第3章 新領地開拓編 四十九話 常識破り


 ――放課後――


 俺達は今ギルドで受けた依頼を達成するため近くの森へとやって来ていた。


「レオ! そっち行ったぞ! 」

「わかった!」


 俺は右手に取り出した白夜を振りかざし迫る1体の魔物を切り倒す。


「ふぅ、これでやっと半分か」

「あぁ、この調子ならこっちは問題無く終わりそうだな。後はアレク達の方だが……あっちも多分大丈夫だろ」


 今回受けた依頼はスモール・ベアと言う中型の熊の魔物3体と大量発生したワイルド・ボアと言う小型の魔物20体の討伐。授業の後なんだかんだアリシアとサリーも一緒に来てくれる事になり俺達5人はスモール・ベア3体とワイルド・ボア20体を分担して討伐する事になった。ワイルド・ボアの担当は俺とダリスの2人だ。


「ワイルド・ボアはサーベルと違って群れで行動してくれるから狩りやすいな。その分数は多いけど……」

「まぁいいじゃねぇか。そのおかげでCランクの割に簡単に倒せるんだしよ」

「まぁ確かに、この難易度でCランク全体で見たら少ないとは言えDよりも高い報酬が貰えるのは上手いよな……ん? アレクからだ」


 俺達がそう話しているとアレクから通信が入る。


「どうしたアレク、 そっちも終わったか?」

『あぁ、ちょうど今終わったところだ。悪いが転移門ゲートを開いてもらえるか?』

「あぁ、わかった」


 通信を切ると俺は魔力探知でアレク達3人の魔力反応を探しそう遠くまでは行っていない事を確認すると俺と3人の前に転移門ゲートを開いて繋げた。

 その後転移門ゲートの中から3人が出てくるのを待ち全員出てきた事を確認した後転移門ゲートを閉じる。


「3人とも怪我は無いみたいだね」

「はい、1体ずつはそこまで強い魔物でも無かったので。と言っても倒してくれたのは2人なんですけどね」


 そう言って答えたのはアリシアだ。俺としてはアリシアに怪我が無くて何よりだけどね!


「そう言えばアレク、試したいって言ってた事は上手くいったのか?」


 俺は今日の1限目の前にアレクが言っていた事を思い出し問いかける。


「あぁ。まだ試作段階だがこれなら何の問題も無く実践でも使えるだろう」

「魔装って言うのは察しがつくが一体何の武器なんだ? 見た感じ剣とか槍見たいな大きいものでは無いよな……」


 ダリスも俺と同じ疑問を持ったようだ。今日のアレクの発言から魔装だと言うのは分かるが今アレクは何の武器も持っていない状態。

 パッと見では何の武器かは全く分からないぞ?


「それは……これだ」


 そう言ってアレクが制服のポケットから取り出したのは縦長に切り取られた数枚のカードだ。


「「それが……魔装?」」


 出された物が想像すらしていなかった物で俺とダリスはつい同じ反応を同時にしてしまう。


「あぁ、この魔装を今日は試してみたくてな」

「えっと……それは、どう使うんだ?」

「剣とか槍と違って想像ができないよな」

「うん、まったく……」

「まぁそれが正しい反応だろうな。使い方としては他の魔装とそこまで違いは無いさ。ただ、他唯一他の魔装と違う点を上げるならば、この魔装は本当にただでいい」

「それって……つまりどう言うことだ?」

「俺にも違いがよくわかんねぇな」


 ダリスに違いが分からないのはまぁ予想通りだったけど俺も説明を聞いた限りじゃいまいち違いが分からないから人の事は言えないな。


「まぁ、実際に見てもらった方が口で説明するより早いか」


 そう言うとアレクは手に持った数枚のカードに魔力を送り始める。どうやら実際に見せてくれるようだ。

 すると、カードに魔力が送られた直後、魔装が反応し前方に向けた面からそれぞれ属性の異なる魔法が放たれる。

 右から火、水、氷、風、雷の5属性だ。


 そこである事に気づいた俺はすぐさまアレクに問い詰める。


「お、おい、アレク! なんだあれ、なんで同系統の属性を当時に使えるんだ!?」


 本来、同系統である水と氷魔法や風と雷魔法は同時に使うことはできない。

 速度を調節し発動するタイミングをずらせば同時に標的に当てることは可能だが今アレクが見せた物はそれすらもしていないそれぞれの攻撃が綺麗に同時に放たれていた。


「何、至って簡単な仕組みだ。レオ、お前は魔剣を介して光魔法を使う際はどうしている?」

「そりゃ普通に剣に光属性の魔力を送ってそれを貯めて詠唱をしてるけど……」

「俺も本質的にはそれと変わらない」

「じゃあなんで……」

「それはこっちの面を見れば分かるんじゃないか?」


 そうしてアレクはカードの魔法が放たれた面を俺達に見せる。そこに描かれていたのは色の違う魔法陣だった


「この魔法陣は俺の魔力を使って刻まれている。色が違うのは魔法陣を刻む際に込めた属性の違いだな」


 なるほど、そう言うことか。言ってしまえばこれは持ち運びのできる設置型の魔法だ。

 基本的に攻撃魔法や補助魔法は魔法陣を介して発動する事は無いがそれは出来ないと言う訳では無い。


 数百年前までは魔法陣を介しての魔法が基本だった様だが技術の進歩が進むにつれその技術は廃れていった。

 魔法陣を介すよりも詠唱をした方が遥かに発動までの速度もその威力も上がると言うことが分かり罠以外では殆ど使われることは無くなっているたのだがアレクはそれを上手く活用したと言うわけだ。

 罠で使う際の魔法陣の発動方法は主に2つ。魔法陣の上に何かが触れた瞬間に発動するか魔法陣を設置した本人が直接魔力を流し込むかだ。アレクの魔装は恐らく後者だろう。


「ほんとよくこんな事が思いつくよな……」

「私とアリシアも見た時はびっくりしたよ。アレク君って魔法の事になると常識外れな所あるよね」

「常識に囚われていては先には進めないからな」

「お前は少し進みすぎなんだよ!」


 俺がそう指摘すると当のアレク本人は涼しい顔をして笑っていた。


 その光景を見てサリーとダリスは同じ事を思っていた。レオと同じくこいつも好き勝手にさせてはいけない、自分達がしっかりと見張っていなければと……


「そんな事は置いておいてそろそろ帰ろう。日も暮れてきたしな」

「なんか上手くはぐらかされた気がする……まぁでも確かにそろそろいい時間だし帰ろうか」


 俺は依頼達成の証としてそれぞれの魔物の部位を採取し異空間収納にしまって再度転移門ゲートを開いた。俺達は開かれた転移門ゲートを潜り王都まで戻る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る