第3章 新領地開拓編 五十七話 開拓開始
翌日、俺は屋敷の使用人さん達に昨日ディーナさんから聞いた話を伝えるため朝からヴォレアスの街へと来ていた。
そして現在ちょうど昨日聞いた話を全て伝え終わった所だ。
「昨日聞いた話はだいたいこんな感じです。詳しくまとめた物を持ってきたので時間のある時にでも確認してみてください」
「レオ様、少しよろしいでしょうか」
そう言って使用人の人達への伝達が済んだところを見計らいゼルさんが声をかけてくる。
「はい、ちょうど今用事が済んだところなので大丈夫です。それで、何かありましたか?」
「はい、お父様がお呼びになられております。今後の日程が決まったようです」
「わかりました、すぐ行きます」
俺は使用人の人達に昨日まとめたメモを渡すと足早に父さんのいる書斎へと向かった。
△▼△▼△▼△▼
「失礼します」
「来たかレオ。早速で悪いんだがそこに座ってくれ」
俺が書斎に入るとそこには既にアラン兄さんも座っていた。
「それで、作業の日程が決まったって聞いたけどいつから始めるの?」
父さんに座るよう促された場所へ俺が座りそれに続くようにしてゼルさんが書斎へ入ってきた所で会話が始まった。
「あぁ、日時は3日後の朝10時からだ。だいたい1週間から2週間の間で終わると思うがその間お前にも頑張ってもらう」
「うん、わかった。予定では確か事前に決めておいた位置に最初壁を作ってから古い壁を壊す感じだったよね?」
俺がそう確認を取ると父さんでは無く隣にいたアラン兄さんが頷き答えた。
「あぁ、と言っても壁を壊す前に周りの溝を埋めなといけないんだけどね。これは壁の作業に比べて土魔法で埋めていくだけだし余った人員でもできるから心配無さそうだけど」
「そっか、人はどれぐらい集まりそうなの?」
次の問いかけには父さんが答える。
「街の人間が150人、冒険者が100人、軍の知り合いを当たってかき集めたのが50人の計300人だ」
「予定通り各方角100人ずつに分けて作業してもらうよ。けど、本当にいいのか? 東側レオ1人に任せちゃって」
そう、俺の今回の役目は大きくわけて3つ、壁の創造と破壊それと物資の調達、運搬だ。その中でも恐らく1番大変なのが壁の創造だろう。何しろ東西南北4つの方角の内1つを任されているのだ。
「大丈夫だよ。それに当日はアレク達も手伝ってくれるみたいだから」
「そうか、お前が大丈夫だと言うなら心配しないが無理だけはするなよ? 時間は十分にあるんだ、ゆっくりで構わん」
「うん、わかった。」
その後北は父さん、西はゼルさん、南はアラン兄さんが指揮を取ることを決め大まかな段取りや配置を話し合ったところで昼食の準備が出来たみたいでノアさんが伝えに来てくれた。
街の開拓まであと少しだ。
△▼△▼△▼△▼
あれから3日、遂にヴォレアスの街開拓当日となったのだが俺は日中学院があるため放課後からの参加となる。
「それで、人員はどれだけ集まったんだ?」
「えっと、こないだ聞いた限りだと街の人以外に冒険者の人とか軍の知り合いの人達にも当たって300人だったかな」
アレクの質問に対して俺は3日前に父さんから聞いたままの答えを返す。
「300人か、4箇所に分担する事を考えたら少し物足りなくも思うがまぁ何とかなるだろう」
「いや、分担は100人ずつだよ」
「は?」
そう言えばアレクにはまだ人の配置を説明してなかったな。
「西、南、北の3箇所に100人ずつ配置して東は俺がやるんだ」
「お前なぁ、いくら創造魔法が便利とはいえ1人でやるにも限界があるだろうが」
「何言ってるんだ? 誰も1人でやるなんて言ってないだろ?」
「は?」
どうしたんだアレクのやつ、さっきと全く同じ顔して。
「だってアレクも手伝ってくれるんだろ?」
「はぁ、言ったな確かに言った。けどな、どこの世界に他の箇所は100人で作業してる所を学生2人でやる馬鹿がいるんだ!?」
「ま、まぁ落ち着けって。さすがにそこは俺も考えてあるよ。ダリスにも声をかけたし他にも何人か宛はあるから」
さすがのアレクもこんなことをいきなり伝えられたらそりゃ怒るか、これは俺の失敗だな。
「数人増えたところでそこまで大きく変わるとも思えないがまぁいないよりは何倍もいいだろう。だが、こんな無茶な割り当てをしたんだお前は馬車馬のように働いてもらうからな」
「あぁ、わかってるさ。とりあえず昼休みに手伝ってくれそうな人にも声掛けておくよ」
俺がそう言うと「任せたぞ」と言ってアレクは自分の席へと帰っていった。はぁ、何とか納得して貰えたな。父さん達の方もあと1時間ぐらいで始まるだろうしなんの問題も無く順調に進むといいけど。
何はともあれ今は学業に集中だな。
レオは街の状況を心配しながらもあと数分で始まるに気持ちを切り替え準備をするため自身の席へと向かった。
△▼△▼△▼△▼
放課後、授業も終わり帰りの支度を済ませると俺はすぐさま
普段なら街の屋敷に直接移動するのだが今回屋敷に用はないので一旦他の
「よっ、えーっと父さんは……あ、いたいた。父さーん!」
「ん? レオか、随分と早かったな」
父さんを見つけ呼ぶと想像よりも俺の到着が早かったのかどうやら少し驚いているみたいだ。
