第6話 真一と長島…真一の破局・入院
真一は長野の夏美と交際していたが、最近はケンカが続いていた。真一の悪友と言う名の親友・浅田が運転する車で長野へ向かった。
真一が乗った浅田の車は、夏美が待つペンションに到着した。
夏美「しんちゃん」
真一「おう。浅田連れてきた」
夏美「夏美です」
浅田「浅田です。あんたのことは堀川から聞いてます」
女将「浅田さんは2階の部屋へ、真一さんはコテージへお願いします」
真一「女将さん、お世話になります」
女将「ゆっくり話してきて。なっちゃん、バイトではないけど真一さん、コテージへ案内して。そのまま話してきて。浅田さんは私がご案内します」
真一「浅田、晩飯の時にな…」
浅田「おう。ゆっくり話してこい」
浅田は女将に部屋を案内され、真一は夏美とコテージへ向かう。
コテージに入った真一と夏美は、こたつに入るなり、話しはじめる。
夏美「しんちゃん、私、考えてたの」
真一「うん…」
夏美「私、しんちゃんと会ったら、やっぱり甘えてしまうの」
真一「わかってる。それは遠距離でなかなか会えへん(会えない)から、会った時しかできんからやろ?」
夏美「そうだよ。ずっと甘えたいし、ずっと体は繋がってたいの」
真一「その気持ちもわかるけど、ホンマにずっと…はしんどいよ。やっぱり遊びに行きたいし、飯もゆっくり食べたいし、話しもしたいやんか。けど、体ばっかりはちょっと…ってことやで」
夏美「でも、夏美はどんなことよりもしんちゃんと体を重ねたいの」
真一「それじゃ、元カレのときと同じやで。体だけのつきあいになってしまうやんか。これでは『付き合う』ことの意味がない。体だけなら、◯フレになるやんか。それは違うで。夏美はそれを良しとしているんやから、それだとさすがのオレも冷めてしまうで。今冷めてるんやけど…」
夏美「しんちゃんは、私とこのままでは無理なの?」
真一「夏美次第やな。明後日帰るまでに結論が出るもんやと思ってる。かといって、この話を先送りするつもりはない」
夏美「今、少し甘えたらダメ?」
真一「ゴメン、今、そんな気になれない」
夏美「わかった…」
真一は冷えきっていた。夏美から譲歩か改善されるのかと思っていたが、夏美は従来から変わっていなかった。冷却期間も無駄だったか…と思った真一だった。
その後も真一と夏美は話し合ったが、平行線のままだった。
翌朝、真一は夏美がペンションにやって来て、コテージへ向かう。
真一「眠れたか?」
夏美「あまり寝られなかった。しんちゃんは眠れた?」
真一「夏美送った後、オーナーにビール飲まされて、よう寝た(笑)」
夏美「そうだったんだ(笑) オーナー、お酒強いでしょ?」
真一「最後のあたりはベロベロになってたわ」
夏美「そうなんだ。しんちゃん、私考えてたの。しんちゃんが言ってたこと、わかった。でも、一緒にいたいの」
真一「一緒にいたいのはわかってる。でも、最近の夏美はオレよりオレの体が優先になってる。だからそれを改善してほしいって言うてるんや…」
夏美「だって、夏美はしんちゃんじゃなきゃイヤだもん」
真一「わかってる。遊びに行きたいしドライブとかにも行きたいし…。そんなのが最近の夏美にはないんやな」
夏美「私はドライブとかより、しんちゃんにベッタリがいい」
真一「それは昨日聞いたし、昨日と話は変わらんし、夏美から改善の話は何一つ無いし…。これではオレが夏美のことが冷めたのは変わらんよ」
夏美「………。じゃあどうするの?」
真一「夏美はオレが『こうしてほしい』って前から言ってることが何も受け入れられないって言うてるんやで。だから、受け入れられないのなら、申し訳ないけど、これ以上夏美とは仲良くできない。事実、オレは夏美のこと冷めた。そして今、話聞いても昨日と同じやから、歩み寄りもないし、折り合いつかんし、話は平行線のままやし、これでは一緒におっても楽しくないなぁ…」
夏美「…しんちゃん」
真一「どうする、夏美?」
夏美「…しんちゃんが夏美のことキライになったのなら、仕方がないよ…」
真一「あきらめるんか?」
夏美「……しんちゃんが決めて」
真一「オレは、申し訳ないけど、今回をもって、もうここへは来ません。明日、浅田と普通に帰るわ。夏美、4年も付き合ってくれてありがとう。夏美には色々と教えてもらった。それは大変感謝してる。これでも大分大目に見てたんやけどなぁ…。夏美が譲れんってことやったから…」
夏美は号泣した。
夏美「私、しんちゃんの言うとおりにしてたら良かったぁー…(泣)」
真一「夏美が積極的にオレにアタックしてきたのはびっくりしたけどな(笑)」
夏美「だって、こんないい人いないって思ったんだもの。世の中の女性、何見てるんだろうって…。でも私もフラれちゃった…」
真一は夏美の頭を撫でた。夏美は真一に抱きつく。真一は仕方なく、夏美を優しく抱いた。
夏美「やっぱりしんちゃんに抱いてもらわないと、落ち着かないよ…」
真一「もうないよ」
夏美「最後にきつく抱いて」
真一「ゴメン、もう終わった男やから…」
夏美「……………」
真一「普通のハグまでな」
夏美「わかった」
真一は夏美が泣き止むまでそっと抱いていた。
浅田が観光から戻り、夏美を乗せて自宅まで送って行く。
真一「元気でな」
夏美「しんちゃんも、素敵な女性と出会ってね」
真一「夏美」
夏美「何?」
真一「最後に、もし困ったことがあったら、ペンションのオーナーと女将さんにお願いしてるから、何かあったら頼ったらいいから。ちゃんとお願いしておくからな」
