第3章 新領地開拓編 四十八話 魔装
「お前ら、朝から人の机の前で何してるんだ……」
「レオ君朝は挨拶からですよ。皆さんおはようございます」
屋敷から帰った翌日――
俺がいつも通りアリシアと2人で学院に登校するとアレク達3人が俺の机の前で話している光景が目に入ってきた。
「ん? やっと来たか」
「アリシアおはよう〜」
レオ達が来たことに気づきアレクとサリーが返事を返す。
「おう、それで、サリーは席が近いからいいとしてお前らはどうした」
「なに、ダリスからお前が新しい実家に帰ったと聞いたからな。また何か思し……面倒臭いことに巻き込まれてはいないかと思っただけだ」
「なんで俺の事になるとお前のセンサーは反応するんだ!」
それに、今こいつ面白い事って言おうとしただろ! 友達が悩んでるって言うのになんてやつだ……
「さあな、お前がそう言う運命だから分かりやすいのかもしれんぞ?」
「そんな運命なんて、嫌だ……」
王城の時と言い今回と言い何故面倒くさそうな事ばかり頼まれるんだ……まぁどっちも経験しといて悪くは無さそうだから良いんだけどね!
「……まぁ、大体の主人公がそんな感じだったからな……」
「ん、なんか言ったか?」
「いや、こっちの話だ」
たまにアレクが小声でボソボソ言ってるけどなんて言ってるんだ?
「そんな事はいいんだ。それで、今回は何があったんだ?」
「えっと、アリシアには来る途中で話したんだけど家の新しい領地、ヴォルアスの街の開拓をしてもらいたいって頼まれたんだ」
正確には俺の仕事は街を広げた後の増えた敷地に何を作るか考えるだけで開拓自体は人を雇うみたいだけど。多分そっちも手伝うだろう。
そうして俺は父さんから頼まれた事を3人に手短に話した。
「なるほどな、大方将来貴族の当主として行う仕事を少しでも体験しておこうと言ったところか」
「うん、そんな感じみたいだよ。俺は兄さんが当主になると思ってそういうのは全く勉強してこなかったから」
「それじゃあ街の開拓が始まったら放課後は忙しくなりそうだな」
そう言ったのはよく空気になりがちなダリスだ。今日も俺が来てから一言も喋ってなかったな。
「あぁ、だからしばらくは冒険者活動も出来なくなるし今の内にやっとこうと思ってるんだ」
「それなら俺も付き合うぜ」
「俺も行こう。試したい事もあるからな」
「試したいこと? 新しい技か何かか?」
「まぁそんな所だ。詳しい事はこの後の授業で分かるさ」
この後の授業でって事はもしかして……
その時、授業開始5分前の予鈴が鳴った。アレクとダリスは席に戻り俺とアリシアも自分の席に座り授業の用意を始める。
◇◆◇◆◇◆
「よーし、今日も全員揃ってるな。それじゃあ授業始めるぞぉ」
授業開始の時間になるとメルト先生が入ってきて気だるげな声を出しながら教壇に立った。
「前回の授業でも言った通り今回は魔道具の授業だ。魔道具と言っても私生活で使われる物や仕事で使われる物、戦闘の際に使う物といくつかの種類に分けられる。今回はその中でも戦闘の際に使う魔道具俗に言う『魔装』について話していく」
そう言うとメルト先生は黒板に3つの絵を適当に描き始めた。
「この上の奴が私生活で使われる物、右下の奴は仕事で使われる物そして左下のこれが今回教える魔装だ。その形は様々で剣や槍、中には盾や鎌なんてのもある。まぁ種類が多い理由はその殆どが特注品だからだな」
魔装については少し知ってるな。俺の持つ白夜と黒影も父さんの知り合いの腕の良い鍛冶師の人に頼んで作ってもらった特注品だし。
「軍では主に剣、槍、盾の3つが支給されている。それ以外の物は鍛冶師に頼んで作ってもらった物ってわけだ。他の2つの用途で使われる魔道具と違い戦闘の際に使われる魔装にはそれぞれ名称がある。例えば剣ならば『魔剣』槍ならば『魔槍』珍しいところだと弓で『魔弓』なんてのも聞いた事があるな」
俺は先生が説明することや黒板に書かれる事をしっかりとノートに書き留めていく。
「魔装には鍛冶師によって作られた人工的な物と強力なモンスターや環境の影響で自然的に生まれた物がある。ちなみに自然的に生まれた魔装で例を上げると対抗戦組は馴染みがあると思うが聖剣なんかが有名だな。詳しい事は知らないがあれにはかなりの魔力が込められていたはずだ」
