第4章 夏合宿編 六十六話 侵入者


「エリン先生、一体何が!」

「メルト先生、それが突然森を覆っている魔力結晶の効果が消えて、今他の先生方が詳細を調べに魔力結晶の設置場所に向かった所です!」

「分かりました、生徒達に連絡は?」

「はい、私の方からAクラスの班以外には魔物を保護しながら安全な場所へ避難するように通信してあります」

「Aクラスには俺から1班の班員に他のクラスの班を見つけ次第その護衛をしながら随時状況を知らせるよう通信しておきます」

「アレクか、分かった。そっちは任せたぞ」

「はい。それと……」


 その時、森の方角から巨大な轟音が響きそれに続くように鼓膜を破るような爆発音が宿舎の外から聞こえてきた。


「キャッ!」

「これは、一体……」

「……っ! メルト先生! 敷地内を覆う結界が2箇所何者かによって攻撃されています! これは……っ! 侵入者です!」

「何っ! 生徒や他の先生方は!」

「今はまだ突破されていないので被害は出ていませんがそれも時間の問題かと」

「チッ、すまんアレク何か言おうとしてたみたいだが自体が自体だ。後でいいか」

「俺もそうしたい所ですが、恐らくこの事件に関係しているかと思われます」

「何、どういう事だ」

「メルト先生がここに来る前、他の教師陣も居る中ノワール先生が席を外したきり通信にも反応がありません。事件に巻き込まれたのか若しくは」

「内通者……か」

「はい、その可能性も有り得るかと」


 あの男は最初に見た時から何か怪しい部分を感じた。

 それ以降も気づかれないよう尾行もしてみたが日中は上手く躱され夜は突然外に出ては歩くだけで何もせずに帰って来る等不自然な行動が目に付く。

 ただの散歩だと言われてしまえば頷きざるを得ないため特に何も言わなかったがそんな奴がこのタイミングで姿を消すのは裏があるとしか思えない。


「分かった、ノワールの方は俺に任せろ。お前はエリン先生と一緒に指揮を頼む。何かあったら2年の授業を見てる教師陣とブレンにも手伝ってもらってくれ」


「侵入者の相手はどうします? 生徒が避難している間好きにさせる訳にもいかないでしょう。それに相手は十中八九革命軍リベリオンだ。となると今回の襲撃の目的は生徒のはず」


「本来なら教師陣の誰かが行くべきだが1、2年の担任で戦闘職なのは俺だけだ。俺がノワールの相手をするとなるとこの合宿参加者で今動ける実力者はあいつしかいない」


「ですね、分かりました。それも俺から通信しておきます」

「嗚呼、頼む。俺は虱潰しにノワールの行方を探す、何かあったらこれに連絡してくれ」


 メルト先生はそう言って俺に1班と繋がっている物とは違う色の通信用の魔力結晶を渡した。恐らく個人通信用の物だろう。

 そうしてメルト先生がドアの方へと向かうとそれよりも早く廊下側からドアが勢いよく開かれ今話に上がっていたが駆け込んで来た。


 ▽▲▽▲▽▲▽▲


「とりあえず俺は宿舎に戻ってアレクに現状を聞いてくる。ルイとバーンは治療中の2人の護衛を!」


 俺の指示に2人は深く頷きそれを見て俺は宿舎までの転移門ゲートを開いた。


 突然の魔力結晶の効果停止、その後2回の爆発音。考えたくは無いけど恐らく今この敷地内は何者かによって襲撃されてる。そしてこのタイミングでそれをやりそうなのは……


革命軍リベリオン……っ」


 とにかく今は急いで監督室に行って現状を聞かないと。


 俺は転移門で宿舎内の自室へと移動しそこから下の階の端にある監督室へと走る。幸い監督室までの距離はここから走って1分かからない程度だ。全力で走れば直ぐにその扉は見えてきた。


「アレク! 一体今何が起こってる!」

「っ! レオか!」

「あれ、メルト先生がなんで。外でリタイアする人の担当じゃ……って、そんな事よりも外が大変なことに……」

「メルト先生!」


 俺がそう言いかけた所で巨大な魔力結晶から映し出される映像を椅子に座り見ていた女の先生が声をだいにしてメルト先生を呼んだ。


「どうした!」

「森と宿舎裏の壁が突破されました、侵入者多数こちらに向かっています!」

「チッ、予想より早いな。レオ悪いが詳しく話してる時間が無くなった」

「今のでだいたい分かりましたよ。それで、俺は何をすれば?」

「それについてはアレクが1班全体に指示を出す。俺は今からノワールを探すのにここから離れなきゃならねぇ。この後の行動についてはアレクに聞いてくれ」

「そう言うことだ。レオ、お前には侵入者の対応をしてもらう。他の3人も今の話を聞いていたな」


 アレクがそう言うと魔力結晶からここには居ない3人の声が聞こえてくる。どうやら俺と先生が話している間に合宿前事前に先生から渡されていた通信用の魔力結晶を繋いでいたみたいだ。


『大体の現状は分かった、それで俺達は何をすればいい、レオと合流するか?』


「いや、お前達は他のクラスの班を探してくれ。Aクラス以外は今避難をしつつ魔物達を宿舎前の運動場へ逃がしているはずだ」


『でも、宿舎には今敵が近づいてるんだよね? そうなると運動場も危険なんじゃ』


「嗚呼、だから見つけ次第護衛をしながら昨日教えられた安全な場所へ移動してくれ。だがそこも、100%襲われないとは限らなから気をつけるように」


『分かりました、他のクラスの人達は私達に任せてください!』


「頼んだぞ。他クラスの安全はお前達にかかっていると言っても過言じゃない。何としてもより多くの班を助けるんだ」


『了解!』


「アレク、俺も今すぐ出るよ。敵の場所は?」

「侵入したのは東の川エリアの上からよ。人数は少なくとも15人、その内1人だけが違う服装だったから多分組織内でもそれなりに高い地位の人間だと思うわ」

「ありがとうございます、エリン先生。それじゃあアレク、行ってくる」


 そう言って俺が侵入地点付近まで移動しようと転移門を開くと後ろからアレクに呼び止められる。


「待てレオ、お前も移動中他の班を見かけたら転移門を開いて安全地帯まで運んでくれ。それと、1班通信用の魔力結晶はどうした?」

「あー、何か会った時のために今はルイに預けてる」

「それならそっちにも状況は伝わってるな。分かった、お前はこれを持っていけ予備の魔力結晶だ俺かエリン先生まで繋がる」

「分かった、それじゃあ行ってくる!」


 そうして俺は次こそ転移門を潜り東の川エリアえと移動した。

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