第2章 四大魔法学院対抗戦 前編 十七話 代表が決まりました。


 試合が始まり、3人が同時に走り始めた。俺とアリシアは旗の前で全方位を警戒しつつ待機だ。


「始まったな。」

「はい、頑張りましょう!レオ君!」

「うん、俺達が旗を守りきれば後はあの3人が必ず相手の旗を取ってくれる」

「はい!私たちは3人を信じてここを守りましょう!」


 頼んだぞ、アレク、ダリス、サリー。

 

 そうして俺は3人の向かった方向を見上げた。


「基本の作戦は1試合目と同じで上下で攻めていく。ダリスとサリーは下、上は俺がやろう」

「「了解!」」


『アレク、聞こえるか?』


「レオか、どうした?」


『相手もどうやら作戦は1回戦目と同じ見たいだ。今俺達の方に向かってる反応が4つある』


「と言うことは、1回戦目と同様旗を守るのはルイか。わかったそっちは頼んだぞ」


『あぁ、そっちも頼んだぞ』


「2人とも聞こえたか?」

「あぁ、どうやら1戦目同様旗の守りは1人らしいな」

「となると守ってるのはルイ君かこの3人なら大丈夫だと思うけど気をつけなきゃね」

「あぁ、いざとなれば俺が前へ出よう」

「見えてきたぞ、あそこがそうじゃねぇか?」


 アレク達が森から抜けるとDチームの陣地と思われる場所に出た。そこは高さ10m以上ありそうな崖を背にした場所だった。そしてそこに居たのは。


「よぉ、来たなAチーム!」


 予想していたルイでは無くバーンだった。


 な!どういうことだ?Dチームに旗を1人で守りきれそうな実力の奴は正直ルイだけだ。じゃあ何故今ここにいるのはルイじゃない?


「アレク君、よく見て旗が見当たらない!」

「何!?」

「おう、作戦通り驚いてる見てぇだな。さぁて旗はどこか…な!『火炎散弾フレイム・ガトリング』!!」


 そしてバーンは3人目掛けて無数の火属性魔法を放った。


「くっ、これじゃあ旗を探すにしても近づくのすら難しいぞ!」

「仕方ない、俺が奴の相手をする。2人はその間に旗を探してくれ!」

「おいおい、させると思うかよ!」

「まぁ、いいだろう?少しぐらい付き合ってくれないと寂しいじゃないか!」

「けっ!そんな柄じゃねぇだろうがよ!」


 そう言って2人は互いに笑い激しい魔法の撃ち合いが始まった。


 レオの魔力探知に4つの反応が現れた数秒後森の方から風の刃が飛来した。レオはそれを鞘から抜いた長剣で切り落とした。


(今のは風属性の刃だ、風属性で剣士ってことは…まさか!そんななんでこっちに!?)


「やぁ、レオ君。君とちゃんと話すのは初めてかな?」


 そうして柔和な笑みを浮かべた男、ルイ・カーネスは森から出てきた。その後ろにはバーン以外の3人のチームメイトがいる。


「まさか、お前がこっちに来るとはな、ルイ・カーネス」

「ルイでいいよ。友達からはそう呼ばれてるしね」

「そうか、それじゃあルイ、友達として1つ聞きたいことがあるんだがどうしてお前がこっちにいる?バーン1人で旗は大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。秘策があるからね」

「秘策、だと?」

「あぁ、ま、これ以上はさすがに教えられないけどね」


 まぁ当然か、秘策って言うのは秘密にするからこそ生きる作戦だからな。


「それで、2人相手に4人がかりで旗を取るってか?」

「君相手に数は殆ど関係ないだろう?それに、油断するとこっちが負けかねないからね」


 仕方がない、数が不利ならその数を減らせばいい。


『アリシア、聞こえるか?』

『はい、大丈夫です』

『1発だけ、あれを使う』

『あれ、ですか?』

『あぁ、それで、相手の注意を旗から逸れさせてその間に後ろの3人を動けなくさせる』

『わかりました!』

『それじゃあ3秒後に頼む行くぞ?3.2.1今だ!』


 そうしてアリシアはレオの前に何度も練習した氷のレンズを作り出す。突如出現したその魔法を見てDチームは警戒したのか一瞬動きが止まるが、レオにはその一瞬だけで十分だった。


