと気をつけるわ。しんちゃん真面目やから…」

真一「…………」

長島「今度の3連休、どこか出かけへん?」

真一「どこ行きたいんや?」

長島「しんちゃんはどこに行きたいの?」

真一「オレ、これまで『彼女』って『旅』やったから、いろいろ行きたい所はあるけど、りっちゃんはどう考えてるん? 近場がいいのか、遠出がいいのか?」

長島「遠出したいけど、来週の話やから近場にしよっか?」

真一「わかった」

長島「しんちゃんは近場でどこ行きたい?」

真一「そうやなぁ…、場所はともかくゆっくり温泉入ってのんびりしたいかな…」

長島「あ、ええなぁ温泉。しんちゃんと入りたいなぁ…(笑)」

真一「オレ、昔高校の同級生と毎週末立ち寄り温泉行ってた事があって、泊まりたかったんやけど時間の都合で立ち寄り温泉ばっかりやったんや」

長島「じゃあ、尚更旅館に泊まりたいんや」

真一「まぁ、そうやなぁ…」

長島「場所探そか」

真一「うん。どこでもええんか?」

長島「うん、こだわりはないよ。しんちゃんと温泉旅行楽しめたらいいよ」


そう言って、2人は急遽温泉旅行の計画をたてることにした。

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