確かに、シンの聖剣はとてつもない魔力を秘めていた。なるほどあれが魔剣か。
「人工的な物で言うとそうだな……レオちょっと前に来てくれ」
俺は突然名前を呼ばれ少し驚くも先生の考えていることを察して席を立つ。
「こいつの使う2本の剣は鍛冶師に作られた魔剣だ。レオ出してくれ」
「はい」
先生の指示に従い俺は異空間収納から白夜を取り出す。
「自然的に生まれた魔装に比べて人工的に作られた魔装には込められる魔力に限界があるが使う素材によってその限界値は大きく変動する。レオのこの魔剣はかなりの魔力量を込めることができるな」
先生が皆に説明した後「閉まっていいぞ」と言う先生の言葉で異空間収納に白夜を仕舞い席に戻った。
「レオ君の魔剣って先生が言うほど凄い物だったんだ。なんの素材を使ってるの?」
「あ、それ、私も知りたいです!」
俺が席に着くと隣の席のアリシアとその隣のサリーからそう聞かれる。
「実は俺もよく知らないんだよね。父さんと家の執事のゼルさんって人が昔倒した魔物の素材をくれてそれで作ったんだ。確か……白刃龍テルスパーダの牙と黒裂龍ゼロニスの鱗だっけ?」
「えぇ!? それって龍の素材だよね、それって凄い強い魔物なんじゃ……」
「私も本で龍は軍の中隊1つでも勝てるか分からないって書かれているのを見た事があります!」
「そうだね、でも父さん達曰く多くの龍がそう言われているってだけで数少ない歳の若い龍はそこまで強くないらしいよ」
まぁそれでも父さんとゼルさんの2人に軍の小隊1つでやっと倒せたって聞いたけど……
「それならあの強さも頷けますね」
「レオ君の規格外ぶりはお父さん譲りだったか〜」
「規格外は酷くない!?」
「おい、そこの3人! 授業中はなるべく静かにしろ!」
俺達が話していると先生に怒られてしまった。どうやら話している内に熱が入って声が大きくなっていたみたいだ。それより、なるべくってそれでいいのか? 自分で騒いでおきながらこの事がバレて先生が学院側から何か言われないか心配だ。
「静かになったし授業を再開するぞ。魔装の作られ方についてはこれぐらいだが。次はその基本能力について説明していく。魔装はその特徴から魔法を付与しやすく魔法に対する防御力が高い」
ここまでは中等部でも習う内容だな。
「中等部ではこの事に加え基本の能力値が素材や鍛冶師の腕によって変わると教わったと思うがこれは人工的な魔装の場合だ。じゃあ自然的に生まれる魔装にはどんな特徴があるか、分かるやつは手を上げろ」
先生がそう言うとクラスの3分の2ぐらいの生徒から手が上がった。もちろん対抗戦に出た俺達5人は手を挙げている。……と思ったらダリスは少しビクビクしてるな。あいつ……前に俺と勉強しただろ……
「まぁ殆どの奴が知ってるか。それじゃあ……アレク、答えてみろ」
「はい」
指名されたアレクは透き通る声で返事をし立ち上がる。
「自然的に生まれた魔装には特殊な
「完璧だ。さすが、よく予習してるな。大体はアレクの言った通りであっている。何か質問ある奴はいるか?」
先生がそう言うと1人の生徒が手を挙げた。
「先生! 1つ質問いいか?」
手を挙げたのはバーンだ。
「おう、バーンかいいぞ」
「呪いの魔剣の代償って具体的にはどんなのがあるんだ?」
「いい質問だな。有名な所で言えばルステリア王国の2代目国王の代に起こった反乱の際にその反逆者のリーダーが使っていた『掠奪の魔剣ゼラシオン』だな。あの魔剣の能力は切った対象の身体能力や精神力を奪い自分の身体能力をあげる代わりに使う度に寿命を削っていくと言う魔剣だ。呪いの魔剣はこう言ったデメリットの多い魔剣の事だな」
なるほど、とてつもなく強力な分その代償は使用者に不利になる事っていう感じか。確かに呪いの魔剣と言われるだけはあるな
その後も授業は順調に進み魔装についてや対魔装戦の対応等も学びその日の1限目は終了した。
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