第3章 新領地開拓編 五十八話 エピローグ


 街の開拓も順調に進んでいき既に1週間が経過していた。

 予定段階では少なくとも1週間、長引けば2週間近くかかると考えられていた壁作りもわずか4日で終えることができ、壁を作っている間に溝を埋める作業も終え残る仕事は増えた敷地に建物を建てていくだけとなった。


「まぁでも、ここまで早く終わったのは殆どレオとアレク君のおかげだけどね。まさか2人だけで半分以上も作っちゃうとは思わなかったよ」


 アレク兄さんの言う通り壁作りに関しては俺とアレクだけでその半分以上を作り上げている。

 その原因と言うのも東側最初の壁を作った後、俺とアレクは互いにどちらが多くの壁を作れるか競う事にし、その結果開拓開始から3日目には2人だけで他の方角の壁まで作ってしまったという訳だ。

 恐らく3日目に見兼ねた父さんが「他の手伝ってくれている人員の仕事が無くなるだろ」と止めてくれなければ勢いのままに全ての壁を2人だけで作ってしまっていただろう。


「うん、俺もあれは少しやりすぎたと思ってるよ」

「少しではなくかなりだ。まぁおかげで他の人員の士気も上がり他の作業にに使える時間が増えたから良かったものの。お前達は少し自重すると言うことを覚えた方がいいようだな」


 自重か、確かに今までもなんだかんだ自重してきた事って無かった気がするな。

 その結果がこないだの演習場大破だったり今回の件に繋がっていると言っても過言ではない気もするし。

 

「中でも同年代の子達に比べお前たち2人の持つ力は強すぎるんだ。方や光と闇属性に公にしてはいないがそれ以外にも特殊な4つの魔法を使い、方や基本の4属性を派生まで全て使いこなす神童。強大すぎる力は抑えることも覚えなければ色々と面倒なことに繋がるからな」


 なるほど、軍でもかなりの地位にいたらしい父さんの言葉となると余計に説得力が増すな。今回の件に限らず少し反省しなきゃな。


「とりあえず壁については助かった。だが、ここからの作業は任せてくれ。さすがにわざわざ募集までかけて雇った人員を使わない訳にも行かないからな」

「うん、わかった。けど、資材調達とか運搬とか手伝えそうなことがあればやるよ」


 どの道建築に関しては素人が手伝えることは無さそうだしな。

 いくら俺の創造魔法でも建物1つ建てるのは今はできないし俺の大きな仕事もここまでか。


「あぁ、また手を貸してほしい時は連絡する」

「うん、了解。それじゃあとりあえず今日は帰るよ」

「あぁ、カレンにも開拓が終わったら見に来るよう伝えておいてくれ」

「わかった」


 父さんにそう返事を返し俺は転移門ゲートを開き王都の屋敷へと帰宅する。その頃には既に空の色は青から赤へと変わり始めていた。



 △▼△▼△▼△▼


 あれからさらに3週間が経ち、昨日の夜に父さんから連絡があった。どうやら今日のお昼辺りには予定していた全ての建造物を建ておわるみたいだ。

 と言うことで俺とアレク、それから初日に壁作りを手伝ってくれたダリス達3人と出来上がった街を見てみたいと言うアリシアとサリーの系7人で放課後にヴォレアスの街へ行くことになった。


 そうして迎えた放課後、いつも通り街の屋敷へ転移門ゲートを繋げて移動してみるとそこには変わり果てた街並みが広がっていて……なんて事になることは無く、さすがに大きさが変わっただけで屋敷の周囲の雰囲気や景色が変わっている事は無かった。


「まぁさすがにここから見ても変化は分からないか。唯一ここからでもはっきりと変わったのが分かるのは……」

「街の周りの壁ですね」


 俺が言い終えるよりも前にそう答えたのは俺の隣で周囲を見回していたアリシアだった。


「そうだね。って、アリシアは開拓する前のこの街に来たことあったの?」

「はい、ここも他の街に比べて王都から近い方なので何度か挨拶に来たことがあったんです。と言ってもその時はお父様やお姉様に着いてきただけなんですけどね」


 そう言ってアリシアは「ふふっ」と笑う。


「そうだったのか、それなら壁が変わったのがすぐに分かるのも納得だな。どう、かなり変わってるでしょ?」

「はい、見ただけで前の壁よりも頑丈そうなのが分かりますし数年前の記憶ですがそれでも高さや質も前の物より良くなってる気がします」


 なんか、アリシアにそう言ってもらえると壁の作りを考えた人間としてはめちゃくちゃ嬉しいな!

