第2章 四大魔法学院対抗戦 後編 三十六話 第2試合決着


 「『奥義 神降ろし・須佐之男』!」


 カエデが詠唱すると首周りに薄く透明な緑のマフラーが現れカエデの身体を包む。


「ほな、やろか」


 カエデは狐の様に口角を上げると2対の扇を構える。



 ◇◆◇◆◇◆


「シロウ、カエデさんが奥義を使ったみたいです。少し距離を置きましょう」


「わかった。それじゃあ選手交代だ、攻めは頼むよ」


「はい。サポートはお願いします」


 ベルメールとザパンの2人を相手していたシロウは後方に下がりその役目をユキノと代わった。


「行きますよ『氷刃乱舞・激』!」


 ユキノの作り出した数多の氷の刃が2人を襲う。


「ザパン、 僕の後ろに!『氷盾アイス・シールド』」


 ザパンが自分の背後に隠れたのを確認したベルメールはすぐに氷の盾を作りユキノの攻撃を防いだ。


「ふぅ、何とか助かった」


「よりによって氷属性ですか、僕もザパンも得意とするのは水と氷属性、ザパンは他に風属性が使えますがあまり得意じゃないですし相性最悪ですね……」


(それに、後ろには厄介な闇魔法の使い手もいる。かなり厳しい状況になりましたね……)


「とりあえず、シン達からの報告があるまで何とか耐えま……」


 ベルメールがそう言いかけた時、少し距離の離れた南の方向から大きな爆音が響いた。


(なっ、今の爆音は一体……)


「あれは……僕達の陣地の方角だ」


「キョウヤさんが負けるようなことは無いとは思いますが、今の音を聞いてしまうと心配ですね」


 ユキノとシロウも今の爆音が自分達の陣地のある方角から響いていると分かると少し動揺しているようだ。


「どちらにしろ、この場をどうにかしなければ陣地に戻ることも出来ません。すぐに倒しましょう」


「そうだね、賛成だ」


 ユキノとシロウは己の武器を再度構え2人に目を向ける。


「少なからず、今の轟音はシンとあちらの首席の衝突音でしょう。心配ではありますが、それだけ攻めているとも考えられます。僕達は2人を信じてこの場を守り抜きますよ」


「うん、そうだね。僕達の役目はこの陣地を守ることだすぐに魔力結晶の元まで戻らないと」


 ザパンとベルメールも敵の陣地に向かった2人を信じ自分のやるべき事を再確認する。


「どうやら、相手もさっきよりやる気みたいだね」


「えぇ、私達も本気でいきましょう」


 そうしてユキノとシロウは己の武器に魔力を集め始める。


「『氷刃乱舞・神』!」


 ユキノの持つ2対の短刀に魔力が集まり、周囲には数十個もの小さな氷の刃が現れる。


「『雲雀流剣術・奥義 星夜の黎明』!」


 シロウの愛刀に全魔力が集まる。その技の名に相応しい正真正銘最後の一撃のようだ。


 2人は同時に走り出す。ユキノはベルメールへ、シロウはザパンへ

 ベルメール達も魔法で進路を妨害するが、2人は飛来する魔法を切り落とし難なく進む。


 そして遂に、ユキノとシロウの刃が2人を襲う。


「グァァァッ!」


 ユキノの止まることの無い連撃を食らいベルメールが叫ぶ。


「かはっ…!」


 迫り来る攻撃を水魔法で作り出した剣で受け止めたザパンだったがシロウの闇魔法によりその剣も消滅し、そのまま強烈な一撃を食らってしまう。


 攻撃を食らった2人は同時に地面へ倒れ、気を失った。それと同時にユキノとシロウの後方から大きな破砕音が聞こえてくる。どうやらカエデが1人で魔力結晶を破壊したようだ。


『決まったぁー! 勝者はソルヴァレス学院、セイクリッド学院全員を戦闘不能にし完勝だぁ!』


「あら、これ破壊したからじゃないんやね?」


 カエデは気が抜けたように言う。その身体は既に元に戻っており、本人も息が荒く立っているのがやっとのようだ。


「全員、戦闘不能……ってことはキョウヤさんの方も勝ったみたいですね」


「はい、ひとまず安心しました」


 そうしてユキノとシロウはカエデ達の元へ戻り、4人で自陣地へ向かった。



◇◆◇◆◇◆



 ――セイクリッド学院陣地。2試合目が終了し少し経った頃シンとサヤの2人は自陣地へ戻っていた。


「みんな、すまない。魔力結晶を破壊する前にやられてしまった」


「気にするな、俺達も相手の4人に全員やられちまったしな」


「その後には魔力結晶も破壊されたみたいですしね、完敗ですよ」


 ガゼルとベルメールがそう答える。


「シン、あまり気にしないで。それに、負けたのは私のせい。私が一緒に戦えるほど強ければ結果は変わったかもしれない」


「それに、僕達も魔力結晶を守りきれなかった。任されたことが出来なかったのは同じなんですから」


「そうか……わかった。この話はここで終わりだ、下を向くより上を目指そう!」


 シンは吹っ切れたように笑顔で笑う。


(やっぱり、シンは笑ってる方がいい)


 サヤは心の中でそう呟いていた。


「とりあえず控え室に戻ろうぜ、魔力を使いすぎてもうクタクタだ」


 ガゼルの提案に4人も賛同し、5人で控え室に戻って行った。


 四大魔法学院対抗戦第2戦目はそうして幕を閉じる。それと同時に第3戦目のトーナメントも決まる。


 3位決定戦はセイクリッド学院対ブランハーツ魔法学院

 決勝戦はアストレア魔法学院対ソルヴァレス学院となった。


 試合は昼食休憩や作戦会議を挟み2時間後となった。

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