第2章 四大魔法学院対抗戦 後編 二十三話 順調です。


 レオは森に入り試合が始まって直ぐにアリシアとダリスの2人と合流した。


「とりあえず俺達は森の形に沿って移動しよう」


「そうだな、このタイミングならまだ仲間と合流できてない奴の方が多いはずだ」


 そう、俺達3人の役目は浮いた相手を探し倒すこと。敵が合流する前に仕掛けた方がこの作戦は上手くいくはずだ。


 そうしてレオ達が森に沿って左に進むと魔力探知に3つ反応が出た。だがそれぞれの場所には距離がある。


「とりあえず3つ反応が出たけどそれぞれの位置に距離がある、近いところから地道にいこう」


 標的を決めると3人は自分達から1番近い場所にある反応まで走りだす。


 3人が標的に近づくとそこに居たのはウィルバート王国、セイクリッド学院の制服を来た男子だった。


「いたな、俺が足を止めるからその隙にダリスは相手に接近して仕留めてくれ」


「わかった」


 レオが指示を出すとダリスは静かに返事を返す。


「アリシアはダリスが接近している間に万が一相手が攻撃してきたら防いでほしい」


「わかりました」


「それじゃあいくぞ」


 そうしてレオは右手を前に出し詠唱をした。


「『闇地帯ダーク・ゾーン』」


 レオがそう呟くと眼前の相手の足元に黒い絨毯の様な丸い円が現れた。レオお得意の闇魔法だ。


「な、なんだ!?」


 相手の学院生は突然現れた謎の黒い円とさらに下から吸い込まれるという慣れない感覚の2つに戸惑っていた。


「今だ、ダリス!」


「おう!」


 相手に隙ができたことでレオがそう合図をすると既にダリスは走り始めていた。


 だが相手も代表に選ばれる程の実力の持ち主、体が動かない状況にあってもしっかりと対策をしている。


「大海原の壁よ現れろ!『水流防壁アクア・ウォール』!」


 相手の学院生が詠唱をすると自信を囲むように水の防壁が出現した。それを見てダリスは咄嗟に足を止める。


『レオ、どうする?この魔法少し厄介だぞ』


 確かに、あの魔法普通の水流防壁アクア・ウォールじゃないな。見た感じ魔法を撃っても水流で受け流される仕組みか、それなら!


『俺が何とかするからダリスは相手の魔法が消えたらまた接近してくれ』


「了解!」


 そうしてレオは腰に差した2の内左に差した剣を抜き空間魔法を付与エンチャントし、選抜試験同様空間を切った。


「『次元斬り』!」


 俺の放った魔法は相手の水流防壁アクア・ウォールを切り、消滅させた。


「今だ、ダリス!」


「おう!」


 相手の魔法が消滅したのを確認するとダリスは再度走り出す。相手は突然自分の魔法が消え混乱しているようだ。


「え、何が起きて……ゴァッ!」


 相手が混乱して顔を上げた隙にダリスが接近して顎に強烈な一撃を入れた。どうやら上手く戦闘不能にできた様だ。


『アストレア学院!早くも10ポイント獲得!』


 俺達が相手の学院生を倒すと通信魔法を通して空から放送がされた。


 今回の対抗戦は各学院の待機場所に魔力結晶を用いて映像が見えているらしくこの放送も見ている人に対してわかりやすいようにと言うことらしい。


「よし、とりあえず1人。次は東の方に2人いるな、さっきの3人の内の2人みたいだ」


「仲間だったってことか」


「多分な、とりあえず次はこの2人を……」


 その時西の方角に大きな雷が落ち轟音を響かせた。


 な、この音ってあの時の!


 そう、それは選抜試験で聞いた音と全く同じ音だった。




 ――遡ること数分前、第1試合が始まって直ぐにアレクはホークを呼び出しその背に乗った。


 とりあえず上空から探して見つけ次第倒していくか。


 そうして空を飛ぶこと数分。前方で合流する2人組を見つけた。


「ん?あそこにいるのはゼクバス帝国のブランハーツ魔法学院の生徒か。1人ずつ倒してもいいが……面倒だな、同時に倒してしまおう」


 そう言ってアレクは選抜試験の時同様空に黒雲を発生させた。


「ん?なんか暗くないか?」


「お、おい!あれ見ろ!」


 相手の1人が自分たちの真上に黒雲が広がっている事に気づくが少し遅かった。


「遅い、『雷神の鉄槌トール・ハンマー』!」


 その一撃は選抜試験の時より威力が抑えられていたがその分速度は早く範囲は広くなっていた。それでも人の意識を刈り取るには十分な威力である。


 ドガァアアアアン!!!