 っと、喜ぶのは後にしてまずは父さんの所に行かないとな。その後は少し開拓された街を見てみるか。


「これも協力してくれた人達のおかげだよ。壁はまた後で見るとしてとりあえず新しく開拓した所を見に行こうか。少し待ってて」


 俺は少しの間皆に屋敷の庭で待ってもらい父さんに見て回ることを伝えるため書斎へと急いだ。



 △▼△▼△▼△▼


 数分後、書斎から戻った俺は父さんに渡された広がった場所の簡単な地図を持ちその場所へと皆を案内する。


「基本的に増えた敷地に建てたのは住居が多いかな。こうして増やした住居を今まで住む場所のなかった人達に使ってもらうんだ。それでもかなり余るとは思うけど後々増えるかもしれないしその辺は大丈夫だと思う。次に多いのが畑かな、正直新しく広げた敷地の半分は住居と畑に使われてる」


 もちろんただ見て回るだけじゃ何も楽しく無いし少しでも観光気分を味わってもらおうと慣れない解説も忘れない。

 そうして住居や畑の3分の1程度の案内を終えたら次は少し離れた場所にある施設が建ち並ぶ場所まで移動する。これはさすがに距離があるため徒歩ではなく俺の空間魔法を使った。


「次はここ。さっきは広げた敷地の半分が住居と畑って言ったけど残りの半分はこの辺みたいな仕事場や共有施設だ。あの施設は前にアリシアから提案してもらった子供たちを預ける育児施設だ」

「あ、本当だ。子供達も楽しそうに遊んでます!」

「割と人気でまだできたばかりなのにこういう施設には入りたいって子も多いみたいだよ」


 今までは初等部からしか教育場所は無かったけどそれよりも小さい子達にも勉強や遊び人付き合いを教えられるこの場所はこれからどんどん活用されていくだろう。


「ん? ちょっといいかレオ」

「どうしたアレク?」

「前に話した時は街の開拓途中に仕事で子供の面倒を見れない家庭もあるからと言った理由で施設を作るって話だったから他の住居や畑よりも早く作るとは思っていたがそれにしても預けられている子供の数ができたばかりにしては多くないか?」


 あぁ、なるほど。そこに疑問を持ったのか。


「簡単な理由だよ完成する前から予め子供を預けたい家やここで働ける人を募集してたんだそしたら予想以上に好評で完成する頃にはこれだけの使用者が集まったって訳。まぁ俺も募集の事も好評なことも知ってはいたけど直にこうして見るのは初めてだけどね」

「なるほどな、事前に募集をしていたからか。どうりでできたばかりでこれだけ子供がいるわけだ」

「とりあえず新しく広げた敷地に建てたものはこれぐらいかな。この先には服飾店とか飲食店、宿屋を。少し離れたところには鍛冶屋だったり元々あった小さなギルドを改装して移動する予定だよ」


 これは冒険者の人達の意見だ。確かに前までのこの街冒険者ギルドはお世辞にも大きいとは言えずそれが原因か人が少ないため入ってくる以来も少なかったからな。これからはここを拠点にしてくれる冒険者も増えてくるはずだ。


「よし、それじゃあ一通り案内したしそろそろいい時間だから今日のところは解散にしよう」


 俺の言葉にその場にいた6人は皆頷き転移門ゲートで王都へと帰っていった。


 長い気もするし短かった気もするけど、とりあえずこれで街の問題は一段落だな。今日は少し急ぎめだったし次の休みにでもアリシアを誘ってもう少しゆっくり街を見て回るのもいいかもしれないな。


 そんな事を計画しつつ俺も一旦街の屋敷へと戻り父さんに顔を見せてから王都に戻ることを伝えて王都の屋敷へと帰ることにした。

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