夏美「うん、わかった。しんちゃん、最後までありがとうね」
真一「こんなことくらいしか出来んけど…」
夏美「ううん、うれしい。最後までありがとうね。元気でね」
真一「みんなに相談するんやで。一人で抱え込むなよ」
夏美「わかった」
そして、浅田は車を出した。夏美は泣いていた。真一は車の姿が見えなくなるまで見送った。
翌朝、真一と浅田は朝食を食べる。
朝食を食べたら、チェックアウトする。
真一「これまで色々とお世話になりました。ありがとうございました」
オーナー「いやいや、こちらこそありがとうございました」
女将「どうか、お元気で」
真一「はい。夏美のこと、よろしくお願いいたします」
オーナー「よし、わかった。任せておけ」
真一「はい」
浅田「行くか?」
真一「うん。では失礼します」
女将「お元気で」
オーナー「なっちゃんのことは任せておけ。元気でな」
真一と浅田はペンションを後にした。
車内で真一と浅田は話す。
真一「浅田、悪かったな」
浅田「何が?」
真一「夏美の送迎とか、嫌なところ引き受けてくれたやないか」
浅田「気にするな。オレだってあんたに色々助けてくれたことがあったから、これくらいは朝飯前や」
真一「すまんな…」
浅田「気にせんでもよいで」
真一「おおきに」
浅田「あんた、やっぱりあの人(優香)の方が良かったか?」
真一「わからん」
浅田「あんたは、あの人(優香)があの子(夏美)みたいなところがあったら、文句なしやろ?」
真一「どうなんやろなぁ…。けど、そうなんかも…」
浅田「あーあ、あんたの嫁はいつなんやろなぁ?」
真一「彼女はおるで。『旅』やからなぁ…(笑)」
浅田「あーあ、また元に戻ったな(笑)」
真一と浅田はワイワイ言いながら長野を後にした。
真一が夏美と別れて1ヶ月が経った。真一の祖母が亡くなった。真一25歳の初夏だった。
真一の祖母の四十九日法要が終わって1ヶ月が経った。
真一は風呂に入って体を洗っていると、首に違和感を覚えた。
真一「ん?」
喉のあたりがピンポン玉くらいの大きさで膨らんでいた。
翌日、真一は島田医院で診察を受ける。首の違和感を訴えた。CTスキャンを撮影し、島田先生が画像を見る。
島田先生「うーん…」
真一「先生…」
島田先生「共栄病院へ紹介状書くから、耳鼻咽喉科へ行ってくれんか?」
真一「わかりました…」
翌日、真一は仕事を休み、共栄病院の耳鼻咽喉科へ島田医院から預かったCTスキャンの画像と、島田先生の紹介状を持って診察を受ける。共栄病院でMRI検査を受け、徳山医師の診断を聞く。
徳山医師「堀川さん、甲状腺の腫瘍かと思います。良性か悪性かは次回検査します。いずれにしても手術して摘出した方がいいと思います。食道を圧迫してしまうと思うので…」
真一「はい…」
盆が明け、真一は甲状腺摘出手術を受ける為、仕事をとりあえず2週間休むこととなった。真一は長島には一切入院のことは話していなかった。
真一は約2週間入院し、手術は無事成功した。
真一は翌週から出勤するが、しばらくの間、内勤となった。
真一は久々に長島にメールした。
真一『お疲れ様です。今日から出勤しております。しばらくの間は内勤ですが…』
長島『お疲れ様です。どうしたん、何があったの?』
真一『実は、先々週から入院してたんや』
長島『なんで?』
真一『甲状腺のガンやって、
長島『ガン? 大丈夫なんか?』
真一『うん。今のところ、内臓への転移はないから…』
長島『良かった。総務から、しんちゃんが有給休暇を2週間も届が出てたから「何があったんか」と思ってたんや』
真一『携帯電話持っていってたから、メールしてくれたら良かったやん』
長島『流石にメール出来んかったわ…』
真一『暇やったのに…(笑)』
長島『なんや、メールしてほしかったんか?』
真一『別に、りっちゃんは仕事やから忙しいもんなぁ…』
長島『事前にかまって欲しがったら、メールしてくれたら良かったのに…しんちゃん』
真一『メールしたかったんか?』
長島『私とメールしたかったんか?』
真一『オレとメールしたかったんか?』
長島『彼女とメールせんかったんか?』
真一『彼女とは別れた』
長島『別れた? なんで? いつ?』
真一『入院する4ヶ月前。彼女がオレというより…オレの体を目的になってきてたから、オレとしては目的が当初と違うから、話し合いしても平行線のままで折り合いつかず、別れた』
長島『体だけ…か』
真一『どないしたん(どうしたの)?』
長島『ううん、別に』
真一『この半年はロクなことなくて、彼女と別れた後、婆さんは死ぬし…』
長島『災難続きやなぁ…。厄除けとか行ったら?』
真一『ホンマ、考えたで』
長島『しんちゃんが彼女と別れたんやったら、話し相手がおらんのか?』
真一『そうやなぁ…、高校時代の同級生(男)ばっかりと、りっちゃんやなぁ…(笑) どうしたん?』
長島『しんちゃん、彼女はまた探さへんの?』
真一『わからん。彼女と付き合うときは、彼女から言われたから…』
長島『そうやったんや…』
これ以降、長島からのメールは途絶えた。真一は長島が忙しいのだろうと思っていた。しかし、これ以降、しばらく長島からメールが来なかった。真一からメールすることもなかった。
真一(りっちゃん、何かあったんやろか…)
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