第2章 四大魔法学院対抗戦 後編 三十二話 第1試合目決着


 アストレア魔法学院対ブランハーツ魔法学院の戦闘が行われている時、他の2校は控え室でその様子を観戦していた。ここはセイクリッド学院の控え室、中には7人の人影がある。


 その中でも一際目立っていたのは愛剣である聖剣を腰に指した青年、シン・ドラグリアだ。


「へぇ、彼もレオに負けないぐらい強いな」


 シンの見ている映像にはアレクが映っている。たった今戦闘が終わったところだ。


「彼とも戦ってみたいなぁ、次の試合に勝てば決勝で戦えるかな?」


「落ち着いてシン、先の事よりまずは目の前の方が大事」


 そう言うのはシンの隣で映像見ていたサヤだ。


「ふぉっふぉっふぉっ、まぁいいでは無いかサヤちゃんや」


 その声は2人の後ろに座る白髪の老人の物だ。


「学院長、シンを甘やかさないでください」


「そうです、学院長。ドラグリアは少し厳しいぐらいがちょうどいい。これまで何度学院の建物を壊されたか……」


 サヤに続いて言ったのは学院長の隣に立つ1人の男だ。


「い……いやぁ〜、サヤもガンマ先生も厳しいな」


 シンは冷や汗を浮かべつつ苦笑している。


「そんな事よりも、今は作戦を立てよう」


 4人のやり取りを見守っていた他の3人の内の1人がそう提案する。


「あぁ、悪いなベルメール。そうしよう」


 ベルメールと呼ばれた青年の提案にガンマは答える。


「相手はソルヴァレス学院だが学院長と俺が映像で見ていた限り近距離戦を得意とする生徒が2人、遠距離戦を得意とする生徒が2人のバランスのいい構成だ」


「近距離戦が2人に遠距離戦が2人、もう1人、『剣聖』はどうしたんですか?」


 ベルメールの問いに対して、ガンマは手を顎に当て考える仕草をする。


「それについてだが、剣聖は最後の戦闘で少し出ただけで正直わからん。実際に相手をしたシンはどうだった?」


「そうですね……多分、彼の実力は俺と同等かそれ以上です」


 シンが真剣な表情で答える。


「それは、お前が万全の状態での話か?」


 ガンマの確認の言葉にシンは静かに頷く。


「はぁ、そうなると剣聖の相手はシンとサヤさんがするしかないですね」


「そうだな。これは予想だが、恐らく攻めてくるのは性格上『神炎』とそのサポート役に薙刀を使う小柄な青年だろう。それを踏まえて守備の人選も考えなくてはな」


 その後もセイクリッド学院の控え室では時間ギリギリまで話し合いが続いた。




 レオが転移門ゲートを潜ってから数分、アリシアとサリーは転移門ゲートを守りつつ相手の魔力結晶を破壊しようと魔法を打ち続けていた。


「やっぱり、そう簡単には壊させてくれないね」


「お互いに守りながら攻めるって条件は同じだから。どっちかが動かないと状況も変わらないと思うよ」


 サリーの言葉にアリシアが返す。


「それじゃあこっちから動こうかな。アリシア守備はお願いね」


「うん、任せて!」


 そうしてサリーは先程までよりも多くの魔法を発動し相手との距離を詰める。


「『氷槍アイシクル・ランス』『風矢ウィンド・アロー』!」


 サリーは最短詠唱で魔法を発動する。この1ヶ月の冒険者生活の中でサリーも簡単な魔法なら最短詠唱で発動することができるようになっていた。


「させるか! 『土壁ロック・ウォール』」


「『水弾アクア・バレット』!」


 相手生徒は1人が壁を作りもう1人が魔法でサリーの放った魔法を打ち消す。


 サリーは素早く相手の発動した壁に身を隠し相手の視界から姿を消すことによりさらに魔力結晶との距離を詰める。


「打ち砕け『氷槌アイシクル・ハンマー』!」


「ガハッ……!」


「ゴホッ……!」


 サリーが魔法を詠唱すると巨大な氷の槌が現れ土壁ごと相手を吹き飛ばし気絶させた。


「ふぅ、とりあえず守備の人は倒せたみたい。アリシア、今のうちにこの2人魔法で動けなくしとこう」


 サリーは少し遠くにいるアリシアにそう呼びかけたった今倒した2人を魔法で木にしばりつけた。


「それよりもサリー、さっきの魔法でも少ししかダメージ入ってないみたいだね」


「そうなんだよね、この魔力結晶すっごく硬くて。これを私達だけで壊そうとすると後数十分はかかりそう」


 そうして2人が悩んでいると転移門ゲートから出てくる2人の人影に気づいた。

 レオとダリスだ。


「2人ともこっちの状況はどうだ?」


「レオ君! こっちはちょうど今サリーが相手の守備の人を倒してくれたところです」


「それじゃあ後は魔力結晶を壊すだけだな」


「それがね、この魔力結晶かなり固くてなかなか壊せそうにないの。今もその事でアリシアと一緒に考えてて」

 

 サリーは今の状況についてレオに説明をする。


「あぁ、そう言うことなら問題無いよ」


 そう言ってレオは左腰に指した黒影を抜き空間魔法を付与エンチャントした。


「これでその問題は解決だ。『次元斬り』!」


 レオが詠唱をして黒影を振るうと魔力結晶は横に綺麗に切断され上下に別れた。


「相変わらず、その魔法の切れ味はとんでもねぇな」


「そう言えば、その魔法なんでも切れたんだっけ……」


 ダリスとサリーは相変わらずの魔法の切れ味を前にして若干引いている。アリシアはと言うと……


「レオ君、お疲れ様です!」


 至って平常運転だった。その時、もはやこの四大魔法学院対抗戦お馴染みとなったハイテンションな放送で第1試合の勝敗が伝えられる。


『ここで決着! 第1試合勝者は……アストレア魔法学院! 決勝進出だァァァッ! 首席のレオナルドがその圧倒的な魔法の切れ味で魔力結晶を一撃で真っ二つにしてしまったぁ! 威力がおかしかったぞ!?』


 レオ達は何とか第1試合を勝利し、決勝に駒を進めた。

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