第10話 真一と長島…腹を割って話す②『長島と優香』

真一と長島は一瞬沈黙した。


長島「私、気になる人のところに行きたいけど、今日会ったんや…」

真一「そうなんや。どうやったん?」

長島「うーん…、普通やなぁ…」

真一「でも今日って、研修やったし…。あ、電車の中でたまたま出会ったとか…。それとも社内?」

長島「…しんちゃん、まだわからんの?」

真一「…え?……それって……まさか……」

長島「……うん……」

真一「………オレ…?」

長島「…ホンマ不器用なんやなぁ…」

真一「……ゴメン…」

長島「なぁ、私ではアカンか?」

真一「いや、アカンとは思ってないで。『同期で同い年』で思ってたから…」

長島「そうやんなぁ…。急に言われても困るやんなぁ…。ゴメンな」

真一「謝らんでもええよ。りっちゃんがオレのこと、そういうふうに見てくれてたなんて、夢にも思ってへんかったから…」

長島「しんちゃん、やっぱり私より幼なじみ(優香)の方が好きなんでしょ? うりふたつの『そっくりさん』ではダメやんなぁ…」

真一「幼なじみ(優香)に似てる似てへん(似てない)は関係ない。それに、幼なじみ(優香)はもう彼氏おるし。だから、幼なじみは関係ない。今は、りっちゃん自身がどんな人なのか、そこが大事なところと違うか? よく『スタイル(見た目)』のことを言う人がいてるけど、オレ自身は女性の容姿はどうでもええ。細かろうが、ぽっちゃりだろうが、胸が大きいとか小さいとか、関係ない。ただ、その人が『どんな人なのか?』、そこを一番重視してるんや。確かにりっちゃんとは仕事で一緒やけど、この間からメールとかで話したり、研修の昼飯の時に話してるけど、ゆっくり踏み込んだ話って、今日が初めてなんとちゃうか?」

長島「そうやなぁ」

真一「だからオレ、それやったら、りっちゃんのこと、もっと知りたい。幼なじみ(優香)の『そっくりさん』っていうのも無視して。そうでないと、りっちゃんにええ加減な返事をしてしまうことになるから、りっちゃんがオレに言いたいことはわかったから、少し時間が欲しいなぁ」

長島「しんちゃん、ホンマ真面目やなぁ。だから、幼なじみも元カノもしんちゃんの事が好きやったんやなぁ…」

真一「…もう少し時間ちょうだい」

長島「わかった。じゃあ私のこと、しんちゃんにアピールするわ(笑)」

真一「わかった…」

長島「なぁ、今日はこれから南町に帰るん?」

真一「帰るで」

長島「泊まらへん?」

真一「お年頃の女性の独り暮らしのところに男が…って」

長島「大丈夫や。しんちゃんは大丈夫やって」

真一「ホンマに付き合ってるんなら、100歩譲って良しとしよう。オレらは現在、会社の同期の同い年やけど、友達っていうとこや」

長島「友達ならかまへんやん」

真一「どこで寝たらええの?」

長島「しんちゃんは、ベッドかな…」


真一は違和感を覚えた。


真一(…ん? なんか昔も、こんなやりとりあったよなぁ…。嫌な予感が…)


それは真一が新潟にいる優香と電話で話しているときのことだった。





(回想)

