第2章 四大魔法学院対抗戦 前編 十三話 呼び出されました。


 翌日、俺が学校に着くと既にアリシアも登校していた。


 良かった、もう来てた。


 そして俺は昨日の事を謝りにアリシアに声をかける。


「おはよう、アリシア」

「あ、レオ君。おはようございます」

「その、昨日はごめんな、なんか嫌な思いさせちゃったみたいで」

「嫌な、思い?なんのことですか?」

「え?いや、だって昨日帰り際に泣いてたから」

「それなら言ったじゃないですかレオ君は悪くないって。あれはその、嬉しかったというか、恥ずかしかったというか…」

「てことは、怒ってないってこと?」

「え?そんな、怒るわけないじゃないですか」


 あれ、てことは、もしかして…俺の早とちり?


「はぁ、良かった〜」

「何がですか?」

「いや、てっきりアリシアが怒って帰って俺、嫌われたのかと」

「嫌いになんてなりませんよ。レオ君は命の恩人ですから」


 あぁ、アリシアの優しさが心に染みるようだ…


「あ、そうだレオ君。明後日の件についてなんですけどお父様がリヴァイス子爵も呼んでもらえないか、だそうで。王城からも一応手紙は出したみたいなんですどレオ君が行った方が早いと思って」

「わかった、今日帰ったら父さんに聞いてみるよ」

「お願いします」


 はぁ、やっぱりアリシアの笑顔は癒されるな〜


「あいつら、朝から何やってるんだ」

「完全に周りが見えていないな」

「昨日あの後何かあったのかな?」

「恐らくまたレオが何かやらかしたんだろう」


 そうしてたった今登校してきたアレクとダリスは相変わらずレオを冷めた目で、少し前から居たサリーはアリシアを暖かい目で見守っていた。


 放課後、今日も新技の練習をしに5人でウィルダーナの森まで来ていた。練習も順調に進んでおりあと少しでなにかが掴めそうな感じだ。


「魔法自体はかなり安定してきたが、あとの問題は威力と推進力だな」

「うん、そこを乗り越えればすぐできそうなんだけど」


 今回の魔法の場合光属性の特徴である「加速」を上手くいかそうにも強くし過ぎればレンズ役の氷魔法が壊れてしまうのだ。かと言って加速が足りなければ現状のようにまともに速度が出ず使い物にはならない。


「はぁ、近くに誰か魔法も上手くて実力もある人が居ればいいんだけどな…あ、いた!」


 俺はその条件に合う人物に心当たりがあり、転移門ゲートを開きその人を呼びに行く。


 数分後俺は1人の人物をみんなの前に連れてきた


「ただいま、みんな魔法も上手くて実力もある人、連れてきたよ」

「何やら面白そうな事をやっているらしいな」


 そう言って転移門ゲートから出てきたのはジン・フォン・クロード、俺の父さんだ。


「これは!アリシア様にアレックス様、ご無沙汰しております。ダリス君とサリーちゃんも久しぶりだね」


 あれ?父さんにサリーを紹介したことあったっけ?


「リヴァイス子爵、お久しぶりです。父がいつもお世話になっています」

「そんなに畏まらなくていいよ俺もあいつには世話になったからねお互い様だ」


 どうやらうちの父さんとサリーのお父さんであるシルフィード辺境伯は知り合いらしい。

 

「父さんってサリーのお父さんと知り合いなの?」

「あぁ、魔法師団の同期なんだ。ほら、辺境伯の人達はみんな軍で何かしらの大きな実績を残した人達だろ?」

「あ、確かに。じゃあ他の辺境伯の人達とも知り合いなの?」

「まぁな、今の辺境伯はみんな同期か先輩だった人だ」


 そうなんだ、もしかして父さんって意外と凄い人?


「それより、俺を呼んだ理由は魔法の練習だろう?」

「あ、そうだった」


 そうして俺は父さんに今練習している新技について俺とアレクが実際に見せながら説明をした。


「これは、とんでもない魔法を考えましたな。アレックス様」

「やっぱり、父さんもそう思うだろ?俺も初めて見た時は驚いたよ」

「これ程の魔法を1人で使える人間は魔法師団でも小隊長以上の者にしかいないだろう。それをこの歳でやってのけるとわ」


 どうやらアレクの実力は既に魔法師団内部のトップクラスと同等のようだ。


「それで、今の課題は威力と推進力だったか?」

「うん、まだしっかりとイメージ出来てないのか威力と推進力があんまり出なくてね」

「そうか、それなら1つ考えがある。レオ、今の段階では魔法をどれぐらいの太さで使っているんだ?」

「今は掌ぐらいの大きさだけど、それがどうかしたの?」

「それなら集める魔力はそのままに今の半分の大きさに絞ってみるといい。それとさっきの説明を受けてアレックス様の魔法を見た限りだとこの魔法は熱戦で相手を貫く魔法だろう。それなら恐らく威力を求める必要は無い」


 威力を求める必要はない…あ、そうか!


「この魔法の攻撃力は他の魔法と違って威力ではなくその熱戦による貫通力だ。それならば魔力の強度を上げれば上げるほど貫通力も上がる。さらに言えば光とは放出すれば勝手に進んでくれるからな、推進力も必要ない」


 確かにそうだ、この魔法は反射された光を一点に収束して放ち対象を貫くこと。威力も推進力も必要ないじゃないか!


