第3章 新領地開拓編 四十六話 確認作業
――翌日――
俺は屋敷の裏庭でヴォルアスの街開拓に向けて確認作業をしていた。
「とりあえず今の壁と同等かそれ以上の物は作れないとダメだよな」
そうして俺は目を閉じ頭の中にヴォルアスの街を囲う石壁をイメージした。
「『
俺が手を前に出し詠唱をすると俺より少し高い石の壁が創り出される。
「これでだいたい2mぐらいか。今の外壁の高さはこれの倍ぐらいだからもう少し魔力を込めてみるか」
俺は数分の時間を置き再度詠唱をする。
「『
俺は異空間収納から白夜を取り出し全力で石壁を切りつける。すると……
「うーん、この強度じゃあダメだな」
俺の創り出した石壁は白夜の刀身が当たったところを中心にヒビが入っていた。この強度では街を守る壁には心許ない。
今までならここからさらに強度を上げるにはイメージ力をもっとしっかりとすれば何とかなったけど今回は素材がただの石だしこれ以上のイメージの仕様が無いよな。
消費魔力をもっと増やせばどうにかなるかな?
しばらく頭を悩ませていると俺はある事を思いつく。思いつくと言うよりは思い出すと言った方が正しいだろうか。
「そうだ、『
俺は直ぐに試そうとするが……
「創造魔法ってどうやって魔力を圧縮すればいいんだ? 今までは創造する物をイメージして詠唱すれば勝手に創られてたけど……」
早速壁にぶち当たってしまう。さて、どうしたものか……
そうして地面に座り込み考えていると前方から誰かが歩いてくる。
「お疲れ様です。調子はいかがですか?」
進捗を聞いてきたのはゼルさんだ。
「ゼルさん、石壁自体は創れたけど強度がなかなか思い通りにいかなくて、そこをどうするか今考えていたところです」
「なるほど、このヒビはレオ様が?」
「はい、強度を確かめようとして剣で切ったらこんな感じに」
「確かに、この強度ですと壁には使えませんね」
そう言うとゼルさんは右手を顎に当て考え始める。数分後、何かいい案が思いついたのかゼルさんは顔を上げる。
「レオ様はこの街の外壁がどう作られているか知っていますか?」
「確か、土魔法で作った四角い石を積んでできているんですよね?」
「その通り、ですがそれでは半分正解で半分不正解です。正確には積まれた石の中に一定間隔で鉄の棒が立てられています。今の外壁の強度はその棒も大きく影響しているでしょう」
なるほど、それなら1回試してみるか。
「『
俺はさっきまでの石壁のイメージを少し変え中に一定間隔で穴を開けた石壁を創造し、同時にその穴の中に鉄の棒を創り出した。
「ほう、創造魔法とはこの様なこともできるのですか」
「はい、まぁ同時に創り出せるのは3つまでと連続で発動はできないって言う制限はありますけど」
そう言って俺は1度目に創った石壁に立てかけておいた白夜を手に取り今創った石壁に1歩近づく。強度確認だ。
「ふっ!」
短く息を吐きさっきと同じ容量で石壁を切りつける。するとその結果はさっきとは明らかに違う結果となった。
「ふむ、これならば外壁として十分に役割を果たしてくれるでしょう。1つ前の石壁よりも遥かに強度が上がっている様ですが鉄の棒以外に何か工夫されましたか?」
「はい、少しだけですけど」
「聞かせてもらってもよろしいですかな?」
ゼルさんの言葉に頷き俺はさっきとは変えた点を説明する。
「さっきまでは普通の石壁をイメージしてたんですけど今のは消費魔力を増やしてより大きな石壁をその魔力量のまま小さくするイメージで創造したんです」
「なるほど、石壁自体の密度を増やしたと。素晴らしい発想ですな」
そう言ってゼルさんは笑い褒めてくれた。少し照れくさいけどやっぱりこの人に褒められるのは嬉しいな。
「壁はいつ頃から作り始めるのですか?」
「父さんが言うにはなるべく多くの人を集めたいみたいで少し時間がかかるみたいです。それでも遅くとも2週間後には作り始めるとは言っていました」
「なるほど、まだ時間があるようなら建築関係の本を読んで見るのもいいかもしれませんな」
建築関係の本か、確かにこの魔法に何かと役に立つことが書いてありそうだ。
「幸い以前の屋敷の図書館よりもこちらの書庫の方が多くの本が揃っています。建築関係以外にも役に立つ物があるでしょう」
「わかりました。帰る前に少し寄ってみます」
俺がそう返すとゼルさんは頷き屋敷の中に戻って行った。
「よし、とりあえず書庫に行ってみるか。夕食までには何かしら役立ちそうな本を見つけられるかな?」
そうして俺は創造した石壁を壊し屋敷の中へ入る。
もちろん石壁を壊すのには破壊魔法を使った、少しでも新しい魔法に慣れとかなきゃね。
◇◆◇◆◇◆
「うーん、失敗した。ゼルさんに書庫の場所を聞いておけば良かったな」
裏庭から屋敷に戻った俺が今何をしているかと言うと屋敷の中を彷徨っていた。簡単に言うと迷子だ。
言い訳をさせてもらうのであればこの屋敷はとても広い。来てまだ1日も経っていないのに覚えるのは難しいだろう。
「だとしても、この歳で迷子になるとは思わなかったな」
その後も数分間同じような道を歩いていると曲がり角でマナとカレンに遭遇した。
「レオお兄様! おはようございます!」
「うん、おはよう」
「あれ、レオ様がどうしてここに? もう確認作業は終わったんですか?」
「うん、とりあえずは何とかなりそうだよ。あ、そうだマナ、書庫の場所知ってる?」
俺は自分よりも長くこの屋敷にいるマナならば書庫の場所を知っているだろうと思いそう聞いた。
「書庫ならこっちです。ちょうど私達も書庫に行こうと思っていたので一緒に行きましょう!」
そう言ってマナが指さした方向はたった今俺が歩いてきた方向だった。どうやらいつの間にか通り過ぎていたらしい。
「そうだね。そうして貰えると助かるよ」
俺は2人の後に続き書庫まで向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます