第2章 四大魔法学院対抗戦 後編 三十七話 決勝戦開始
昼食はヴォーレオス大森林の隣にある演習場の中の大広間で各校集まって取るようだ。
各校の生徒同士の親睦を深めるためにテーブルの上に置かれた沢山の食べ物の中から好きな物を取って食べる立食パーティーの様な形式だ。
アレクは少し離れた所でブランハーツの人達と話しており、ダリスもセイクリッドのガタイのいい人と何やら肉体美について語っている。
残された俺とアリシア、サリーの3人はと言うと、シンとサヤさんを交えて5人で話していた。
「レオ、どっちが多く食べれるか勝負しないか?」
しばらく話していると、シンが俺に大食い勝負を挑 んできた。
「お、いいぜ。それじゃあ負けた方がダリス式筋力トレーニング1週間な!」
「? えっと……それが何か分からないけど、いいだろう。楽しそうだしね」
(ふっ、この勝負に勝ってシンの奴にもダリス式筋力トレーニングの恐ろしさを教えてやる)
「レオ君、顔に出てるよ。それと次は決勝戦なんだから、あんまり食べすぎて動けなくならないでね?」
サリーに釘を刺されてしまった。
「シンも、少しは大人しくして」
そう言って、アリシアと傍で話していたサヤさんも俺たちの方へやってくる。
「さ、サヤ……大丈夫だよ、無茶はしないから。それにこん何凄い料理食べておかなきゃ損だろ?」
「……ねぇ、シン。シンは……私の言うこと、聞けない?」
「うっ、いや、そういう訳じゃ……はぁ、わかったよ。程々にしておく」
シンはどうにかサヤさんを説得しようとするがサヤさんの至近距離からの上目遣いで呆気なく折れている。
「お前も大変なんだな」
「ははっ、まぁ仕方ないさ。これまでにも色々あったからね」
シンの含みのある言い方が少し気になるが、本人が話そうとしないなら聞くほどのことでもないだろう。
「そう言えば3人はさっきまで何の話をしてたんだ?」
俺はアリシア達にさっきまで何を話していたのかを聞いた。
「あぁ、それがね。アリシアがサヤちゃんとシンくんの事について凄く気になってたみたいだから、2人の出会いとかについて聞いてたの」
俺の質問に答えたのはサリーだった。
「へぇ、2人の馴れ初めか。確かに気になるな」
そう言って俺はシンの方に目をやる。
「いやぁ、何か特別な事があるって訳じゃないよ? ただ親同士が友達で家も近かったし小さい頃からよく一緒に遊んでたってだけさ」
「つまり、幼馴染ってことか? 道理で仲がいいわけだ」
「うん、シンは昔からすぐに暴走するから大変だった」
「そ、そんなにかな? それよりレオとアリシアさんも他の人より仲がいいみたいだけど、2人はどうなんだ?」
シンが自分の話題から話を逸らすように俺とアリシアについて聞いてきた。
(こいつ、余計なこと言いやがって!)
「アリシアとレオ君は……ねぇ〜?」
「え、えっと……私とレオ君も特に何かある訳じゃないですよ? お二人みたいに幼馴染でもないですし、初めてあったのは5歳の頃ですけどまともにお話したのは学院に入ってからですから」
「それじゃあ、学院に入ってからこれまでの短い間でそこまで仲良くなったのかい? だとすると……運命かもしれないね!」
シンがとんでもない爆弾を投下していった。
「う、うぇぇ!?」
「う、運命って、何言ってんだよ!?」
「? 思った事を言っただけだけど……レオはそう思わないのかい?」
「い、いや……そう聞かれるとなんとも言えないけど……」
「シン、少し静かにしてて」
そう言ってサヤさんがシンの口を塞ぐ。
(こいつ……覚えとけよ!)