「グァッ!」


「ぐぁ"ぁ"!」


 アレクが確認のために地上に降りるとそこには痙攣する2人の学院生が横たわっていた。



「ん、少しやりすぎたか?ブランハーツで代表になる程の生徒だから大丈夫だと思ったんだがな」


 まさか倒してしまうとは思っていなかったアレクは予想外の事に少し動揺していた。


『続いてもアストレア学院だ!とんでもない威力の魔法で20ポイント獲得!なんだ今の魔法はぁ!?』


 そんなハイテンションな放送の後、直ぐにレオから通信が入った。


『おい、アレク!今の雷お前の仕業か!』


「あぁ、そうだが。どうやら少し威力が強すぎたみたいだな。代表に選ばれるぐらいだから大丈夫だと思ったんだが」


『過ぎたことは仕方ないけど、次もあるんだからな!魔力切れなんて事にはなるなよ!』


「あぁ、心配せずともわかっている。そっちも1人やったみたいだな?」


『セイクリッドの生徒を1人ね』


「そうか、順調みたいだな。そろそろ着るぞ」


『あ!ちょっとまっ……』


 レオの言葉を最後まで聞かずにアレクは通信を切った。


「すまんなレオ。どうやら、話している暇はないようだ」


 アレクの目線の先には先程倒した2人と同じ制服を来た男が1人こちらへ向かって歩いて来ていた。




「おい、レオ。アレクはなんて言ってたんだ?」


「心配するなってさ。全く、いくら暴れて来いって言われたからって序盤から飛ばしやがって」


「けど不思議とアレクさんなら大丈夫な気がします」


 まぁ確かに、あいつの魔力量ならあれぐらい問題は無いか。


「とりあえず俺達は東にある反応の方まで行こう」


 そうしてレオが魔力探知を使うとさっきからあった2つの反応にもう1つの反応が急接近していた。


「まずい!新しい反応が1つ近づいてる!」


「それじゃあ、早く行かないと先に倒されちゃうんじゃ!」


 アリシアがそう言った直後それは現実となり2つの反応が消えた。


『ソルヴァレス学院20ポイント獲得!しゅ、瞬殺だぁ!』


「クッ、やられた……」


「遅かったか、どうする?そいつを倒しに行くか?」


 正直、2体1を瞬殺するような奴とはいくらこっちが3人と言えどリスクは大きいけど……


「いや、行こう。後に残しておく方が面倒だ」


「よっしゃ!お前ならそう言うと思ったぜ!」


「私も、レオ君についていきます!」


 そうしてレオ達3人はその反応がある東の方角へ走った。




 一方その頃、アレクはブランハーツ魔法学院の生徒と戦闘をしていた。


 なかなかやるな、さっきの2人とは別格だ。


「どうした、その程度か?神童」


「その呼ばれ方は好きじゃないんだがな。それより、何故俺の事を知っている?」


「当然だろう。4属性持ちなんて滅多に現れる存在じゃないからな」


 それもそうか。大方、噂を耳にした行商人がゼクバスでも流したんだろう。


「だが、正直ガッカリだ。4属性持ちがまさかこの程度の実力とは」


 確かに、こいつは強い。レオには温存しておけと言われたが仕方がない、俺も本気を出すか。


「いいだろう。お前には手を抜いていたら勝てそうにないからな。その前に名前は?」


「ブランハーツ魔法学院次席、ゼノン・フォン・メナスだ」


「ゼノンか、俺の名はアレックス・フォン・アルカードお前と同じ貴族であり次席だ。それじゃあ、行くぞ!」


 そう言ってアレクは火、氷、雷、土の魔法を同時に発動しホークにも風の魔法を発動させた。


「数が多いだけでは俺は倒せんぞ!『岩石防壁ロック・ウォール』」


 アレクの放った無数の魔法はゼノンの魔法により全て防がれる。だがそれはアレクの予想通りの結果だった。


 ゼノンがアレクの攻撃を防ぎ切り魔法を消すと先程の位置から全く動かずにアレクが右腕をこちらに向けていた。


「?何をして……」


「貫通力は抑えてあるが人に使うのは初めてだ。上手く防げよ」


 そう言った途端アレクの右腕に膨大な量の魔力が集められる。


 なんだあの魔力量は……あれをまともに食らうのはまずい!


 そう思いゼノンは咄嗟にさっきよりも強度の高い岩石の壁を3枚作り出した。


「『超電磁砲レールガン』!」


 その魔法はゼノンの作り出した3枚の岩の壁を悉く貫きゼノンに迫った。


「クッ!」


「残念、この魔法は囮だ」


 アレクの魔法を何とか避けたゼノンだがそこに岩壁に隠れて接近していたアレクが畳み掛ける。


「1度、これをやってみたかったんだ。食らえ!」


 そう言ってアレクは先程の超電磁砲レールガンと同等の風属性の魔力を圧縮し右手に集めていた。その魔力の塊は球状の形を維持したまま竜巻の用に回転している。


 そしてアレクはそのまま右手を前に出しその魔力の塊でゼノンを攻撃した。


「グァァァッ!!」


 それを食らったゼノンは後方に吹っ飛び木に激突して意識を落とした。


「ふぅ、まさかこれを1戦目から使わされることになるとはな」


『アストレア学院!またもや10ポイント獲得!見たことも無い魔法で次席対決を制したぁぁぁぁぁ!』


 相変わらずハイテンションな放送がヴォーレオスの森中に響き渡った。


 

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