「進捗はどう?」
「あぁ、今のところなんの問題も無く進んでるよ。と言っても見ての通りまだ全然壁らしくは無いがな。まぁ予定通りと言えばそうなんだが」
その辺はまだ作業を初めて数時間だし仕方がないだろう。それに、壁は確かに予定通りだが溝の埋まり方を見ると予定よりも少し早い気すらする。進捗としては十分いいペースだろう。
「アラン兄さん達の方はどう? なにか連絡来てる?」
「あぁ、さっきアランから連絡があったがあっちも順調みたいだぞ。ゼルの方も隣の雰囲気を見ている限り何も問題なく進んでるみたいだ」
「そっか、なら良かった。それじゃあ俺も持ち場に行って作業を始めるよ」
そう言って俺が
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「皆、おまたせ。早速で悪いけど始めよう。とりあえず俺とアレクは1番重要な壁作りだ」
「あぁ、わかった」
俺がまずアレクに指示を出すと昼休みに助っ人を頼んだ2人の内の1人が話し始めた。
「それで、お前の頼みだから手伝いに来たは良いものの土魔法使えない俺たちって何か役立てることあんのか?」
「うん、2人にも十分役立って貰えることがあるよ。バーン、ルイ」
そう、今回俺が声をかけたのは対抗戦代表を決める試合でも戦い普段からアレク達の次に交流の深いバーンとルイの2人だ。
「ルイには風魔法で木材や他の方角との間の位置にある土の運搬を、力とスタミナのあるバーンはダリスと一緒にルイの運んだ土で溝を埋めて欲しいんだ」
「なるほどね。それなら僕も余裕がありそうだし溝の方を手伝うよ」
「あぁ、そうして貰えると助かるよ」
とりあえずはこれで役割分担は大丈夫だな。
「それじゃあ早速始めるか」
「俺たちは溝だ、ルイの土が来るまで俺の魔法で埋めてくぞバーン!」
「おうよ、任せろ!」
そうして各々持ち場へと向かい作業を始める。
さてと、ぼちぼち俺も始めるかな。
と言っても現状創造魔法には一度に作れる量に限界もあるし短くないインターバルもあるからアレク便りになるけど……
「まぁ、そこは1回目の働きで目をつぶってもらうしかないか。『
俺は以前資料で読んだ頑丈な壁の構造を思い出し頭にイメージすることでそれと全く同じ構造の石壁を4枚これまた寸分の狂いもなく同じ大きさで作り出した。
その石壁の1枚の大きさは高さと横の幅が約レオ2人分近くありそれが縦に2枚も積み重なるとなかなかの迫力があった。
「高さはこんなものかな。あとはこれと同じ高さでひたすらに横に伸ばしていくだけだ」
「なるほど、これと同じ高さでひたすらに横にか。任せろ『
そう言うとアレクは詠唱をして次々と俺の作った石壁と同じ高さの壁を作り出していく。と言うか……
「何かこの壁作る時若地面揺れてない?」
「気の所為だろう。そんな事を言ったらお前が石壁を置いた時だって一瞬だったがそれなりの音と揺れがしたぞ」
そう言われてみると確かにそんな気がしてきたな。
まぁ気になることはそれだけでは無いのだが。
「それより、この際なんで壁をより頑丈にする方法を知ってるのかは置いといてなんでアレクの作った石壁の中に鉄筋入ってんの? 土魔法で鉄が作れるなんて初めて知ったんだけど……」
「逆に俺からしてみれば何故誰も作らないとか不思議でしかないがな。鉄だって元は鉄鉱石と言う鉱石、つまりは石の1種だ。なのに何故土魔法で作れないわけがある。土魔法で作れるのであれば後はイメージ力だけでどうにでもなるだろう」
う、うーん……まぁ理屈的にはそうなのか?
だとしても加工済みの鉄を作るなら石や土と違ってかなりのイメージ力が必要になってきそうだけど……
しかもこいつの場合それを石壁の中に埋めながら作り出すってどんな思考回路してればそんな芸当ができるんだ?
「まぁいっか、今考える事でもないしな。とりあえず俺達はこのままじゃんじゃん壁を作るぞ! と言っても俺は最低でも後30分はインターバル必要だからその間はアレク頼んだ」
「はぁ、つくづくお前ってやつは……まぁいい。見たところこの調子ならあと数回やれば半分は終わりそうだしな。お前が回復する前に俺が東側全てを完成させてやる」
それをやられちゃうと俺の存在価値が危うくなるんだけどな……それにこいつの場合本当にそれが出来てしまうから恐ろしい。
「とりあえず俺はルイの手伝いに行ってくるからここは任せたぞ」
「あぁ、わかった」
そして俺はインターバルの間も何かしら作業をしようと自分の空間魔法を生かして運搬作業に取り掛かった。
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一方、レオとアレクが1度目の石壁を建てた直後2連続の轟音と地鳴りに加え突如として東側に現れた石壁を見て各方角一様に驚いた様子で数秒の間作業する手が止まっていたと言う。
「全く、あいつらとんでもない事を平然としてくれたな……」
ジンはそうボヤきつつもこれで周りの指揮が上がればと思い再度指示をだし自身自らも魔法を使いそのサポートを始めていた。
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