第2章 四大魔法学院対抗戦 後編 十八話 絡まれました。
代表選抜試験から1週間。俺達は朝の教室で対抗戦本戦に向けて何か出来ることが無いか話し合っていた。
「すぐ出来ることと言えば試験前みたいに新技の練習とかか?」
「そうだな、試験の時もあんまり新技は使えなかったし。もう少し使い慣れるのも有りかもしれない」
「そうだな、それぞれの学院の代表を相手にするんだ。付け焼き刃じゃ通用しないと考えた方がいいだろう」
「それなら新技を考えるより今使える魔法の練度を上げる方がいいかもしれないね」
「だが、それだけで勝てるとも思えない。今以上に何か出来ることが増えなければ相手にならない可能性すらある」
(そうなんだよな、そうなってくると今やるべき事は使える魔法の練度を上げる事だけどやるべき事はどっちかって言うと新技の開発か)
「新技に頼りすぎると通用しなかった時に隙が出来てしまうかもしれませんね」
「後は何があっても対応出来る状況判断だな。試験では旗を探すにも想定していなかった事で時間がかかってしまった。これに関しては実戦を重ねるしか方法は無さそうだが…」
「実戦か……お、そうだ!」
「何か思いついたのか、ダリス?」
そこでダリスは何かいい案を思いついたのか俺達にそれを提案してきた。
「なぁみんな、冒険者、やってみないか?」
「なるほど、冒険者か。確かに討伐以来や護衛依頼ならば実戦経験も積めるだろう」
「採取クエストとかでもその時の状況によって判断が求められるし状況判断も鍛えられそうだよね」
「確かに、冒険者は盲点だったな…」
「だろ?時間もまだ1ヶ月以上あるしギルドに冒険者登録しておけば今後便利だと思うしよ!」
ギルドで発行して貰える冒険者カードは自身の身分の証明にもなる。色々な事で使えるし持っていて損は無いだろう。
「なるほど、確かにいいかもしれないな。王都にはギルド本部もある、他の街よりは依頼も多いだろう」
「でも、冒険者って魔物とかとも戦わないといけないんですよね?ちょっと、怖いです…」
(そっか、アリシアはつい最近魔物に襲われたばかりだもんな。怖いのも当然だ)
「大丈夫だよアリシア。そんなに危険な依頼は受けないだろうし、何かあってもまた俺が守るから」
「レオ君がそう言うなら私も大丈夫な気がしてきました」
そうして俺たちは明日の放課後、冒険者ギルドに行くことにした。
翌日、俺達4人は学院から冒険者ギルドに向かっていた。何故4人かって?ダリスが家の用事でいないからだ。
あいつ、自分で提案しながら今日来れないって…まぁ家の用事だし仕方ないか。ダリスはもうギルドに冒険者登録してるみたいだし、場所が分かる2人がいてくれて良かったな。
「私、ギルドを見るのは初めてなのですが王都のギルドは大きいんですか?」
「俺も行ったことは無いけどルステリア王国全体のギルドの本部だし他の街のギルドよりは大きいと思うよ」
俺とアリシアはギルドに行ったことも見た事も無かったためギルドの場所を知る2人に着いていく形で2人話しながら歩いていた。
「そう言えば、冒険者カードってどうやって作るんでしょう?」
「父さんから聞いた話だと特にこれが出来ないとダメって条件は無いみたいだよ。ただまぁ依頼をこなす上で出来ていた方がいい事はあるみたいだけど」
「2人とも、着いたぞ」
「ここが冒険者ギルドか…」
「学院や王城程では無いですが、それでも十分大きいですね…」
俺とアリシアは中に入る前からその大きさに圧倒されていた。
「とりあえず、中に入るぞ」
「あ、あぁ。行こうアリシア」
「は、はい!」
そうして俺とアリシアは2人に続くように冒険者ギルドの中へ入っていった。
中に入ると室内の半分はどうやら酒場になっているようでまだ夕方になる前だと言うのに酒を飲んでいる冒険者の姿が多く存在した。
冒険者登録をするための受付は入口から見て右側にあり俺達は登録をするためそこに行こうとした。その時だ
「おぅおぅ、兄ちゃん達。ここは子供の来る場所じゃねぇぞ?」
そう言って酒場の方からいかにも頭の悪そうか冒険者が絡んできた。その男はニタニタと俺とアレクの隣にいたアイリス達に目を向けていた。
なるほど、目的はそれか。
相手の目的を察し、俺が前に出ようとするとアレクに止められた。
「それに、見るからになよなよして弱そうじゃねぇか!嬢ちゃん達そんな奴らより俺達と遊んだ方が楽しぃぜ〜。おら!男は帰った帰った」
そして男は1番近くにいたアリシアの肩に手を伸ばし掴んだ。もちろん、俺がそれを黙って見ていられる訳もなく。
「おい、あんた。今すぐその汚い手を話せ」
そう言って俺はアリシアの肩に伸ばされた男の手首を掴み全力でひねりあげた。
「いっ!てめぇ何しやがる!ぶっ殺されてぇのか!?」
「先に手を出してきたのはそっちだろ?体だけじゃなくて頭の方も鍛えたらどうだ?」
「てめぇ、調子に乗りやがって!」
周りの冒険者もこの騒ぎが聞こえたのか何人かはこちらを見物している。
「痛ぇ目にあわなきゃわかんねぇみたいだな!」
男は俺の手を振りほどくと右手で俺の頭目掛けて拳を繰り出してきた。だがその一撃は空を切り不発に終わる。
「遅すぎる」
俺は男の拳を右に避けそのまま繰り出された腕に触れる。
「時間魔法『時縛り』」
俺が詠唱をした途端に男の体は俺に攻撃をした体制のままピタリと動かなくなる。そして俺は止まった男をそのまま後ろに押し倒す。男はまるで丸太が倒れたような音をして倒れその衝撃で俺のかけた魔法も解け動き始めた。
「お、お前!今何をしやがった!?」
「何って、魔法だけど?それとあんた、鍛えるばかりで攻撃が遅くなってちゃ意味ないな」
「グッ、クッソガァ!」
そう言い捨て男は走ってギルドを飛び出してしまった。
「アリシア、大丈夫か?怪我はしてない?」
「はい、なにかされる前にレオ君が助けてくれたので。ありがとうございます!」
「アリシアが無事なら良かったよ」
「はぁ、全く、せっかく俺が1度は止めたというのにお前という奴は。まぁあそこでお前が動いていなければ俺が動いたかもしれんがな」
アレクがそう言って俺に声をかけてきた
「それこそレオ君が動いてくれて良かったんじゃないかな?アレク君がやったらここ消えちゃいそうだし」
「まぁ、あの状況でレオが動かない事は考えられんが…」
「ふふっ、それもそうだね」
「それより、早く冒険者登録に行こう。あんまりここに居たくも無いし」
「そう、ですね。私もちょっとここは居づらいです」
そうして俺達はギルドの受付へ向かった。
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