優香「新潟に来てよ」

真一「おう。マンションの近くにビジネスホテルかなんかあるの?」

優香「ウチに泊まったらええやん」

真一「いや、さすがにお年頃の女子が一人で暮らしてるマンションに男が…って」

優香「ええやん、しんちゃんは大丈夫や」

真一「なんでや? じゃあ、(友人の)白木とか(が来て)もええの?」

優香「アカン」

真一「ほな(そしたら)、オレかてアカンやん」

優香「しんちゃんはいいの❗」

真一「じゃ、オレはとりあえずこたつで寝たらいいんやろ?」

優香「アカン、ベッドや」

真一「ベッド? 優香ちゃんはどこで寝るの?」

優香「私? ベッド」

真一「………。いや優香ちゃんはベッドで寝るやんか。オレはどこで寝るの?」

優香「しんちゃん? ベッド」

真一「襲われたらどうするんや?」

優香「襲ったらええやん(笑)」

真一「おいおい…、何言うてんの? お年頃の女子が『襲ったらええやん』って…。アカンアカン❗」

優香「そんなん、せっかく南町から来てくれるんやから、こたつでは寝させへんよ」

真一「でもそういうわけにいかんやろ?」

優香「いいの❗ しんちゃんは私と寝るの❗

しんちゃんは私と一夜を共にするの(笑) 」


真一は唖然となっていた。


真一「…なぁ、どうしたん? やけくそになってるんか? 寂しいんか?」

優香「…寂しいよ。しんちゃんの声しか聞こえへんから…」

真一「そうか…」







真一「……、りっちゃんはどこで寝るんや?」

長島「私? ベッドやで」

真一「りっちゃんはベッドで寝るんやろ?

で、オレは? 」

長島「しんちゃん? ベッド」


真一(どうなってんねん、ここまで再現やないか…)