その後も俺達はたわいもない話をしていた。すると遠くから俺の名前が呼ばれた気がした。
俺が名前を呼ばれた方に振り向くと、そこにはサクラとその後ろに第2試合で闇魔法を使っていた白髪の青年がこちらへ向かって歩いていた。
「どうしたんだ、サクラ……とそっちの子は?」
「初めまして、シロウ・クロサキです」
シロウと名乗った彼は会釈をする。
「シロウか、よろしくな。それで、俺に何か用か?」
さっき呼ばれた声がサクラの物だと気づき俺はサクラにそう尋ねる。
「あぁ、次はレオ君のとことやろ? その前に挨拶しとこう思ってな。シロウも用があったみたいやし」
「なるほどな、俺に用ってなんだ?」
俺はシロウに目を向ける。
「いえ、さほど大事なことでもないのですが、同じ闇魔法使いとして少しお話を聞きたくて」
「そういう事ならいつでも話し相手になるぞ。俺も自分以外の闇魔法の使い手と話した事は無かったからな」
「それなら僕もいいかな? レオと光魔法について話がしたかったんだ」
そう言ってシンが俺とシロウの会話に入り込んでくる。
「レオの戦闘スタイルは俺達とは真逆だよね? 俺とシロウ君はどっちかと言えば前衛。けどレオは後衛だろ?」
「確かに、俺の場合光と闇魔法を使う時は基本後衛でサポートする事が多いけど、俺としては攻撃に向かないこの2つの属性を前衛の2人がどうやって使ってるのか気になるな」
「俺はというか、ヤマト王国では武器を使うのが一般的なので、刀に纏わせたり自分で接近して刀を介して魔法を使ったりですね。シンさんの戦い方もこれに近いと思います」
「そうだね、僕の場合は聖剣と光属性の親和性が高かったから普通に使うより聖剣に魔力を溜めて使う方が強いと思ったんだ」
なるほどな、確かに2人とも武器を使ってるイメージだ。
「武器なら確か、レオさんも2本の剣を使っていましたよね?」
「確かに、それにレオはさっき『光と闇魔法を使う時は』って言ってたけど他にも何か使える属性があるのかい? 1戦目の僕との戦闘と言い2戦目の試合を終わらせた一撃と言いあの威力は普通じゃない」
うーん、やっぱり気づかれるよな。
「それについては秘密だ。どうしても知りたいなら決勝が終わった後に話すよ、まだ次の戦闘が残ってるしな」
そうして俺はシロウの方を見る。
「なるほど、そういう事でしたら楽しみにしています」
見られたシロウもどこか楽しそうに笑っている。
その時、4人で話していたアリシア達の方から声が聞こえてきた。
「シロウ、そろそろ行くで。あんまり遅いとユキノちゃんがうるさいからなぁ〜」
そう言ってサクラはシロウを引っ張り連れて行ってしまった。まるでペットみたいな扱いだな……
「それじゃあ俺達もそろそろ戻るよ」
サクラ達に続きシンとサヤさんも一緒にチームメイトが集まっている方に戻って行った。
その後アレクとダリスも俺たちの所へ戻り、昼食という体の立食パーティーが1時間ほど続き幕を閉じた。
この後はそれぞれの学院の控え室へ戻り、1時間の作戦会議の後30分の休憩を取って決勝戦と3位決定戦が行われる。
◇◆◇◆◇◆
現在、俺達はアストレア学院の控え室で決勝戦の作戦会議をしている。と言っても大まかな役割は事前に決めていたため、細かい連絡等と対策だけだ。
「とりあえず基本的な作戦は今まで通りでいいだろう。あまりきっちり決めすぎていざと言う時に動けないのでは元も子もないからな」
「だな、多分相手も役割は2戦目と変わらないだろうから攻めが4人守りが1人だと思う」
「その場合レオでなければキョウヤと言うやつは倒せないからな」
相手の首席についてはさっきの昼食の時に少しだけサヤさんから聞いていた。
「それじゃあ確認だ。守りは俺が1人で、ダリスとサリーには魔力決勝付近で見張りを、相手が4人だった場合は俺のサポートを頼む」
「おう、任せとけ!」
「使い魔の子達が居れば見張りもしやすいしね」
ダリスとサリーがそう答える。
「レオはさっきも言った通り攻めだ、唯一回復魔法の使えるアリシア様はレオのサポートをしてくれ」
「了解」
「レオ君のことは任せてください!」
アリシアが何か恥ずかしいことを言ってる気がするけど聞かなかったことにしよう。
そうして作戦会議も滞りなか終わり決勝戦開始まで残り30分となった。
◇◆◇◆◇◆
『只今より四大魔法学院対抗戦決勝戦を始めます! 対戦校はアストレア魔法学院対ソルヴァレス学院! それでは……試合開始ぃ!』
もはや恒例となったハイテンションな放送の合図でついに決勝戦が始まった。
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