第2章 四大魔法学院対抗戦 後編 三十三話 第2試合開始
1戦目が終わり、俺達5人は森の隣にある演習場の中のアストレア学院控え室まで向かっていた。
俺達が森から出ると、前方からちょうど森に向かおうとするソルヴァレス学院の5人と出くわす。
「あらあら、お出ましですかぁ? お疲れ様です〜」
そう言ったのは柳色の着物を着た少女、カエデだ。
「レオくーん! 試合見てたよ〜。相変わらず凄い魔法やったなぁ」
「サクラ、ソルヴァレスの人達も見てたのか?」
「はい、どちらと決勝で当たっても1度戦闘を見ていれば作戦を立てやすいので」
レオの問にはカエデの隣にいた空色の着物を着た少女、ユキノが答える。
「ほう、今から決勝の事を考えているとは随分と余裕だな?」
「決勝の事を考えずに勝ってしまえばそれこそ対策の立てようも無いでしょう。それに、最初から勝つ気を持たずに戦う奴がどこにいるんですか?」
そうして、ユキノはアレクの挑発に冷静に返す。
「と言っても、毎回作戦を立ててもそれを壊す人がいるのですが……」
ユキノはサクラの方を見る。
「なんでユキノちゃんは今うちを見たん? まるでうちが作戦通り動いてないみたいやないの」
「実際、サクラさんは作戦通り動いた事無いですけどね」
そう言ったのは灰色の着物に濡羽色の羽織を着た少年と見間違えるほどに幼い顔立ちの小柄な青年だ。
「シロウまでそんなこと言うん? サクラちゃん悲しいわぁ、レオ君が慰めてくれてもええんよ?」
サクラはレオに言い寄るも、それをアリシアが見逃すはずも無く……
「あ、あの! レオ君も困っているのでその辺にしておいてください!」
「…… ? あんたは確か……1戦目の時にレオ君と一緒にいた子やね?」
「はい、そうですけど……」
「あんたもちっちゃくて可愛いなぁ〜、お名前なんて言うの?」
そうしてサクラはアリシアを抱きしめる。
「え、えぇ!? いきなり何するんですかぁ!」
アリシアは抵抗するもサクラとの身長差は10センチ程あるためなかなか抜け出せない。
「別にいいやろぉ〜減るもんでもないし。それよりも! お名前なんて言うん?」
サクラは全くブレずにアリシアに名前を聞く。
「え、えっと……アリシア、です」
「アリシアちゃんか〜、名前も可愛いなぁ〜」
サクラはさらに抱きつく力を強める。これではまるで抱き枕だ。
「レオ君、助けてぇー!」
俺が2人の様子を見守っているとアリシアが限界らしく助けを求められてしまった。
「サクラ、アリシアも苦しいみたいだしそろそろ話してやってくれないか?」
「あ、ごめんなぁアリシアちゃん。つい抱き心地が良くて夢中になってたわぁ〜」
「い、いえ……大丈夫です」
アリシアは抵抗するのに力を使い果たしたのか少しぐったりしている。
「お前たち、そろそろ時間だ」
俺達が話していると1番後ろで今まで沈黙を続けていた男が口を開く。
「あら、もうそんな時間? それじゃあアストレアの皆さん次会う時は決勝で」
「レオ君決勝でまた戦おな〜」
そう言い残してソルヴァレス学院の5人は嵐のように去っていった。
「なんと言うか、凄い癖の強い人達だったね。アリシア大丈夫?」
「う、うん……なんとか大丈夫」
「とりあえず俺達も控え室に行こう」
そうして俺達は再度演習場へと向かう。
『只今より、四大魔法学院対抗戦2戦目第2試合を始めます! 対戦カードはソルヴァレス学院対セイクリッド学院! それでは……試合開始ぃ!』
ここはヴォーレオス大森林の隣にある演習場の一室、アストレア学院の控え室だ。
そこで俺達5人と学院長、メルト先生の7人はたった今行われている第2試合の様子を魔力結晶から映し出される映像で見ていた。
「始まったな」
「あぁ、勝った方が俺達の相手だ。しっかり見ておかなきゃな」
今の映像の中ではソルヴァレス学院側が映っている。どうやら今から攻めと守りに別れるようだ。
「ソルヴァレスの攻めは……な、4人!?」
「守りは首席の人だけみたいだな」
「この場でそれをやると言うことはそれだけ他の4人全員があの男の実力を認めているという事だろう」
ソルヴァレスの攻めは4人、2人1組で別の方向から攻めるようだ。
「さて、お手並み拝見といくか」
ヴォーレオス大森林南部、ソルヴァレス学院の陣地から4人の人影が動き出した。
「ほな、ぼちぼち行こか?」
「私達は西から攻めるのでサクラさん達は東からお願いします」
「任せといてぇ〜、うちとシロウでみーんな倒したる」
そう言ってサクラはニコリと笑う。
「ちゃんと私らの分も残しといてなぁ?」
「わかってるよ〜、ほら行くでシロウ!」
「ちょ、待ってくださいよ! はぁ、また僕があの人のお守りか……」
シロウは深く溜息をつきつつもサクラの後を追おうとするが、そこにカエデが声をかける。
「ごめんなぁ、シロウ。サクラちゃんが暴走しないよう頼むで」
「……わかりましたよ」
そうしてシロウはサクラを追って東へ走り出した。
「それじゃあ、私達も行こかユキノ」
「はい、早くしないと2人に先を越されてしまいます」
2人に続きカエデとユキノも西の方から走り始めた。
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