真一「………、襲われたらどうするんや?」

長島「襲ってもええで。私を襲いたかったら襲ってよ。私は積極的やで(笑)」

真一「なぁ、欲求不満なんか?」

長島「どうなんやろ? しんちゃんは真面目やから、私もしんちゃんを見習うわ(笑)」

真一「………」

長島「しんちゃん、もっと腹を割って話したいんやけど…。家帰る?」

真一「うーん…、りっちゃんが話したいなら、オレは話は聞くで。明日はどうなん、予定があるんか?」

長島「いや、ないよ。良かったら泊まってってよ」

真一「オレ、着替え持ってきてないし…」

長島「コンビニで下着とか買ってくる?」

真一「そうやな…。あ、Tシャツとか売ってたっけ?」

長島「男子やで、下着姿でもいいんやないの? 私は気にしないから…」

真一「え、でも…」

長島「私は全然気にしないし、それに私が無理にしんちゃんの足をとめさせたんやから…。私のワガママ聞いてくれたんやからね…」

真一「うん…」


真一は困惑していたが、長島が意外にあっけらかんとしているのに感心していた。


二人は近くのコンビニエンスストアで真一の下着を購入し、少しお菓子と飲み物を調達した。


長島のマンションに戻り、再び話す真一と長島だった。


長島「しんちゃん、お風呂沸いたから入ってよ」

真一「ゴメンよ」

長島「ううん、謝らんなんのは私の方やで」

真一「いやいや、大丈夫や」

長島「お風呂入ってよ」

真一「じゃあ、お先に…」


真一が風呂に入る。


長島が脱衣場で真一に話す。


長島「しんちゃん、湯加減大丈夫?」

真一「あぁ、大丈夫やで。ゴメンよ」

長島「ううん…。なぁ、しんちゃん」

真一「…なんや?」

長島「……ううん、なんでもない」

真一「うん…」


長島が何か言いたそうな感じがした真一だった。


真一が風呂から上がる。


真一「お先でした」

長島「いえいえ。じゃあ、私入ってくるね」

真一「あぁ」

長島「もう一回、今度は私とお風呂入る?(笑)」

真一「何言うてんの…?」


長島の爆弾発言(冗談?)もあり、頭をかいた真一だった。


長島が風呂から上がり、真一のいるリビングに戻る。


長島「お待たせ」

真一「あぁ…、え❗」


長島は、バスタオル一枚巻いただけで真一の前に出てきたのだ。


長島「あ、私、いつも通りに出てきちゃった…。しんちゃんやし、いいか(笑)」

真一「いや、良いことない」


真一は長島から背を向けた。


長島「大丈夫やって」

真一「アカン。オレ、男や。彼氏やないし」

長島「いいよ、しんちゃんは真面目やから」


真一は困惑していた。


長島「もう少し待ってな。すぐTシャツ着るから」

真一「うん…」


長島がTシャツとハーフパンツを着た。


長島「お待たせ」

真一「あぁ…」

長島「しんちゃん、顔赤いで(笑)」

真一「………」

長島「照れてる、かわいいやん(笑)」

真一「やかましいわ…(笑)」

長島「しんちゃんはそんだけ素直なんやな…」

真一「どうなんやろなぁ…」

長島「だから、幼なじみ(優香)も元カノ(夏美)もしんちゃんに惹かれたんやと思うわ」

真一「どうなんやろなぁ…」

長島「なぁ、しんちゃん…」

真一「ん?」

長島「なんで、しんちゃんは女の子にあまり積極的になれへん(なれない)の?」

真一「さぁ、自分でもようわからんけど…、なんやろ…、気がないんかなぁ…。自分でもわからへんのや…」

長島「そうかぁ…」


長島は考えていた。


長島(しんちゃん、どうしたらいいんか、わかってないまま、幼なじみや元カノと話してたんかな…。『トラウマ』があったって言うてたし…。元カノにおいては元カノから告白したってということは、そういうことやったんかなぁ…。芯は優しいから、しんちゃんを『男』にしたら…)


長島「しんちゃん、疲れたやろ?」

真一「ん? まぁ、こんなもんとちゃうか(違うか)?」

長島「今日はもう遅いし、寝よか」

真一「あぁ…」

長島「…しんちゃん」

真一「ん?」

長島「…一緒に寝よ」

真一「マジなんか?」

長島「マジやで…。しんちゃん、私じゃダメ?」

真一「いや、オレどうしたらいいか…」

長島「…だからさっきも言うたやん。襲ってもええ…って(笑)」

真一「襲わへん」

長島「もう、しんちゃんったら…(笑)」

真一「からかってるやろ?」

長島「からかってはないけど、顔赤くなるから、かわいいわ(笑)」

真一「あのなぁ…」

長島「でも、マジで一緒に寝よ。おいで」

真一「………」


真一は長島に言われるがまま、ベッドに入る。


長島「私と一緒にベッドに入ってどんな気持ち?」

真一「え…、場所とってるなぁ…って」

長島「なぁ、幼なじみ(優香)とはこんなことなかったの?」

真一「ないで。実はな、さっきのベッドに入る入らんのやり取りは、昔あったんや。けど、幼なじみのところへは結局お互いの都合がつかずに、幼なじみのところへ行かずじまいやったんや」

長島「同じようなやりとりしてたんや(笑)」

真一「どこまで似てるんか、焦るわ…」

長島「よかったなぁ、また再現できて(笑)」

真一「そんな再現はいらんねん」

長島「しんちゃん…」

真一「え?」

長島「話を聞いてくれて嬉しかった」

真一「そうか…」

長島「うん」

真一「りっちゃんも今日は疲れたやろ。寝よ」

長島「うん…。なぁ…」

真一「襲わへんで」

長島「甘えたらアカン?」

真一「どうしたんや?」

長島「元彼と別れて、実は気分がしんどかった」

真一「そうか…」

長島「私の方から積極的やったっていうのもあったから、何か調子が狂って…」

真一「背中やったら、貸したるで」

長島「背中だけ?」

真一「オレは『友達』やで。まだ、りっちゃんの大事な人ではないよ」

長島「大事な人やで、しんちゃんは」

真一「オレ、りっちゃんのこと、まだわかってないところもあるから…」

長島「そうやな…。でも今日だけは甘えたらアカン?」

真一「背中は貸すやんか」

長島「わかった…」


長島は真一を後ろから抱いて、真一の背中にべったりくっついていた。真一はこれ以上何も長島には話さなかった。


長島「…(笑)」

真一「なぁ、どこ触ってんの?」

長島「しんちゃん、体は正直やん(笑)」

真一「襲ってるやんか❗」

長島「アカンの?」

真一「キチッとせんとアカン。なぁなぁでは…」

長島「ホンマに真面目やな。でも余計に甘えたいかも…。だから、しんちゃんも私のココ触っていいよ(笑)」

真一「……………」

長島「もう一緒にベッドに入ってるから、私のこともわかってきたんやないの?」

真一「わかってない。今日一日だけでは…」

長島「なぁ…」

真一「ん?」

長島「私の気持ち、わかる?」

真一「胸キュンか?」

長島「………」

真一「だから、背中は貸す…って言うてるやん」

長島「ココは正直に反応してるのに、くれへんの(もらえないの)?(笑)」

真一「あのなぁ…。とりあえず今日は背中を貸すから、これで堪忍ゴメンなぁ…」

長島「うん…」


真一は再び長島に背中を貸した。長島は真一を後ろから抱いて、真一の大きな背中にもたれながら眠りについた。

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