「お前ら、結構ヤバいの飛んでくから気をつけろよ!」

「!みんな、回避っ!」


 レオの右手にとてつもない魔力が集まっているのを見たルイは危険を察知して後の3人にすぐに回避するように言う。だがもう遅い。


「『陽光熱線サンライト・レーザー』!」


 放たれた魔法は目にも止まらぬ速さで進みルイと他の3人を分断した。4人がレオとアイリスの魔法にさらに警戒を強めるとレオはそれを見逃さなかった。

 レオは分断された3人目掛けて左手を前に出す。


「『闇地帯ダーク・ゾーン』」


 レオが詠唱をすると突如3人を飲み込むように黒い影が出現した。そして3人は地面へ伏せる。いや、引き寄せられている。


「よし、これで1体1だな」

「全くとんでもない魔法だね、どれも食らう訳にはいかなさそうだ」

「このまま下がってくれるなら何もせずに帰すんだけどな」

「そういう訳にもいかないんだ、どうやらこれは、僕も本気を出さないとキツそうだね」

「だよな、それなら仕方ない。来い!」

「はっ!」


 その声と同時にルイは剣に付与エンチャントした風魔法で風の刃を12発連続で飛ばした。さらにそれに続きルイも剣を構え突進してくる。

 レオは風の刃を空間魔法で旗の後方へ飛ばし突進してくるルイは自身も剣を抜き受けた。


「この程度か?」

「いいや、まだまだこれからさ!」


 そうして2人はしばらく剣を打ち合い互いに1歩も引かぬ接戦を繰り広げた。先に均衡を崩したのはルイだ。


「ふっ!」


 ルイは短く息を吐く。魔法を放ちその影に隠れて自分もレオに迫る。が、自分の撃った魔法が突如として消えた。だが、レオの目前まで迫っていたルイは急に止まることも出来ずそのまま進んだ。そして、


「ガっ!?」


 レオの前まで詰めたルイの体に突如として無数の切り傷ができた。


「な、んだ、何が起きた?」


 傷は浅いがその衝撃からルイが片膝を着いているとレオが歩み寄ってきた。


「ごめんな、言い忘れてたけどさっきの打ち合いの時 にそこに斬撃を止めておいたんだ」

「斬撃を、止める!?」

「あぁ、この時間魔法を付与エンチャントした剣を使えばその斬撃は減速しその場に留まる。だから、お前と打ち合っていた時の俺の斬撃がこの場に残ってたってわけだ」

「そ、んな事が…ははっ、完敗だよ。どっちみち傷は浅いけどこれ以上の激しい戦闘は出来なさそうだしね」


 そうしてルイが敗北を認めた時だ。


「そこまで!勝者…Bチーム!」

「え?」

「終わり、ましたね?」


『アレク、旗取ったのか?ルイは秘策があるって言ってたけど』


「あぁ、旗を隠されていてな。なかなか苦戦したがどうにか取ってやったさ」


『どうやって見つけたんだ?』


「いや、見つけた訳じゃないさ」


『…え?』


 話は数分遡りレオとルイが打ち合っている頃アレク達はまだ旗を見つけられずにいた。


「くっ、そこまでわかりやすい所には隠さないか」

「あたりめぇよ、簡単に取られちゃ面白くないからな」

「お前もなかなか粘るな。そろそろ限界じゃないか?」

「へっ、まだまだ余裕よ」


 だが、そう言うバーンは明らかに消耗していた。魔力量に圧倒的な差があるアレクと打ち合っているのだ、普通であれば既に魔力が切れていてもおかしくない。


「なるほど、ならば仕方がない。少し本気を出させてもらうぞ!」


 そう言ってアレクは火、氷、雷、土の4属性の魔法を同時に発動した。その数、40。


「なっ!?」

「さぁ、この攻撃も耐えられるか?」

「チッ、バケモノが。いいぜ受けてやらァ!」


 そうしてバーンは自身の魔法で応戦するがそこで魔力切れを起こし倒れた。アレクの残りの魔法は全てバーンの後方の崖に直撃する。そして、魔法が直撃し剥がれた側面から見えたのは…Dチームの旗だった。


「まさか、こんな所に隠していたとはな」

「どうりでいくら探しても見つからないわけだ」

「けど、ここからどう出すの?魔法で外壁を剥がすにしても旗まで壊しちゃったら勝てないよ?」

「それなら、周りの岩ごと取ってしまえばいい」

「「え?」」


 そう言うとアレクは魔法で旗の周りの岩を壊し先程の言葉通り岩ごと旗を取り出した。


「そこまで!勝者…Bチーム!」



「という感じだ。」

「なるほど、流れ弾で運良く見つかったってわけか」

「あぁ、今回俺達はあまり活躍出来なかったからな。この分は対抗戦本番できっちり働くさ」

「まぁ、何はともあれ代表に決まったんだ。反省は後からでいいだろ?」

「ふっ、そうだな。それじゃあ待機場所に戻ろう」


 そうして俺達は待機場所に戻り先生から後日四大魔法学院対抗戦アストレア学院代表の証を渡すと言われた。本戦は来月、まだまだ時間はあるし今はゆっくり休もう。

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