「ありがとう、父さん!なにか掴めた気がするよ」

「力になれたなら来た意味があるよ。それじゃあ俺はまだ仕事があるからなそろそろ戻る」

「あぁ、ありがとう!」


 父さんの助言もあり、その後の練習はかなり進んだように思う。そして遂に…。


「ふぅ、やっと完成した…アイリスもお疲れ様」

「いえ、私はレオ君程魔力も消費していませんし。サリーと交代でやっていたので大丈夫ですよ」

「それじゃあ今日はこの辺で帰るか。明日が試験前最後の放課後だからなそこで実践で使える程度には仕上げよう」

「わかった、それじゃあアリシアとサリーは俺が送ってくよ」


 そうして俺たちは1度学院に戻り解散した。


 2日後、今日は王城に行かなければならない。

俺が王城に行く準備を終えるとちょうどカレンが呼びに来てくれた。


「レオ様、馬車が到着されました。お父様も既に馬車の前に来ておられます。」

「わかった、すぐに行くよ」


 俺が屋敷の外に出るとそこには既に王家の紋章が付いた馬車が止まっていた。その隣にはバランさんが立っている。


「おう、レオ来たか」

「お待たせ父さん、バランさんもおはようございます」

「おはようございますレオ様。本日は急な呼び出しに応えていただきありがとうございます」

「王様からの呼び出しとあれば行かない訳にはいきませんよ」


 そうして俺は頭を下げるバランさんに顔を上げるよう促した。


「既に馬車の方の準備はできておりますので、いつでも出発できます」

「レオ、準備はいいか?」

「はい、大丈夫です」


 俺がそう言うと父さんが御者台に座るバランさんに合図をした。その合図で馬車は王城に向かい走り始める。ここから王城まで馬車なら10分程度で着いてしまうだろう。


 王城に行くのは5歳の頃以来だな、なんか緊張してきた。


 だが、緊張を紛らわす間もなくあっという間に馬車は王城に着いてしまった。

 馬車から降り、バランさんの案内で王城に入ると広間には数人のメイドさんとアリシアがいた。


「レオ君!リヴァイス子爵も今日はわざわざありがとうございます。今準備しているのでもう少し待っていてもらえますか?」

「わかりました。それではここで少し待たせてもらいます」

「俺も緊張しちゃって少し落ち着く時間が欲しかったしちょうど良かったよ」

「ふふっ、そんなに緊張する必要無いですよ。今日はお礼をしたかっただけなんですから」

 

 アリシアはそう言うがそのお礼を言われる相手が相手なのだ。


 国王様からお礼を言われるなんて緊張しないわけがないよ…


 その後、しばらくアリシアと話をして待っているとバランさんが準備が出来たことを伝えに来た。


「準備ができたようなのでご案内しますね」


 そうして俺と父さんはアリシアの案内で応接室と札が書かれた部屋の前へやってきた。


「お父様、お2人をお連れしました。入ってもよろしいですか?」

「あぁ、大丈夫だ。入っていいぞ」

「陛下、本日はわざわざお呼びいただきありがとうございます」


 そう言って父さんは部屋に入るなり国王様に頭を下げた。


「そのように畏まらなくても良い、今日は国王ではなく1人の父親としているのだからな。それに、本来頭を下げるのはこちらであろう。レオ君、娘を助けてくれたこと礼を言う。本当にありがとう」


 え、えぇ!?ちょ、急に国王様に頭を下げられても、どう反応したらいいんだ?


「あ、頭を上げてください!その事についてはアリシアから何度もお礼はしてもらっていますから」

「そう言う訳にもいかん。大事な娘の命の危機を救って貰ったんだ1人の父として頭を下げるのは当然だ」

「わ、わかりました。そのお礼は受け取ります。なのでもう頭を上げてください。国王様に頭を下げられると俺もどうしたらいいかわからなくなってしまうので」


 そう言って俺は動揺を紛らわすように頭をかいた。


「うむ、そういう事ならば仕方がないか。それで今回は他にも君たち親子に頼みたいことがあってな」

「頼みたいことですか?」

「あぁ、立ち話もなんだ気にせずそこに座ってくれ」


 そうして俺と父さんは陛下の対面に座りアリシアが陛下の隣に座った。


「早速本題に入ろう。今回の件に関しては本当にありがとうその上でこれは一国の王として話す」

「はい」

「国としては王女を命の危険から助けてもらったのにも関わらずその物に対して何もなしという訳にもいかんのだ。本来ならレオ君には男爵位を上げたいぐらいなのだが君もまだ未成年、それが許される歳ではない。」


 この国では貴族の爵位を与えられる条件が2つある。1つは成人になっていること。もう1つは何か大きな功績を上げることだ。


「それでな、今回は一先ずその功績をリヴァイス家の功績とし、リヴァイスこの爵位を子爵から伯爵位に上げようと思う。」

「なるほど、今直接的な報酬をレオに与えられない変わりにリヴァイス家の爵位を上げようと言うことですか。私はそれで構いませんが、レオは大丈夫か?」

「うん、俺も特に問題ないよ。」


 うちの位が上がるのだ不満なんてあるはずが無い。


「助かる。それでこれはリヴァイス子爵へのお願いなのだがレオ君にもお願いがあってね」

「俺にもですか?」


 確かにさっきは俺たち親子にお願いがあるって言ってたけど俺にお願いってなんだろう?


「レオ君には魔法学院卒業後貴族になってもらいたい。頼めないだろうか?」

「え、それって…俺が当主になるってことですか!?」

「あぁ、そうだ」


 そう言って国王はイタズラが成功した子供のように顔をクシャッとさせ笑った。


 貴族の…当主、俺が?えぇぇえぇ!?

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